複雑・ファジー小説
- Re: ついそう ( No.34 )
- 日時: 2012/12/02 14:56
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
- 参照: http://id24.fm-p.jp/456/yayuua/
+31+
怖かった。走っている最中に、何度も吐きそうになってその場に立ち止った。
呼吸を落ち着かせて、何度も汗を拭いた。
僕は、一体何をしたんだろう。聖さんが僕に何の恨みを持っているんだろう。以前の僕は、一体何をしたって言うんだ。僕が一体何を。
僕は何かいけないことをしたんだろうか。いったい、何をしたんだろうか。
デパートに戻るしか考えられなかった。急いでデパートの中に入って、三春の姿を探す。
なんだか寂しそうにしている三春の背中を見つけて、吐きそうになった。
安心しすぎて。三春の姿を見ただけで、すごく安心した。ほっとした。
急いで駆け寄ると、周りの人が驚いて、そして三春が僕の方を振り返る。
驚いた三春を、抱きしめた。
三春の柔らかくて小さい体を、容赦なく締め付ける。
僕の腕の中で三春は不思議そうにした。
涙が出てきた。止まらなかった。
「ごめん、ごめん、三春。ごめんね、三春。僕には三春だけだ。三春だけだったよ」
涙で声が上手く出なかったけど、何とか今言いたいことは言えた。僕には三春だけだった。
僕は三春の肩に顔を埋める。僕と同じシャンプーの臭いがした。
僕が乾かした髪。
もう三春を疑ったりなんかしたくない。
僕はもう不安になんかなりたくない。僕は最低だ。最低だけど、きっと三春なら僕を信じてくれる。
僕は、怖い。
何もかもが怖い。僕の知らない世界が怖い。
「秋、大丈夫? ごめんね、秋」
何度も頷いた。
もう何でも良い。
三春が居てくれるなら、それで良い。
+ + + +
涙を何度も拭った。
寒い。寒くて溜まらない。息が苦しい。
何度も字を間違えて、書き直した。
震えてうまく書けない。パソコンで書こうと思ったけど、諦めた。
手で書こう。最後くらいは。最後くらいはちゃんと書こう。何回も書き直す。
そうしているうちに、なんだかおかしくなって来て、笑ってしまった。
何やって居るんだろう。
何にも解決しない。何にも動かない。何にも変わらない。
こんな世界、滅んでしまえばいいのに。
こんな世界から、ばいばいしてやるんだ。
だから、誰も止めないで。
ふと、机の隅に置いてある携帯が目に入る。壊すつもりのそれ。
そうだな、お世話になった人にでも、メールを送っておこうか。
自分が生きていた事を、誰かに知っていてもらいたいな。だけど、誰に送ろうかな。誰も居ない。思いつく人が。
ああ、そうだ。
あの人に贈ろう。
さよならって。それで、ありがとう。と、ごめんなさい。
手が震える。画面に涙の粒が落ちる。
さようなら。
さようなら。
皆さん、さようなら。