複雑・ファジー小説
- Re: 神様チルドレン【オリキャラ募集中】 ( No.18 )
- 日時: 2012/11/25 10:14
- 名前: 三月兎 (ID: eldbtQ7Y)
電車に乗ること一時間。
蘭斗はようやく目的地付近に到着した。
足速に目的地へと向かいつつ、携帯にも視線をやる。あれ以降連絡は来ていなかったのだが。
蘭斗は顔をあげ、どこにでもある住宅地に足を踏み入れた。
同じ色、同じ形の家々を見上げながら、蘭斗は少しずつ駆け足になっていく。
そして、【鐘咲】という表札のある家の前で足を止めた。
軽くあたりを見回し、その家のインターフォンをおす。
「はい」
ハスキーな声とともにドアを開けたのは、金色のセミロングを編み込みしている大人の女性だった。
Tシャツにカーゴパンツと、完全に緩み切った服装である。
女性は大きな焦げ茶の瞳をパチクリさせた後、パアッと顔を輝かせた。
「蘭斗!久しぶりね!」
「わっ!」
女性は両手を広げ、勢いよく蘭斗に飛びつく。
Eカップは超えるだろう豊満な胸に顔を押しつけられ、蘭斗は慌てたような声を漏らした。
「ひ、久しぶり。立華さん」
蘭斗は苦笑を浮かべながら、今だ抱きついてくる立華を引きはがす。
立華は少し残念そうに離れたが、すぐにキュッと目を細めた。
「響さんがお待ちかねよ」
「え!?もう皆来てるのか?」
「まさか。樹も影無も雅も純一もまいも」
「……だよな」
蘭斗は再び苦笑し、「お邪魔します」と言って家に入っていく。
玄関には9足の靴が綺麗に並べられていた。
「それね、詩織がやったのよ。蘭斗と綺麗に並べとかないとね」
立華はクスッと笑い、蘭斗より先に家の奥へと進んでいく。
蘭斗は玄関にしゃがみ、自分の履いていたローファーを整えた。
そして立華の後を追うように、リビングの扉を開く。
「やあ、久しぶり」
扉を開けると、そこには9人の男女の姿があった。
蘭斗に声をかけたのは、イスに腰をかけたこの家の主、団長こと鐘咲響だ。
足と手を組み、にこやかな笑みを浮かべている。
そしてTVの前の黄色いソファーには、小柄な夢穂と細身なちとせが並んで座っていた。
ちとせは室内だというのに、黒い猫の耳のように恥の尖った帽子をかぶっている。
「遅かったな。何をしていたんだ?」
身長174cmほどの青年が、壁に持たれながら言った。
黒縁メガネの下で、エメラルドグリーンの瞳が強い光をおびている。
前下がりの黒髪とワイシャツに黒い長ズボンという服装が、彼に秀才的オーラを放たせていた。
蘭斗は「航さん……」と声を漏らし、困ったような表情で笑った。
「これでもホームルームを飛ばして来たんだけどな」
「だめじゃない!サボるなんて!!」
蘭斗の言葉に、絨毯の上に座っていた少女が声を荒げる。
藍色の長い髪を赤いリボンで結び、セーラー服に身を包んだその姿は、可愛らしくも覇気が感じられた。瞳が赤く、つり上がっているからだろうか。
「相変わらず生真面目だなあ。詩織は」
愉快そうに肩を揺らし、響は口を開いた。
「まあ、まだ人集まってないけど話を始めさせてもらおうか」
皆はただ、彼の言葉の続きを待つ。
その表情は、真剣だがどこか楽しげな……そんなものだった。