複雑・ファジー小説
- Re: ついそう ( No.5 )
- 日時: 2012/09/26 20:48
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
- 参照: https://
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汚れきっていた服を脱いで、三春に言われていた籠に入れる。洗面台の前に立って、耳についていた青いピアスを外した。
なんで、こんな物をしているんだろう。なんで、僕の髪は金色なんだろう。なんで、こんな派手な格好を。
考えていたって仕方ないので、風呂場に入って、シャワーを浴びる。
初めて入るお風呂なので、シャンプーとかどこにあるかよく分からなくて迷ったけど、よくよく考えれば、僕に慣れているお風呂なんてないんだ。そうだった。
金色の髪を何回かに分けて洗う。汚れが邪魔をして、泡が上手く立たないからだ。体を洗うと、日に焼けていない白い肌が顔を出した。
すらりと伸びる白い腕と、足。自分の体なのに、すごく不気味に感じる。
鏡を見ると、僕と目が合う。黒い睫が飾る茶色い目。この頭の金は、染めたんだな。眉毛までしっかり染めているのに、まつ毛はしていない。当然だけど。
初めて見る自分の顔や、体を見たりしていたら、大分時間が経っていた。
ゆっくりと、まったりとお湯につかったり、指を絡めて見たり。泡を潰してみたり。そんな子供のようなことをしていると、すごく落ち着いた。
ここは、音が少ない。最後の方は慣れてきていたけど、まだ三春の出す音には慣れない。怖い。心臓の皮を直接撫でられて居るような感じがして、息が詰まる。それが嫌だ。だから、一人で居たい。まだここの音が少ない環境に居たい。
どうして、僕はそんなことを思うんだろう。
優しくしてくれる三春が、怖いなんて。
「……でよ」
ぽつりと呟くと同時に、蛇口の水滴も落ちる。
いつまでもこうして居たってしょうがない。のぼせてしまったら三春に迷惑がかかる。
お風呂場で軽く手で水滴を払ってから、出る。花柄のバスタオルで髪を拭く。顔を埋めてみる。いい匂いだ。落ち付く。
じーっとそのままの体制でいたら、くしゃみが出た。間抜けな格好をしていることに気がついて、急いで体も拭いて服を着ようとして、気が付いた。
僕、服はどうしたら良いんだろう。籠の中の僕がさっきまで来ていた服は汚すぎて、今お風呂に入った意味がない。
僕はドアを少し開けて、三春を呼んだ。
「三春、みーはーるー」
「秋、あーきー」
三春はすぐ近くにいた様で、すぐに来てくれた。
スリッパを引きずるような音がしたと思ったら、僕よりだいぶ背の低い三春が目の前に現れた。
「僕、服ないんだけど」
見えていないだろうけど、恥ずかしくて出来るだけ体をドアで隠す。三春には僕の顔しか見えていないだろう。
三春は唇に指を当てて、唸った。
しばらく唸った後、三春は当たり前のように、無表情で言った。
「バスタオルでも巻いておいて」