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複雑・ファジー小説
- Re: ついそう ( No.7 )
- 日時: 2012/09/21 19:00
- 名前: 揶揄菟唖 ◆bTJCy2BVLc (ID: w93.1umH)
- 参照: https://
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異議を唱えようとしたけど、すぐに三春は僕が開けていたドアを閉めてしまった。くしゃみがもう一度出る。
なんなんだ、それ。
仕方なく言われた通りにバスタオルを下半身に巻く。洗濯機の上に置いていた青いピアスを両耳に戻して、鏡で体と顔を確認してから、扉を開けた。
三春はすぐ近くのキッチンで何かを炒めていて、テーブルの上の包丁は無くなっていた。
まな板の上に放置されている包丁は、さっきの物とは違うものだろう。柄の部分の色が違うから。
「三春、お風呂ありがとう、ございます」
ホカホカと湯気を立てる髪を触りながら、三春に言うと、シンプルなエプロンをつけた三春が振り返った。僕の格好を見て、軽く微笑む。可愛らしく微笑む三春。
「敬語じゃなくていいんだよ」
「そんなこと言われても、」
三春は僕の声を遮るように、フライパンとフライ返しで音を立てて見せた。大人しく、僕は口を紡ぐ。
『三春』と僕に呼ばせるために浮かべた笑顔と同じ顔。
その顔に僕が逆らえないことを、三春は早くも理解したようだ。
でも、僕はどんな三春でも逆らえないかもしれない。
「三春、聞きたいんだけど、良い?」
三春はフライパンで炒めていたお肉と野菜を皿に移しながら、僕の言葉に反応する。
僕の言葉がまだ敬語だったらきっと、きっと。きっと、どうなっていたのかな。僕に対する三春の罰は、なんなんだろう。
少しだけ想像してみたら、体が寒くなった。
「三春と僕は、どんな関係なの?」
気になっていたことだった。
三春は僕に優しい。三春の知る僕じゃないはずだ。それなのに、まるで三春はそれを知っていたかのように、優しくしてくれる。
「……恋人よ」
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