複雑・ファジー小説

Re: 神様チルドレン【オリキャラ募集中】 ( No.10 )
日時: 2012/11/18 16:28
名前: 三月兎 (ID: eldbtQ7Y)



「ふぇっくしゅ!!」

ちとせはマスクごしに鼻を押さえ、盛大なくしゃみをした。

「風邪でも引いたのかい?」

そんな彼に、スーツを着た男性が声を掛けた。
男性は少しはねた茶髪に、澄んだ薄茶色い瞳をしている。
顔立ちこそ整っているが、どこにでもいそうな風貌をしていた。

「風邪……?……引いてない」

一瞬考えていたようだが、ちとせは小さく首をふった。
男性は口角をゆるめ、フフッと笑う。

「そう?じゃあ誰かが噂しているのかな?」
「噂……?……なにそれ」

ちとせは大きな黒い瞳をパチクリさせ、不思議そうに首をかしげた。
男性は困ったように頭をかき始める。

「え?えっと……なんていうのかなあ。まあ、誰かが君の話をしてるんだよ」
「……そう」

あまり分かりやすい説明とは言えなかったが、ちとせはとりあえずうなずいた。
そのまま話をやめ、リビングにある黄色いソファーに座り直す。
目の前にあるテレビを、ぼーっとした目で見つめ始めた。

「パパ相変わらず説明が下手ねえ」

今まで黙ってちとせの隣に座っていた少女が、呆れた様子で口を開いた。
腰まであるフワフワの茶髪を揺らし、スッと立ち上がる。
レースのついた桃色のワンピースをひるがえし、男性に近づいて行った。
少女やちとせとは少し離れた椅子に腰をかけている男性は、少女の茶色い大きな瞳を見据える。

「夢穂……相変わらずなんて……」
「パパ勉強は出来るのに、教えるのも下手だし……。あ、同じか」

傷ついた表情をつくる男性を気にせず、夢穂と呼ばれた少女は続ける。

「本当にパパがかっこいいのは仕事中だけなんだから」

ため息交じりにつぶやくと、男性の傍に置いてあったピエロのような仮面をてにとった。

「次はいつこれつけるの?」
「来週の予定だよ」

夢穂の問いかけに、男性は優しげな笑みをみせる。
夢穂は「ふーん……」と、一見興味な下げにつぶやいた。

「まあ、夢穂の夢の結果が悪ければ実行しないけどね」

小さくつけたされたその言葉は、夢穂には届いていなかったようだ。
彼女は再びソファーに戻ると、ちとせの隣に座った。

「……団長」

ちとせはチラリと男性に目をやり、彼にそう呼びかけた。
男性はちとせの目を見て「なんだい?」と聞き返す。

「……力……いる?」

おそらく「自分の力は必要か」と言いたかったのだろう。
柳田組の人間にろくな教育をされていなかったちとせは、言葉の使い方もあやふやなようだ。もちろん、知っている単語も少ない。

そんな彼に団長と称された男性は、ニッコリと音の鳴るような笑顔でうなずいた。

「ああ。今回のは特に、お前がいないと始まらないよ」

そう言うとiPhoneのアドレス帳を開く。
そして、その中の【神様チルドレン】という項目をタップした。
現れた数人の連絡先を眺め、フフッと妖艶な笑みを浮かべる。

「また、制裁を下さないといけない奴らがいるんだ」

彼の表情は、実に楽しそうだ。