複雑・ファジー小説

Re: ラストシャンバラ〔A〕 —最後の楽園— 1−1-12執筆中 ( No.67 )
日時: 2013/10/27 13:15
名前: 風死  ◆Z1iQc90X/A (ID: 68i0zNNK)

 
 ラストシャンバラ〔A〕 ——宇宙の楽園——
 第1章 第1話「呪うような声で、誓うだろう」 Part12

 長身でスタイルのいい銀髪。 
 身体的特徴を焼き付けろ。
 何かがおかしい。
 1番の特徴はこの辺では珍しい浅黒く焼けた肌の持ち主で、サングラスに黒いスーツ。

 いや、待て。
 あの左胸ポケットの紋章。
 破壊の象徴たる獅子(しし)を、再生の象徴たる蛇が締め付けて殺そうとしているあのマーク。
 あれには見覚えがあるぞ。

 ココルギネア。
 本来いかにサンファンカーニバル中とはいえ、絶対にこの居住区にいてはいけない存在のはず。

 怪しいじゃない。
 確定だ。
 こいつは警戒すべき敵。

 「ちょっと待てよ。あんた何者だ? ノヴァをどうする気だよ、しらばっくれるんなら1つ教えてやるぜ! この区にココルギネアのスカウトマンが来るとかありえないってな」
 
 一瞬、相手の動きが硬直(こうちょく)する。
 どうやら知らなかったらしい。
 ココルギネアの社員ならありえないことだ。
 少しの間無言で立ち尽くすと、健康的な黒い肌の女スカウトマンの口角がつり上がった。
 見破られて気でもふれたか。
 そんなばかな。

 「へぇ、意外と警戒心が強いんだな。フレイム居住区の連中はかなり警戒心が緩いって、ある人から聞いたんだけどなぁ」

 待て。
 コイツ可笑しい。
 自分の悪意が見破られて動揺するどころか、楽しそうにしてやがるっ。
 狂気。
 俺がノヴァを愛する気持ちとはまた違うベクトルの。
 だが待てよ。
 それ以上にさっきの台詞には違和感が。
 
 "ある人”だと。
 ある人ってのは誰のことだ。
 そもそも物言いが引っかかる。
 わざわざ俺に突っ込ませたいような……
 俺を知っている人間。
 いやありえない。
 そんなのコイツ自身が俺を知っていないと可笑しいだろ。
 分からない。
 だが、とにかく俺の勘が言ってる。
 それを問え、と。

 「なぁ、あんたある人から聞いたって言ったな? 誰だ!? おい、答えろよっ!」

 声を荒げる俺。
 それに対して凄絶(せいぜつ)なまでに、表情を歪ませる目の前の女。 
 そして嬉々(きき)として女は口を開く。
 大して暑い日でもないのに、額から汗が滲(にじ)む。
 俺の心臓が警鐘(けいしょう)を鳴らしている。
 早鐘(はやがね)をうって息が苦しい。
 聞いてしまったことを後悔するんじゃないか、そんな予感が体中を駆け巡ったそのとき。

 「アッサーマン、アッサーマン・ジルだ」
 「親父……だと!?」

 その女の口から出た名前。
 それは俺の父親の名前だった。
 勝手に家族を捨てて故郷を飛び出し、10年以上音信不通のクソ親父の名。
 
 その馬鹿親父とコイツは関わりを持っている。
 何者なんだコイツは——
 とにかく、ろくでもない奴であることは違いない。 

 そして、その女はさらに言葉を続ける。

 「やっぱりか、君はヴォルト・ジルだな?」

 あぁ、頭がクラクラするぜ。
 何で見ず知らずの人間に名前まで……
 あんた親父とどんな関係だよ。
 

 
  

 End

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