複雑・ファジー小説
- Re: ついそう ( No.44 )
- 日時: 2013/01/05 14:22
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
+41+
取り敢えず僕は洋服を脱いで水に濡れている三春の体にそっと被せてあげた。
絶対に寒い。もう夏は終わったんだ。これからはもう秋になる。気温は低い。朝だし。
僕は台所に行ってコップで水を汲んできてあげた。
三春にそっと差し出すと、口に含んでうがいをしてから浴槽に吐き捨てた。三春はもう一度口を洗ってから僕を虚ろな目で見上げた。
僕はそんな三春に小さく大丈夫だと声を掛けた。この言葉を疑問形にしなかったのは、大丈夫なんかじゃないってことはもう見ればわかる事だったからだ。
大丈夫なはずがない。こんなに、胃の中が空っぽになるほど吐くような事があったんだ。
三春の吐瀉物をシャワーの水を当てて流していく。詰まってしまいそうなので、新聞紙ですくい上げることもした。
汚いなんて思わない。
僕を助けて、僕を愛して、僕を信じてくれる三春の吐いたもの。ぜんぜん汚いなんて思わない。
僕は三春の服に手を掛けた。悪いとは思うけれど、このままじゃあ風邪を退いてしまう。
水でぬれたパジャマを脱がせて、バスタオルを体に掛ける。洋服は洗面台に置く。吐いたものが少しかかっているからだ。
三春をベッドに誘導して、お風呂を洗った。そして栓をしてお湯を貼り始める。
ベッドの方に戻ると、三春がベッドの上で丸くなっていた。三春は膝に顔を埋めていて表情は見えない。
そんな三春に僕は温かいお茶を入れてあげた。そしてそっと隣に腰掛ける。
三春の服は後で手洗いをしよう。
僕はそう思いながらベッドの布団を引き寄せて、小さくなっている三春の体にかぶせる。これで温かいだろう。
そこで僕は三春に服を貸している事を思い出してくしゃみをしてしまった。上半身裸なのはいただけないので、パーカーを着た。
三春は寒くないだろうか。
三春の消えそうな呼吸だけが聞こえてくる。そして、お湯を貼っているお風呂の音。
それだけがこの空間を支配している。
僕は三春を抱き寄せた。
これ以上何かを言う気にはなれなかった。
ただいまは沈黙が心地いい。三春もそう思っていたらうれしい。そう思って黙っていた。
三春が何であんな事になってしまったのか、すごく気になる。どこか体の調子が悪いんだろうか。そんな素振り、昨日は見せなかったのに。
昨日はあれだけ近づけたと思ったのに、また距離を置かれたような気がする。
そんなことは許さないけど。
僕は三春のことを心配したい。三春の側に居てあげたい。
僕の側に三春が居てくれたように。