複雑・ファジー小説
- Re: ラストシャンバラ〔A〕 —最後の楽園— 1−1-5 更新 ( No.47 )
- 日時: 2013/04/13 15:21
- 名前: 風死 ◆Z1iQc90X/A (ID: 68i0zNNK)
- 参照: あれ、展開が遅いな(汗
ラストシャンバラ〔A〕 ——宇宙の楽園——
第1章 第1話「呪うような声で、誓うだろう」 Part6
明日で暦上は冬か。
まぁ、人工的に温度とか調整されたこの歪(いびつ)な居住区じゃ、季節とかなんの意味もないけどな。
さて、5日前のテレポートマシン酔いも大きな問題だと思うが、俺にはもう1つ大問題がある。
自分の命なんて二の次だが、ノヴァへのプレゼントが決まっていない。
由々(ゆゆ)しき事態だ。
もちろん、俺が倒れることもノヴァがいる限り、あれなのだが。
ほら、ノヴァはきっと俺が死んだりしたらそうとう悲しむ。
あぁ、いや、そうじゃない。
今、俺が気にすべきなのはあれだ。
ノヴァへの贈り物。
それが決まっていないこと。
「やばい」
あーっ、サンファンカーニバルまであと2日だよっ。
今まで何度もプレゼントとかはしたことあるが、ことサンファンカーニバルの日にってのは経験がない。
このカーニバルは1週間の長期にわたって行われる大祭で、そんな日に贈呈(ぞうてい)しますとか言ったら、特別なものじゃないと。
あぁ、全く思い浮かばねぇ。
しかたないから、近くにいる女子に聞いてみるか。
そもそも、放課後4時半じゃいる奴もすくないけどさ。
俺は教室内はすばやく見回す。
すぐ目に付いたのはピンクのショートボブ。
わが学級の委員長、リズリー・アーシュロヴその人である。
女子からはリズって愛称で呼ばれてて、ノヴァともそこそこ仲が良い。
おっとりとした顔立ちの巨乳姉さんだ。
右目が紅色なのにたいし、左目は琥珀色。
この時代においても珍しい、オッドアイの持ち主である。
我が校の制服である、白いブレザーに青のスカートをコーティングしたりせず、しっかりと着こなすさまはまさに委員長といった感じだ。
本来なら部活や委員会で放課後などいないはずだが珍しいこともあるもんだ、と思いながら俺は委員長に声をかけた。
「なぁ、委員長!」
呼ばれたことに気づいて彼女は、ゆったりした動作で俺のほうへと振り向く。
「どうしたのヴォルト君。君が僕に話しかけてくるなんて、珍しいなぁ」
可愛らしく首をかしげながら、用件を問う委員長。
俺は話し慣れない相手に、少し戸惑いながら口を動かす。
「実はさ、悩みがあるんだが……」
「ふーん、どうせ、君の悩みは愛しのノヴァちゃんがぁ、ってことでしょう?」
言葉をさえぎるように委員長は言う。
その口調はからかっていると言うよりは、少し羨ましそうな嫉妬の入り混じった感じだった。
さすがに学校ではいちゃつくのは控えているんだが。
どうやら、案外周りには駄々漏れっぽいな。
嫌だなぁ、ノヴァは美人だから、男子生徒は大半興味あるだろうし……
委員長が鋭いから、気づいてるってだけだと嬉しいけどなぁ。
「否定はしない。それでサンファンカーニバルでプレゼントを交換することになったんだが、女の子が喜びそうなものってなんだ?」
「君は率直だな」
このままでは話が進まなさそうなので、俺は相談の本旨を口にする。
委員長はなぜか頬をりんごみたいに赤くして、目を泳がせた。
率直なのがなにがいけないのだろうか。
訳が分からない。
しばらく、沈黙したのち彼女は再び口を開く。
しかし、委員長が挙げていくものはすべて、今までにノヴァに送ったことがあるものばかりで、なにかピンとこない。
「なぁ、もう少し高級そうな奴を例えに上げてもらえると嬉しいんだが」
「そっそう! 愛し合ってるなら、そんな値段とかじゃないと思うけどなぁ……うっうーん、指輪とかどうかな? 君達そうとう仲良いみたいだしさ!」
指輪か。
悪くないかもしれない。
まだ、そういうのは早いかなとか思っていたんだが、結婚後につけて欲しいって言って。
古典的かもしれないが、悪くは……いやいやいやいやいや、待て。
俺の財布が何回死んでも買えないって、指輪とか。
そうだ、委員長はけっこう裕福な家計だし言いだしっぺだ。
援助してもらおう。
「委員長! それは良い案だと思うが、お金が足りないんだ。つまり、その借りたいんだが良いでしょうか!?」
「君は本当にノヴァちゃん一筋だなぁ。他人にはいくらでも情けないところ見せても構わないってその心意気気に入ったよ」
よし、最後の敬語が聞いたのか、脈有りだぜ。
あと一押しすれば。
「よっしゃぁ! 話が分かるぜ委員長! で、どれくらい支援ガフッ」
殴られました。
そりゃぁ、そうですよね。
最初から分かってましたとも。
委員長やってる人が校内でお金の貸し借りとか、立場上普通できないだろうしさ。
ばれなけりゃ良いなんて、不良的考えする奴そんな立場やらないのは当然なことだ。
「どうしたものかな。いっそ、盗みでもグフッ!」
「やめなさい」
今度は後頭部にエルボー。
いや、冗談だって分かってますよね。
痛い。
暴力反対です。
委員長は役に立たなかったので、次の女子にシフトしようかな。
そう思って、場所を移動しようとした矢先。
委員長は小走りで俺のそばへとくる。
なにか言いたげな表情だ。
「なに?」
委員長はぐるりと教室内を見回す。
放課後のせいもあって、残っているクラスメイトは少ない。
たぶん、委員長に気のある奴がいないか、確かめたのだろう。
確認し終えた委員長は、唇を俺の耳元へと近づける。
そして、小さな声でささやいた。
「そっか、ノヴァの奴、そんなこと言ってたのか」
今までで1番有益な情報。
俺は自然にガッツポーズを作った。
そんな俺を見て、なぜだか照れくさそうにする委員長。
「ありがとな委員長! 参考になったよ!」
「うっうん、役に立てたのなら僕は嬉しいよ」
委員長に礼を言うと、俺は走って教室をでる。
なんだか世話好きの委員長らしい台詞が、後ろから聞こえたように感じたが無視。
プレゼントするものは決まった。
お金も委員長から聞いたものを買うには十分だし、ノヴァもきっと納得してくれるだろう。
本当に委員長様様だよ。
たぶん、俺1人で悩んでたら絶対どツボにはまってたろうな。
それにしても委員長、なんであんなに顔赤らめたりしてたんだ。
俺に気があるとか、絶対ありえないだろうに……
まっ、委員長のこととかどうでも良いか。
End
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