複雑・ファジー小説
- Re: Special Key ring 『オリキャラ募集中!』 ( No.39 )
- 日時: 2012/10/09 14:16
- 名前: 氷空 ◆UQtQExcjWY (ID: l/xDenkt)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
(……そういえば長期休暇明けはテストがあるんだった……)
頭の痛くなるような問題を抱えて、待ち受けているのはこれまた頭の痛くなるテスト。いつも、こればっかりは不必要だろうと思う。
別に頭が痛くなるといってもそれは比喩であり、実際は簡単なんだけど。休みボケしている頭に鞭を打てというのが気だるい。
テストの時は、通常と違う1限50分の授業。合間の休みは変わらず5分だから、ほとんど休憩なしでテストに臨むわけで。
その代わり、テストが終われば5・6限を自由に使える。クラス毎に、先生方に指図されることなく——。
果たして何をするか。誰が言わずとも決まっていた。
みんな、それを心待ちにしてテストに挑む。テストなんか早く終われと、念じながら問題を解いていく。
俺も例に漏れず、埋め尽くした答案用紙を確認しながら「時が早く進めばいいのにな……」と、黒い雲が広がっていく外を眺めた。
「よっしゃー! テスト終わったー!」
「それじゃあみんな、昼食べる前にクジ引いてねー」
「……っと、隼人と埜口は引くなよー。それ以外引けよー」
テストから解放されて、各所からテストが終わったことへの歓喜が上がる。だが、次の瞬間、それはざわめきに変わった。
1人が箱を持って教壇に上がれば、みんなそこに集まる。箱が教卓に置かれれば、我先にと男子がそれに手を突っ込んだ。
箱の中身はクジ。書かれているのは、1から24のいずれか。引いた者から順番に、黒板に張られたトーナメント表へ名前を書き込んでいく。
ちなみに俺の名前はと言えば、トーナメント表の左上、第1シードに相当するところに既に書き込まれている。
理由は簡単。俺が前回の優勝者だから。準優勝だった埜口さんの名前は、右下の第2シードにある。
「ほら、陽菜ちゃんも早く」
宮下に引っ張られるようにして、江夏さんもクジを引いた。続いて宮下も。
宮下が自分と江夏さんのクジを覗き込みながら、トーナメント表と照らし合わせる。すると、何がおかしかったのだろう、小さな笑い声がこぼれた。
「あはは……、私たち初戦で当たるじゃん……」
苦笑交じりに、宮下は自分の名前を書き込む。そして、そのすぐ下に江夏さんの名前を——。
二人の名前が書きこまれたのは、10番と11番。左右に分けられたトーナメントの、左下から2番目と3番目。
(えっと……順当に行けば準決勝か。俺は2戦、江夏さんは3戦、ねえ……)
戦いたい、けど、戦いたくない。勝てると思う、いや、負けると思う。倒錯的な感情が交差する。
今まで、こう思う相手が何人いただろうか。いや、そもそもそう思うような相手に出会ったことがあっただろうか。
俺の見た江夏さんの動きは、今までの誰とも違っていて——同じ年頃で、ああも巧みに引き出せる人など見たこともなくて——
「……ねえ?」
宮下に言われるままに事を静観していた江夏さんが、声を上げる。その声に、みんなが江夏さんに振り向いた。
みんなに注目されて、一瞬その肩が震えた。迷いのある顔を宮下に向け、その唇がゆっくりと動く。
「これ……何のトーナメント?」