複雑・ファジー小説
- Re: ラストシャンバラ〔A〕 —最後の楽園— 1−1-10 更新 ( No.63 )
- 日時: 2013/09/07 16:59
- 名前: 風死 ◆Z1iQc90X/A (ID: 68i0zNNK)
ラストシャンバラ〔A〕 ——宇宙の楽園——
第1章 第1話「呪うような声で、誓うだろう」 Part11
イテェ。
頭の中に直接響く。
音叉打ったときに出るような超高温が至近距離で。
体が揺れる。
頭が振り子のように揺らいで、地面と空がグチャグチャだ。
あぁ、暗くなっていく。
眩暈(めまい)が酷くてヤバイ。
少し待て。
何打これはあの時の症状とも違う。
初めての感じ。
「力が欲しいか?」
あれは、親父。
この耳障りな声は間違いなく餓鬼の頃聞いたことがある声だ。
「親父!? てめぇ、どういうことだ!?」
周りを見回しても何の姿も見えない。
あの時ははかなげな表情をしたノヴァが見えたが、今回は何もかも黒一色だ。
不安は焦燥感になり俺は喚き散らす。
「親父! 居るなら答えろよ! 何がどうなって……」
そもそも、親父なんてここに居るはずが無いのに何を言っているんだ。
そんな違和感を感じながらも俺は叫ばずに居られない。
「欲しいのなら、光に触れろ。入らぬなら、闇の中で永遠に彷徨(さまよ)い二度と目を覚ます必要はない」
「なっ、てめぇっ!? 俺の話はっ」
叫びすぎて喉がマグマの水でも飲んだかのように熱くなった頃だ。
俺の言葉なんて堂々と無視したような、完全に自分の言いたいことだけを告げているような台詞。
あぁ、絶対殴ってやりたいと思えるあのクソ野郎らしい自己中っぷりだぜ。
多分絶対コミュニケーションなんて取れねぇな。
俺は1つ嘆息し周りを見回す。
「光? 見当たらっ」
「有るじゃないか? そこにお前の魂が」
闇の中から突然現れた腕。
筋肉質ながら細身で無駄のない、いつぞや以来見る親父の腕の形とそっくりだ。
何で昔と全く変わってないのかは結局これが自分の記憶内で起こってることだってのを示唆(しさ)してるんだろう。
そいつの指が俺の心臓を指差す。
俺が目を下ろすと突然現れた腕と変わらないくらい唐突に、俺の胸は淡い水色の光を放ちだした。
「何だ!? いきなりっ」
「シャングリラを目指すものがその程度でビビるなよ? 箱庭から外に出たらもっとやべぇことが幾らでもあるぜ?」
驚いて心臓を押さえるようにする俺。
今度は俺に語りかけてくる声のほうが嘆息して。
嘆かわしそうな風情で説教を垂れやがった。
他人の言葉にも反応できるじゃないかと、少し関心もしたがやっぱりむかつく。
本当にあの男は自分勝手で人をおちょくるのが好きらしい。
「ちょっと待て! これが光だって言うなら俺はすでに光に触ってねぇか!? 一体どうなるんだよ!」
「一々うるさい奴だ。そんなこと俺が説明する義理はねぇ。まぁ、どうせ今すぐどうこうってこたぁねぇさ。気楽にしてろ」
何だってんだよ。
結局、何の考えも無く突発的でも何かしら起こるってことか。
畜生(ちくしょう)。
「無責任な……」
そう虚無の空間で毒づくと同時に黒はカーテンを開けたかのように一瞬で消え、凄まじい光が目を焼く。
「くっ!」
「ほぇっ?」
凄い長い間暗黒の中で彷徨っていた気がしたんだが、どうやら案外時間は経っていないようだ。
証拠に突然の声にノヴァが驚きの声を上げているのが、意識を戻すと見えると同時に耳に入る。
俺はゆっくりと後ろへと振り向く。
声を掛けた相手の姿を確認するために。
End
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