複雑・ファジー小説

Re: ついそう ( No.40 )
日時: 2012/12/31 11:58
名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)



+37+


秋を探してさまよっていたら、意外にも近くに居た。
神社。今は全然人が訪れなくなった神社。夏の花火大会の穴場スポットだ。知る人ぞ知る、花火がきれいに見える場所。あたしもそれを最近聞いて、来年の花火大会ではここで見てみようとか思っていた場所だ。
そこで、秋と一人の女が二人で仲良さそうにしていた。
あたしは心臓が冷えるような思いで、大声を上げてしまった。今思えば、これもあたしらしくない。あたしだったなら冷静に近づくことができたはずなのに。だけど仕方がなかった。
あたしは携帯を取り出して開いた。写真のフォルダーを開いて、先ほど撮影した新聞の記事を見る。
二人はどんどんと見えなくなっていく。
あたしは追いかけるのをあきらめた。また見つければいい。
早く秋に教えてあげないといけない。
あたしが何でこんなに必死になって居るのかはあたしの身も危ないからだ。秋に何かがあったなら、あたしが今までやって来たことまで世に知れてしまう。
そうしたらあたしが今まで築いてきたこの地位がすべて水の泡になってしまう。
だから秋を救わないといけないといけない。秋をどうしても救わないと。できるなら、記憶を取り戻す前に。
秋が自分が何者なのかを知る前に、秋をあたしの手で始末しないと。
そのすべてがあたしの手の中にある。
秋の記憶。そして、あたしの読みが間違っていなければ、あの女が企んで居ることは。
大変なことになった。
秋がなぜ記憶を失ったのか、それは分からない。だけど少しだけ予想は出来る。だけど、まだわからない事はある。
何を秋はやったんだ。
あと一人。あと一人、カギが足りない。真実への道がまだ足りない。あたしは必死にならないといけないんだ。自分のためにも。
秋を助けたいわけじゃ無い。頑張らないといけない。

あたしは汗をぬぐった。暑くないはずなのに。
もう少しで日が暮れる。そろそろ家に帰らないといけない。
大変なことになった。これから忙しくなるだろう。

「六か月前の事件……」

あたしはぼんやりと口に出した。

すべてはあたしが巻き起こしたことなんだ。
すべてはあたしが始めた。
あたしで終わらせないと。

秋の死で。