複雑・ファジー小説
- Re: the Special Key ring ( No.8 )
- 日時: 2012/10/09 14:20
- 名前: 氷空 ◆UQtQExcjWY (ID: l/xDenkt)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
(結局『チャーム』使うのが一番簡単だよな、そりゃあ。まあ、これで話もできるかな)
腰にぶら下がったチェーンが、小さく揺れていた。
中央には、まるで切れたかのような先端部分だけのキーホルダー。その途中に付けられた石が、白く光っている。
『チャーム』——元々はお守りや魔除けの意味を持つ、小さな飾りだ。ペンダントトップや、キーホルダーなどとして使われてきた。
ある時、そんなチャームに眠る力が発見された。力を引き出すことにより、チャームがその大きさや形状を変えたのだ。
靴のチャームなら、靴に。時計のチャームなら、時計に。動物のチャームなら、その動物が姿を現す。
そして、多くのチャームは何かしらの『力』を持っていた。それぞれの、特有の力を。
実用的なものも多いが、面白い力を持つものも多くあった。それこそ、誰かの興味を引きそうなものもたくさん——
実物だと何かを傷つけるようなものは、できないようにもなっていた。刃は切れずに、銃を撃っても弾で傷つけることもない。
それらの理由からか、今やチャームは全世界に広まっている。家事や仕事のサポートとしても、趣味や遊びの道具としても——
ロッドと剣は、交差したまま動かない。互いに互いを抑え込もうとしている。
不意にロッドの力が弱まった。剣を振り払うと、少女はロッドを解放——チャームの形に戻した。右手首のブレスレットに、チャームが光る。
「あなた……さっきの彼らとは違うみたいね」
「え……あ、うん——」
絡まれてる人がいるって聞いて、助けに来たんだ——
それは言葉にならなかった。いや、痺れている腕に気づき、言葉にできなかった。
その腕は、振り回されるロッドを止めただけ。つまり、それが少女の実力なのだ。圧倒的な力を、彼女は持っている。
「……ね」
え——
小さく震えた少女の唇。それは確かに、ごめんね。とつぶやいていた。
だが、それに答える間もなく、彼女はどこかへと走り去っていった。
宮下の所に戻り、俺は見たままを報告した。宮下は少女に感心したようで、笑顔で帰っていった。
部屋に戻り、本が読みかけだったのを思い出す。ページを開くが、内容は頭に入ってこなかった。
(——彼女、一体何だったんだろう……それに、なんで……)
交戦した時の少女の顔が、脳裏に浮かぶ。あの時、彼女の表情は暗く、目には悲しみが宿っていた。
ディフェクターに絡まれたでもなく、俺に攻撃されたでもなく——なぜ……
頭の中がに『なぜ』の言葉がこだましていく。
今日は8月31日。明日からは、1ヶ月ぶりの学校が始まる——