複雑・ファジー小説

Re: ラストシャンバラ〔A〕 —最後の楽園— 1−1-12更新! ( No.71 )
日時: 2013/11/24 14:49
名前: 風死  ◆Z1iQc90X/A (ID: 68i0zNNK)

 ラストシャンバラ〔A〕 ——宇宙の楽園——
 第1章 第1話「呪うような声で、誓うだろう」 Part13

 「どういうことだ、何であんた俺の名前をっ!?」

 親父のことを知っているのなら、俺の名を知っていてもおかしくないのに。
 そんなことに思い至らない状態の俺はただ当惑するばかりだ。

 「その発言は可笑しいだろう? 私は君の父親と仲が良いんだよ」
 「あんなっ、あんな奴は父親じゃない!」

 そしてズバリと正鵠を射る浅黒い肌の女。
 俺はかすれ気味の声で反論する。
 精一杯の唯単なる強がり。
 当然俺をからかっている相手側はうすら笑いを浮かべ俺をバカにしている。

 「ヴォルト!? なっ、何なんですか貴女!? いったい、私達に何のようなんですか!」
 「あぁ、実際に用があるのはあんたの方なんだがな?」
 「何で!?」
 
 俺の辛そうな表情をチラリと見てノヴァは叫ぶ。
 すると女は解せない返答を返す。
 ノヴァが狙い。
 どういうことだ。
 俺は逡巡する。
 アッサーマンと関わりがあるなら、俺を狙いそうなものだが。
 そもそも親父は何を。
 いやその問いは後か。
 こいつはヤバい。
 逃げないと。
 
 「ノヴァ、逃げるぞ!」 
 「ちょっ、ヴォルト!?」

 俺はとにかくおもむろにノヴァの手を引き寄せる。
 驚き声を上げるノヴァに反応する余裕は無い。
 1番近場のテレポートマシンへと走り出す。

 「俺は、俺はお前を失いたくないから絶対守る。分るだろ、あいつは俺達にとって危険だ!」
 「ねぇ、ヴォルト。あの人達、どうやってこの広いフレイム居住区から私達を見つけたのかな?」
 「そんなのフレイムの場所は親父から聞いたんだろうし、顔も知って……いや、いやいや、顔を知ってたってそんなピンポイントで」

 とりあえずその場から逃げた俺達は息を整える。
 ノヴァにあの場を離れた理由を告げ、今度は地元民からは迷宮区と呼ばれる入り組んだ区間へと進む。
 その最中にノヴァは俺に問う。
 俺は今はそんなことどうでも良いとでも言うように、見つかりづらい場所に移動しなければと主張するが。
 確かに考えてみれば妙だ。
 そう、どう考えても異常。
 俺が今口にした情報だけでそんな速く正確に。

 「そうだよ。私達の居る場所を把握できる装置か何かを持ってるって考えるのが……」
 「だとしたら、俺達は奴らからどう逃げる?」

 確かにノヴァの言う通りなら理に適う。
 何かしらの装置を使い俺達の位置を把握しているなら、どうやって奴から逃げとおす。
 いや待て、相手がテレポートマシンの使い方が分らないなら、ラグは生じるはずだ。
 そうだ、テレポートマシンの連用でかく乱すれば。

 「テレポートマシンを多用して逃げ回って警察がくるまで待つ、とか」
 「そうだな。あいつは地元民じゃなさそうだしテレポートマシンの使い方も」

 どうやらノヴァも俺と同じ考えに達していたらしい。
 警察に先ず通報して、それから逃げ回れば……

 えっ、何で。

 目の前にはあの女がいた。


  

 End

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