複雑・ファジー小説
- Re: ついそう ( No.19 )
- 日時: 2012/10/15 18:24
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
+16+
三十分くらいで三春は帰ってきてくれて、布団にくるまっていた僕は急いで部屋の扉を開けた三春に駆け寄った。もうバスタオル一枚では寒かった。三春の許可なくエアコンをつけるのもどうかと思ったので、布団で肌寒さをしのいでいた。
三春は紫色の袋から服を取り出して、鋏でタグを切って行く。僕はそのタグを拾ってゴミ箱に捨てる作業をしてあげた。
軽く着れるような、それでいてデザイン性の高いパーカーと、ジーパンとスニーカー。それと、下着、靴下。
三春が選んできてくれたもの。三春のセンスがださくなくてよかった。三春が着ている服も女の子らしいけど、派手ではないから期待はしていた。
三春は見事僕の期待を裏切らないでくれたわけだ。
「とりあえず、今日の分だけ」
「ありがとう」
僕の声に、三春は紫色の袋を丸めながら視線で答える。
僕が着替え始めると、三春はバスルームの方に向かって行ってくれた。三春は出かける前に体を洗うようだ。僕は三春が消えてから、着替え始めた。
買ったばかりの服の感触。それを感じながら、床に転がっている僕の血にまみれたピアスを拾い上げた。
怖くて触れなかったけれど、そろそろ気持ちの整理がついてきた。
三春は僕に何を求めてきているのか。それは、僕が三春の描く秋であること。それだけなんだろうけど。それは僕にとってすごく難しいことで。
ピアスは、ティッシュでくるんで、ジーパンのポケットに突っ込んでおく。一応僕のものだし。三春の物じゃないし。
僕は着替え終わって、姿見の前に立ってみた。サイズも良い感じで、我ながらスタイルも良いからよく似合っている。
三春が普段使っている姿見だからなのか、僕には少し小さい。僕は背が高いようだから。
「似合ってるね」
声が掛けられて、後ろを振り返ると、ドライアーを片手に持った三春がほほ笑んでいた。
服装も変わっていて、ワンピースになっていた。
「座って。僕が乾かすよ」
椅子を引いて、三春を底に誘導する。ドライアーのコンセントを差して、スイッチを入れた。
三春は僕に逆らうことは無く、大人しく僕の指を受け入れている。三春の短い髪。ボブの髪はしっとりと湿っていて、なんだか色気がある。
僕よりは背が低い三春も、どこか落ち着いていて大人っぽい。世間の中なら、美人の分類に入る。
そんなことで気を紛らわせて、僕は三春が泣いているのには気が付かないフリをしておいた。