複雑・ファジー小説

Re: 神様チルドレン【オリキャラ募集中】 ( No.21 )
日時: 2012/11/28 21:16
名前: 三月兎 (ID: eldbtQ7Y)

「でね!お父さんったら……」

そこまで言って、奈々希は言葉をとめた。
自分の話しかけている相手が、話をあまり聞いていないことに気づいたのだ。
むうっとした表情をつくり、奈々希は隣に立っている少年の青いカーディガンを引っ張る。

「樹君。聞いてる?」

樹はハッとした様子でiPhoneから視線を外し、奈々希の茶色い瞳を見つめた。

「なにを?」
「だからぁ!お父さんが調べてる変な事件の話……ってだいたい人が話してる時に携帯をいじる時点でおかしいでしょ!このマイペース男!」

奈々希はそうまくし立てると、樹の真ん中わけになった紺色の髪を引っ張る。
と言っても樹は178cm、奈々希は164cmなので、掴んでいるのはしたの方なのだが。

「何でもかんでも引っ張るなよ」

樹は呆れたように呟き、奈々希の手を引き離した。
奈々希は納得いかないのだろう。表情を変えずに樹を睨む。
今は放課後デート……とでも言うのだろうか。
放課後の教室で二人、帰りもせずに話すのが彼らの日課なのである。
その最中に携帯に夢中になられては、イライラするのも仕方が無い。

「……もう、今日は帰ろう」

突然の奈々希の変化に、樹は「えっ」と小さく声を漏らした。
その綺麗な紅眼で奈々希を見据える。
あまりにまっすぐ見てくるので、奈々希は少々顔を赤くして「な、なに?」と聞き返した。

「いや?あ、俺今日行くとこあるから一緒に帰れない」
「……え?」
「じゃあな。気をつけて帰れよ」

樹は眈々とした口調でそう言うと、そばにある机においておいたバッグを掴んだ。
そしてヒラヒラと手をふりながら、教室をでていってしまう。
残された奈々希は、そばにあるイスを乱暴にひき、ドスンと腰をかけた。

「ほんっっとデリカシーないんだから……!」

奈々希は大きな瞳を潤ませ、唇をとがらせる。
するとそこに、奈々希の友達がやって来た。

「泉実……」

ガラッというドアのあく音に反応し、奈々希は顔をあげてそう言った。
泉実と呼ばれた少女は短い黒髪をゆらし、苦笑を浮かべている。

「風谷君、相変わらずクールねえ」
「あれはクールなんじゃないの。冷たいんだよ」

奈々希は顔をしかめ、泉実にふてぶてしい態度をみせた。
泉実は慰めるように続ける。

「冷たくはないでしょ!用事あるからってさっさと帰らなかったんだし」
「いつから聞いてたのよ」

力説する泉実に、奈々希は少し困った顔で笑った。

「仕方ないんだろうけどさ……。私が告ったんだし、樹君は恋愛とか興味なさそうだし……でもさ……付き合って3ヶ月でキスもないんだよね……」
「手をつなぐどまり?」
「うん。それに、今日みたいな用事も言うのが突然で、何のようかとか教えてくれないの」

奈々希は言い終えると、深いため息をついた。