複雑・ファジー小説
- Re: ついそう ( No.46 )
- 日時: 2013/01/07 17:38
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w1J4g9Hd)
+43+
どういうことなのか。いまいち状態を理解していない自分の頭にイライラしてくる。
知らず知らずのうちに爪を噛んでいるのを知って、ビルの壁をたたいた。服屋のショーウィンドウにうっすらと映っているあたしの顔はひどく疲れているみたいだった。
どこかにホテルを取って休むことも考えたが、事態は一刻を争う。
あの秋という男、一体何者なんだ。
秋と言う名前を聞いた時は何も思わなかった。しかし、あの店員のせいで、六か月前の事件を思い出すことになってしまった。
ショッキングな事件だった。
あたしは米神を叩きながら、街を歩きだす。
酷い顔をしていることは分かっている。
あたしは精神的にも肉体的にも疲れている。
売る相手を間違えたか。
いやしかし、売った時は何も感じなかった。秋に何も感じなかった。
あのときの選択を間違えたとでもいうのか。
うじうじ考えても仕方がない。
あたしは大きく一歩を踏み出す。
とりあえず休もう。休まないで行動するなんてあたしらしくない。あたしらしく行こう。マイペースに。
あたしならできる。あたしはこれまで頑張って来たじゃないか。
あたしがもしも間違えたというのなら、あたし自身で解決をしないといけない。
それは前に考えたことじゃないか。
思考がループしているんだよ。
「あーっ! 浦河さん!」
大声で名前を呼ばれたので振り返ると、灰色のパーカーを着ている短髪の男があたしに向かって走ってきた。
あたしを咎めるような表情をしている。あたしは止まって彼を待った。側まで来ると彼は額の汗を拭いた。
「どこ行ってたんですかっ!」
「金髪長身男に会いに行っていた。でも始末はできなかったよ」
あたしが歩き出すと彼もちゃんとついてきた。
彼はあたしの行動が信じられなかったようで目を丸くして唇を噛んだ。あたしに異議があるみたいだけれど、口に出さない。それが懸命だ。
あたしに機嫌を損ねない方がいい。あたしは何時でも彼を殺すことができる。
少しも躊躇せずに。
「ごめんな。あたしはあいつのことを生かす気なんて最初からなかった。あいつは消さないといけない」
「っ」
短髪の男が息を呑んだ。あたしが仕様としていることの意味をしっかりと理解しているが、ちゃんと納得は出来ていないのだと思う。
それもそのはずだ。
あたしは自分の身を犯してまで、秋を消そうとしている。秋が生きて記憶を取り戻せば、あたしたちがやって来たことがばれてしまう。
あたしについてきてくれたこいつも道連れだ。
だから秋を消さないといけない。あたしが秋を消したことで捕まるなら、そうなったらあたしは命を捨てればいい。
あたしはしっかりと前を向いていた。
そのために、どうすればいいか。
あたしは落ち着いた頭で考え始めた。