複雑・ファジー小説

Re: 神様チルドレン【オリキャラ募集中】 ( No.29 )
日時: 2012/12/23 18:14
名前: 三月兎 (ID: eldbtQ7Y)

「……さすがの団長も、怒ってるんじゃないの?影無さん」

銀髪を風になびかせながら、碧眼の少年は小さく呟いた。右側だけ前髪が長く、右目は見えない。
しかも、グレーのパーカーに黒いマフラー、黒い長ズボンと服装にあまりこだわりはないようだが、女性的な整った顔の持ち主だ。
公園のベンチに座っているのだが、異常に似合わない。

「今、団長に現地集合にしてくれって送ったし、大丈夫だろう。……それに、またあいつのせいだしな」

少年が影無と呼んだ、彼の隣に座っている青年は、イラだだしげにそう答える。
黒髪にコートを着ている彼もまた俗に言うイケメンだが、切れ長の鋭い赤と紫のオッドアイが常人とはちがうオーラを放たせていた。前髪が長すぎるのは、その目を隠すためだろうか。

「雅……嘘でいいから笑顔を作れよ」

影無はむすっとしている少年に言う。しかし、彼が表情を変えることはなかった。

「すみません。お待たせしてしまって」

突然の遠慮がちな声に、雅はふと顔をあげた。
影無はそれと同時にスッと立ち上がった。先ほどの苛立たしげな様子は消え、爽やかで優しげな笑みを浮かべている。

「いえ、俺たちも今来た所なんで」

そんな言葉を並べて笑う影無の前には、一人の女性と青年が立っていた。
女性はフワフワした柔らかな短い茶髪に色白の肌をしていて、垂れ目な大きな瞳が特徴の美人だ。森ガールのような服装も、雰囲気とあっている。
その後ろに立っている青年は、ぽりぽりと黒い短髪をかきながら苦笑を浮かべていた。

「じゃあね、純ちゃん」

女性は影無たちに一礼すると、ニコッと音がなるような笑みを一緒にきた青年に向ける。
純ちゃんと呼ばれた青年も、「あとでねー!」と声をかけた。

「おい」

女性が角を曲がり姿を消した瞬間、影無は今だ顔の緩んでいる純一の肩を掴んだ。純一も180cmあるが、影無はさらに大きいので威圧感が半端ではない。
声も女性がいた時よりずっと低く、ドスのきいた声色だった。

「まーた義母さんとデートかあ?いい身分じゃないか」
「あ、いや、ほんとすみません」

ニコニコと邪悪な笑みを浮かべる影無に、純一はヘラヘラと間の抜けた笑みを返した。

「ハハハー……いやあ、連絡に気がつかなかったんスよねー……」
「影無さん。そろそろいかないと本当まずくない?」

言い訳を続けようとする純一の言葉をとぎり、雅は赤く染まった空を見上げる。
影無は「そうだな……」と小さく声を漏らした。

「説教は面倒だから他のやつにしてもらえ。ショータイムまであと少しだしな」

影無はふふっと妖艶な笑みを見せる。
雅はなにも言わずに頷いた。

Re: 神様チルドレン【オリキャラ募集中】 ( No.30 )
日時: 2012/12/26 13:14
名前: 三月兎 (ID: /dHAoPqW)


「やあ、遅かったね」

響はキュッと目を細めて、柔らかな笑みを向けた。
一方、向けられた影無は純一に目をやる。
雅は「ごめん」と、平然な顔をして言った。

「っていうか、さっさと仕事しよーぜ。いつまでこんな茂みの中で話すんだよ」
「まだ集まったばかりだろ、尚兄。……ってあれ涼君いなくないか?」

ふてぶてしい態度で木にもたれかかる尚に、蘭斗は苦笑を漏らす。
しかし、それと同時に響は真剣な表情で口を開いた。

「確かに尚の言う通りだ。仕事は早く終わらせた方が安全だしね」

そう言うと、スーツの懐から仮面を取り出した。鐘咲家のリビングにおいてあった、あのピエロの面である。そしてそれを自らの顔に重ねた。

「影無たちがいなかったからここで説明する。まず今回の仕事についての注意だ」

響の言葉に、全員が顔を見合わせた。彼が仕事に注意をもたらすなど、なかなかないことだったのだ。

「第一に、殺しはするな」
「……は?」

風谷は思わず間の抜けた声を漏らす。美雨もまいも瞳をパチパチさせた。
全員(珍しい……)と心の中でつぶやく。

「もちろん、自分の命が最優先だ。殺されるくさいなら殺せ」
「……今までより世間体を気にしているのはどうしてだ?」

メガネのしたの目を響きに向けながら、航は腕を組んだ。
響はくくっと肩を揺らす。表情はわからないが、笑っているのだろう。

「俺は世間体なんて気にしてないよ。ただ日本の犬は優秀だからね。少し遊んで見たくなっただけ」
「……人を殺さないことで、わざと証拠を残すのか?」

風谷の問いかけに、響は「そのつもり」と頷いた。

「まあ結局は、純一が全部なかったことにしてくれるからね」

響はそうつけたすと、茂みの向こうにそびえ立つ巨大な建物に向き直る。
第豪邸という言葉では収まらないほどの大きさの家だ。マンション何個分だろうか。
白をベースとしているせいか、大きさの割には地味な感じもする。

「じゃあ、始めようか」
「ちょっと待って響さん!涼は?」

立華の慌てた声と共に、ポケットに入っていた響のiPhoneが音を立てた。
音楽はショパンの大洋。意外と言うのか彼らしいと言うのか。

『あ、団長?』

年の割に高い、子供のような声が響の耳に届いた。
大声で喋っているのか、声は他の団員にも聞こえていく。

「涼か、どうだい終わった?」
『はい!一応ね、コントロール室までの警備員はあらかた気絶してもらいましたよ。うっかり死んじゃってるかもしれないけど、それは相手が銃を向けてきたので』
「そうか、じゃあ俺たちも行くよ」

響は通話を切ると、「きこえたでしょ?」と団員を見た。

「ふーん、涼だけ先に行かせてたのね」
「ああ、コントロール室までいきたいけどカメラには出来るだけ写りたくないだろ?だから警備員が応援を呼ぶ前にその場にいる全員を倒して、コントロール室でカメラを壊しちゃえばいいかなと」

夢穂は呆れたように自分の父親を見たあと、隣にいるちとせに視線をやった。

「ちとせ、頑張ってね」
「……ん」

ちとせは小さく頷き、茂みの中から出た。

Re: 神様チルドレン【オリキャラ募集中】 ( No.31 )
日時: 2012/12/29 21:33
名前: 三月兎 (ID: /dHAoPqW)


「派手にやったな、涼のやつ」
「これ、音立てずにやったってすごいっスよね」

玄関からコントロール室までの廊下で何人か倒れている警備員を見つけ、影無と純一は感嘆の声を漏らす。
ちなみに今回は、玄関からどうどうと入って行ったのだ。
長く豪華な廊下は静かで、大富豪の家というよりも何かの施設のようだった。

「……にしても、ガード甘くない?」
「そんなことないよ。だから涼の通った道以外は通れない」

あたりを見回しながら呟く詩織に、響はたんたんとした口調で言った。
そして「あっ」と仮面をとって、ヒラヒラと手を降る。

「もー……、もっと急いでくださいよ。僕一人だったんですから」

そこには、コントロール室から顔を出した涼の姿があった。
額に眉を寄せ、ムゥっとした表情を作っている。

「悪いね。助かったよ」

響はそんな涼に爽やかな笑みを見せ、彼のいるコントロール室に足を踏み入れた。
蘭斗たちもあとに続き、思わず驚愕に目を見開いた。

「凄いな……!」

彼らの目の前に広がっているのは、大量にあるコンピュータの画面だった。いくつもの関しカメラの映像が流れ、彼らには理解不能な機会が並んでいる。
響はそのうちの一つに手をかけ、中を確認し始めた。

「あー……やっぱり俺たち写ってるな……。ちとせ、いける?」
「……うん」

響きが振り返ると、ちとせはコクリと頷く。
そしてスタスタと光を放つ機械に近づき、自らの右手を躊躇なく画面に突っ込んだ。
ズブズブと沈むような手は画面の中に入れていき、感触を確かめてから足をいれる。最終的に、彼の体は完全に機械の中に沈んで行った。

「レアな能力だよな。機械の中に入れるなんて異常な……」
「航には言われたくないでしょ」

画面を見つめ呆れたように言う航に、立華は苦笑を漏らす。
そしてその瞬間、ブレーカーが落ちたかのような、ブッという音が室内に響き、部屋全体も機械も真っ暗になった。

「ひゃあ!な、なんでー……」

美雨はビクッと肩を動かし、不安げに目を泳がせた。
風谷は「はあ……」と小さくため息をつく。

「恐らくこの屋敷は、証明までコントロール室で完備してたんだろう。ちとせのやつ、機械の中で全部壊したのか」
「ごめん」

ちとせは機械の中からひょっこり顔を出し、珍しく頭をかいた。
響は顎に手を当て考えるポーズをとったあと、「じゃあ……」と声を漏らした。

「機械が全部壊れたから警報こそならないが、全体が停電になり玄関からコントロール室までの警備をしていた人間と連絡が取れなければ、間違いなく侵入者を探し出すだろう。ここはバラバラに動くか」

そう言ってメンバーに視線をうつす。そしてにっと口角をあげた。

「よし、いつも通りのメンバーで動いてね。樹と尚と蘭斗、影無と雅と純一。詩織と美雨と立華。涼と航とまい。それで俺とちとせと夢穂ね」
「了解」

メンバーが声を合わせるのと同時に、響は仮面を再びつけた。

「今回の目的は白い少女だ。その子をただ奪還すればいい」

白い少女……それは一体何者なのか、メンバーはまだ知らない。彼らはただ、響の意思に従うだけなのだから。

だから誰も突っ込んだりはしない。
『奪還』の意味が間違っているということに。

Re: 神様チルドレン【オリキャラ募集中】 ( No.32 )
日時: 2013/01/02 23:23
名前: 三月兎 (ID: CWUfn4LZ)


「あー、くそ!どうしてこんなことに……あのクソ豚上司が!豚丼にするぞ!」
「いいんですかー?警察が悪態ついて」

株式会社社長仙川勝彦の屋敷で、盛大に悪口を吐く雨宮に、朔は呆れた様子でつぶやいた。
雨宮は鬼の形相で朔を睨みつける。

「今俺は虫の居所が悪いんだ。余計なこと言うな」

それだけ言うと、雨宮はあからさまに舌打ちをした。
普段は割と冷静な雨宮にしては珍しい態度だが……明らかに八つ当たりである。
朔は再びため息をついた。

「仕方ないですよ。俺たちはたからみたら暇人ですから」

朔は小さな声で言うと、腕時計に目をやった。
時計の長い針は7の場所を示している。いや、正確にはもうすぐ示そうとしていた。

(もうそろそろだな……)

朔の頭の中にはこの屋敷の主人、仙川勝彦の姿が蘇ってきている。

白髪頭の彼の身長はそんなに高くないだろう。太り君な体に高級そうな赤いコートに黒いスーツを着用し、指にギラギラの指輪をいくつもつけ笑顔で雨宮や朔を睨をむかえいれた。

(むかえいれたっていうか……)

朔はそこで3度目のため息をつく。
そう、彼らは招かれたわけではないのだ。仕事として呼び出されたという方が正しい。

今回、仙川勝彦は自らの集めた世界のお宝披露パーティを7時か開催するらしく、警察を護衛けん警備として呼んだのだ。
仙川勝彦は裏社会と関わりがあると噂されているが、警察関連への投資が凄まじい。お店でいうお得意様なのである。彼からの頼みはできる限り断りたくはない。

しかし警察側からすれば、一人一人が大切な人材だ。はっきり言わずとも、言いたいことはわかるだろう。

「あー……俺はこんなことしている暇なんてないんだ」
「だから仕方ないですよ。久我満の証言は精神に異常をきたしているとみなされ上層部はガン無視だし、あいつや神様チルドレンをまともに調べている俺らも完全に暇人扱い。そりゃこの仕事に回されますよ」

プライドの高い雨宮は、こんなことしたくないのだろう。
朔にもわからないことはなかった。
自分たちと対立するべき裏社会の人間に、金の力だけで屈しへこへこ頭を下げている。こんなにバカバカしいことがあるだろうか。
まあ仙川が裏社会と関わりがあるとは決まってないのだが。

「……にしても、どうして我々を呼んだんでしょうか。この警備なら安全でしょうに」
「……そんなの証人に決まってんだろ」

朔が屋敷の地図に書いてある警備員の人数や配置に疑問を投げかけた時、雨宮はタバコを取り出しながら呟く。

「証人……?」
「そ、お宝の山を見せる中、自分に何があってもいいように」
「……あのですね。さっきから仙川を裏社会の人間って決めつけてますけど、それ良くないですよ人として。あとここ禁煙です」
「あっ!おい返せよ!」

朔にタバコを取り上げられ、雨宮はさらにムッとした表情でスーツのポケットに手を突っ込んだ。
朔は自分のスーツの胸ポケットにタバコをしまい、仙川の部下から受け取った通信機をいじる。とにかく暇なのだ。

「あ、朔。あのさ……」

その時雨宮が口を開いた途端に、ブッという何かがきれるような音が響いた。
そしてそれと同時に、室内は真っ暗闇に包まれる。

「な……停電!?朔!警備員達に連絡を入れろ!」
「はい!」

朔は雨宮のことが見えなかったが頷き、いじっていた通信機のボタンを押した。
雨宮はその間に携帯を取り出し、その明かりと共に当たりを見回す。

「しっかし、パーティで電気を使いすぎたのか?」
「あ、雨宮さん!」

朔はバッと通信機から顔をあげ、雨宮は携帯の光を顎に当て彼を見た。

「ちょっ!こんなときにふざけないでくださいよ!」
「スマン。ただの停電だろう?」

ハハハと愉快そうに肩を揺らす雨宮に、朔はフルフルと首を横にふった。
そして神妙な表情で口を開く。

「玄関からコントロール室までをみていた警備員16名と連絡がつきません」



Re: 神様チルドレン【オリキャラ募集中】 ( No.33 )
日時: 2013/01/05 22:38
名前: 三月兎 (ID: /dHAoPqW)

「ーーっはぁ、はぁ……」

朔は思わず壁にもたれかかる。
コントロール室方面の警備員たちと連絡を取れなかったため、雨宮の命令で彼が確認しに行くことになったのだ。
しかし、距離が長すぎる。どうしてだろうか一向にコントロール室は見えてこない。
戦闘を含めて運動神経の鈍い彼には、正直な話辛くなるほど屋敷は広かった。

「この辺なんだけどな……コントロール室」

朔は真っ暗闇で目を凝らす。暗さに目が慣れてきたとはいえ、視界は万全ではない。
コートのポケットからスマホを取り出し「……はぁ」と声を漏らした。

「やっぱり圏外か……。つながらないな。田舎すぎる」

表情を曇らせつつスマホをしまい、再び歩き出す。
しかし今だに見つからない。コントロール室もだが、連絡の取れなくなった警備員たちが。
それどころか人の気配すら……しない。

「どうなっているんだ……」
「あれー?まだいたんですかー?」

突然の声に、朔は思わずびくりと肩を動かした。
当然だ。気配はしないと思っていたのだから。
目の前から聞こえた声の主を必死に探すと、暗闇の中で何かが動いているのがわかった。1人ではないようだ。
しかし、朔も本物の刑事である。目の前に人間がいるというのに、気づけないなんてあり得ない。

「誰だ!」

動揺を悟られないよう声を張り上げる。
すると、影の一つが一歩前に出てきた。ギリギリ顔が見える距離だ。

そこには金髪の少年が立っていた。
パーティー参加者の子供かとも思ったが、金色の前髪を赤いピンで止めていてワイシャツの上には紫のパーカーを羽織っている。
とても出席できる服装ではない。

「初めまして、一ノ瀬涼といいます」

涼はキュッと目を細めて、男にしては可愛らしい笑みを見せた。
朔は怪訝そうに顔をしかめる。
聞きたいことがいっぱいあるのだ。なぜここにいるのか、どうして名を名乗るのか、一体なにをしていたのか、どうやってこの屋敷に入ったのか……。
しかし、どれ一つとして口から出てこない。喉の奥でつっかえて、気持ち悪さすら感じる。

そんな朔を気にせず、涼は再び口を開いた。

「あなたの大嫌いな【神様チルドレン】の人間ですよ?」
「っな……!」

涼の口から漏れたとんでもない単語に、朔は息が詰まるような感覚に襲われた。

信じたくない。いや、信じられない。
自分たちが警視庁全体の信頼をなくしてまで追い求めていた組織のメンバーが子供だということを。
もちろん、なぜそれを名乗ったのか、どうして自分が神様チルドレンを追っていることを知っているのか、さっぱり理由もわからない。

「……わけのわからないことを言わないでください。ここは危険です。避難した方がい」
「えー?信じてくださいよー」

冷静に「あり得ない」と考え直し注意する朔に、涼は不満げに言った。
その時、カツンカツンと革靴の床につく音が響いた。

そして暗闇の中から、涼といたであろう男女が現れる。
秀才そうな青年と、可愛らしいボブヘアの少女。
男女を見た途端、涼はなぜか小さく首を降った。

「航さん、まいちゃん。僕一人でいいや」

……おかしい。
表情には消して出さず、朔は心の底でつぶやく。
「大嫌いな神様チルドレン」と涼が言ったということは、朔が警察であると彼は気がついていると思っていた。
しかし、そんな追われる身の人間が、あっさりと自分や仲間の名をバラすだろうか。まいは顔に鼻眼鏡をかけているが、涼と航は変装もしていない。

「わかった……くれぐれも我を忘れるなよ」

航は涼の耳に顔を近づけ、小声で囁いた。そして乱暴にまいの腕を掴み、勢いよく地面を蹴る。

「っあ!」

朔が声をこぼす前に、猛スピードで航とまいは彼の横を走り抜けた。
朔はまいのもう片方の手を掴もうと手を伸ばし、叫ぶような声で言った。

「待て!お前たちはいったい何者なんだ!」

しかし、朔の伸ばす手はまいには届かず、虚しく空をかいて止まってしまった。
涼が彼の背中に手をかけたことで。

「……っ」

朔は振り返りざまに涼の手を遠ざけ、彼に挑むような視線を向ける。
普段ぼーっとしてるといっても、やはりプロの刑事だ。ピリピリとした空気がその場に流れ始めた。
涼はフフッと口角をあげ笑う。

「刑事さんの相手は僕でしょ?」
「……どういう意味ですか」

朔は少しだけ声をうわずらせた。そして、涼はその瞬間を見逃してはいなかった。

瞬時に右足に力を込め、凄まじい力で朔の横腹に足をふるった。
朔はあまりの距離の近さと涼の動きの速さによけることができず、咄嗟に右腕で体をかばう。
体を守った彼の右腕からは、ギシギシと骨のきしむ音がした。

「っうぐ……!」

痛みに顔をしかめながら、朔は後ろに飛び退き涼と間合いをとる。
腕はジンジンと熱を持ち、コートの上からでも腫れ上がっているのがわかった。

(腕がまともに動かない……!骨が折れた?……足に鉄でも仕込んでるのか……?)

混乱する頭を必死に整理しようとする朔に、涼は再び口角をあげた。
先ほどまで見せていた可愛らしい笑みではない。何かを企んでいるような不敵な笑みだった。

そして涼はいきなり走り出す。
朔のとった間合いを一気に詰め、彼の首元に手を伸ばした。その勢いのままに彼の首を掴み、強い力で壁に叩きつける。

「がっ……!」

ガンッという頭部を壁に打つ音と共に、朔の口から短いうめき声が漏れた。
一瞬朔の視界が真っ暗になり、その中で火花が散る。
グラグラと揺れる頭の中で、必死に意識を保ち口を開いた。

「くっ……は、なせ……!」

朔は自分の首を締め付ける涼の腕を掴んだ。朔の手が震えているのは、力が入らないところを必死に動かしているからだろう。

「……残念ですねぇ、刑事さん。自分よりも年下の、こんな子供に追い詰められて」

涼は片手で朔を封じ込んでいた。
ニヤニヤと意地悪そうに笑う彼は、細身な朔よりさらに細く、筋肉もそんなについているようには見えない。身長も朔よりずっと低かった。

それなのに、朔は彼の腕をふりほどけない。
それどころか、涼の首を占める力はどんどん強くなり、酸素がまともに送られてこなくなる。

「苦しそうだね刑事さん。ね、取引しようよ」
「と、……りひ……き?」

朔はかすれた声で涼に聞き返す。涼はこくっと頷いた。

「僕らの仲間にならない?」

涼の言葉に、朔は大きく瞳を見開いた。
口の中を乾いた空気が行き来し、喉を通る唾は酸っぱく感じる。

「な、……にを……」

取引中も警戒心を解かず首をしめ続ける涼に、朔はもう一度聞いていた。
涼は気にせずそれに答える。

「スパイになってほしいんだ。警察の情報を回してくれればそれで十分。生かしてあげるよ?まだ生きたいでしょう?警察なんて偽善者の集団にいたって気づけることも少ない。僕らの正義も理解できるよ」

耳を疑った。裏切れというのだろうか。
仲間というのは神様チルドレンのことなのだろう。もうこの時点で、涼が神様チルドレンの人間であると、朔は認めていた。
なんてことを言ってくれるのだろうか……朔の脳内で、フツフツと何かが沸き起こる。

「ふざ……!ふざけるなあ!」

朔は声を振り絞り、怒声を響かせた。面倒くさがりの彼が放った、人生最大の大声だ。

「僕は……警察は……確かに弱いかもしれません……!闇の中から救えなかった人間も、この世に溢れているでしょう。でも……それでも僕は君たちの手に堕ちたりしない。僕は……」

朔はいったん言葉を区切り、大きく息を吸った。
いつも気だるそうなその瞳は、強い光を帯びている。

「僕は僕の正義を裏切らない!」

凄まじい覇気に、涼は思わず手の力を緩めた。
朔はその瞬間彼を力強く突き飛ばし、コートの懐に手を突っ込む。
黒光りする拳銃を握り、涼が反応するより早く彼に向けた。
引き金に指を伸ばし、その指に力を込める。

バンッという一発の銃声が、屋敷の中に響いた。


Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.34 )
日時: 2013/01/06 11:44
名前: 三月兎 (ID: /dHAoPqW)


【参照900突破記念雑談タイム】

まい「みーんなの目線をいただきまいまい!司会は私が進行させていただきまーすっ!」

蘭斗「うわっパクった……」
響「そういうのは、俺らのいないところでやろうねー」
詩織「自分のネタを作りなさいよ!」

まい「ちょっ、何で皆そんな冷たいの!?もしやまゆゆのファン!?」

樹「こいつ司会はむいてないだろ……」
雅「同感」
影無「ほんとだな」

作者「っというわけで!司会は私、三月兎に交代です!まいは大事な話をしようとしないし……」

純一「大事な話ってなんスか?」
夢穂「あれじゃない?この前パパが言葉間違えたのに気づかないままカッコつけちゃったやつ」
ちとせ「……」
響「えー……まあ、うん、えっと」

作者「まあそれも大事っていうか、うん、あれだけど。それじゃないよ!もっと10000倍くらい大事なことだよ!」

立華「私はピンときてるわよ。いつでもお礼言えるわ」
美雨「お礼って言っちゃってますねぇ」
尚「は?ちょーだりー……」
蘭斗「おい、尚兄!そういう事言うなよ!」
尚「いいこぶってんじゃねーよ女顔」
蘭斗「ばっ……!いいこぶってねーよ!当然のこと言ってるんだろ!」


作者「ほんとだよ!やめろよ!感謝しろよ!って喧嘩すんなよ!」

樹「……あれ?涼がいなくないか?」
詩織「なんか死亡フラグでたのかムカつくからって、どっか行ったわよ」

作者「なんつー我が儘な!」

影無「ハハハ……なんか面倒臭くなってきたな……。君も向いてないんじゃない?司会」

作者「え?そんなことないでしょ!」

影無「さっさとひっこめ駄作者」

作者「影無さん!本性出てるよ!」

雅「あー……でも疲れた。とりあえずはやく行動しようよ」
美雨「そうですよぉ。これ読んでくれてる人に……」
立華「お礼しなくちゃね」

作者「……そうだね。えー、コホン。この度は快晴の中、我わ」

航「俺たちの話を読んでいただきありがとうございました。これからもよろしくお願いします」

作者「おい!何でお前が入ってくるんだ!ってか一人で言うな!」

航「前置き長いだろうなと思って」
まい「ま、いーや!よーし、皆いくよー!今までありがとうございました!これからも」

皆「よろしくお願いします!」

作者「お、おいてかれた……」

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.35 )
日時: 2013/01/19 11:55
名前: 三月兎 (ID: UgVNLVY0)

一発の銃声が響き、涼の身体が仰向けに倒れる。
どさっという音と共に、彼はピクリとも動かなくなった。
朔は肩で息をし、ゆっくりと瞳を閉じる。そして倒れこんでいる涼に手を合わせた。

「……ごめんなさい」

かすれた小さい声だった。
朔はスッと目を開け、涼に視線をやる。警察である自分が、子供を撃ち殺してしまったという事実は、彼に重くのしかかっていた。
しかし、そこから目そらす訳にはいかない。警察としての正義を貫くためにも、朔は彼を見つめていた。

そして、ようやくあり得ないことに気がついた。
瞳を見開き、おもわず後ずさる。

「どうして……!」

震える声でそう漏らし、同じように震える手を涼に伸ばした。
自分が銃でうった、彼の胸の傷口に触れる。先ほどまでまったくわからなかったのは、思い込みと混乱からだろう。
その傷口からは、一滴も血液が出ていなかったのだ。

「どうして血がでてないんだ……!?」
「教えてあげようか?」

不意に涼は口を開いた。ギョッとしてそちらを見ると、彼はまぶたを開き薄笑いを浮かべている。
確かに打ち込んだはずの銃弾をもろともせず、彼は動けずにいる朔を押しのけるように上半身を起こした。

そしてクックと楽しげに肩を揺らし始める。

「だってさぁ、僕『お人形』だもん」
「……え?」

涼はニヤリと口角をあげ、朔にそう言った。
朔は目の前の現実を受け入れられず、ただ愕然とした表情で固まっている。涼が能力者だということは、とうに頭から離れていた。

「お兄さんは結局全部忘れちゃうんだし、言ってあげるね。僕は『戦闘人形(バトルドール)』っていう能力を持ってるんだ。これはね、そのまま戦闘だけをする人形になるってことなんだよ。一定時間の間だけ、僕の身体は人じゃなくなるんだ」

涼は言い終わると、ゆっくりと立ち上がった。
朔はそれに反応し、再び後ずさる。

涼はにっこりと可愛らしい笑みを浮かべ、いつのまにか何かを握っていた右手を朔に向けた。
それは、まるで子供が使うような水鉄砲の姿をしていた。
朔は目を丸くし、涼の顔を見た……その時だった。

涼が引金を引いた瞬間、ドスっと鈍い音がして、水ではないものが朔の肩に刺さる。
大きく太いそれは、注射針のようだった。じわじわと血がにじみ出てくるとともに、視界が暗くなってくる。
朔はガクリと膝をつき、自分に刺さったものを引き抜いた。しかし、めまいはさらに酷くなる。

「安心してよ。それただの麻酔銃だから」

涼はフフッと妖艶な笑みを浮かべ、小さくうめいている朔に視線を合わせるようにしゃがんだ。

「さっきも言ったけど……お兄さんは結局全部忘れちゃうんだ。でも、これだけは覚えといてね。僕ら『正義』に生かされたんだって」

涼はそれだけ言うと立ち上がり、策に背を向けて歩き出した。
朔は薄れゆく意識の中、必死に彼に手を伸ばす。

しかし、その手は空を掴み、そのまま地に落ちて行った。

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.36 )
日時: 2013/01/28 16:34
名前: 竜胆 ◆GuytVczNNY (ID: 3ZIdEbTb)

はじめまして

最近複雑ファジーを見始めた基本的には二次創作のほうで活動させていただいています竜胆と申します

友人にこのスレを紹介されて見に来ました

とても興味深くて面白く、先が楽しみになりそうなお話でした
世界観もすごく好みです
友人が神作者だと言っているのにとても頷けます
ここまで文才が素晴らしい人がいるんだなと思いました

とても続きが楽しみです
頑張ってください

白い少女とは誰なのか、ほかの団員の能力使用時がとても気になります

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.37 )
日時: 2013/01/28 21:52
名前: 三月兎 (ID: UgVNLVY0)

竜胆さん

初めまして。私の書いた話を読んでいただいて、しかも褒めていただいて本当にありがとうございます。
最近コメントをもらえていなかったので、とても嬉しかったです。

先が楽しみだとか文才だとか、私には縁のない言葉だったので竜胆様にコメントをいただいた瞬間、目がとびだしそうになりました笑
竜胆様のご友人にも、感謝のほどを伝えていただけると幸いです。

これからもこんな駄作者の話でよければ、ぜひ読んでいただきたいです。
私はこれを励みに、これからも書き続けます!!

本当にありがとうございました。

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.38 )
日時: 2013/03/10 16:16
名前: 三月兎 (ID: DMJX5uWW)

 『……殺してないのか?』
 「うん」
 『珍しいな』
 「そう?」
 『……』

 通信機から聞こえる航の声に、涼は淡々とした口調で答えた。ちなみにこの通信機は、入団時に響から配られるものだ。ピエロの仮面のような模様が描かれており、オリジナリティーに溢れている。

 そしてしばらく沈黙した後、航は小さくため息を漏らした。涼も一瞬黙ってから、「どうしたの?」と彼に聞いた。

 『また無理したんじゃないのか?』

 航の声に涼は反応しない。その態度のせいか、航は怪訝そうに眉を寄せながら言った。

 『どうなんだよ』
 「僕的には……してない』

 涼はそう言うと「それより……」と用件を切り出す。

 「ちょっと銃で撃たれちゃった」
 『バッ……!俺はそのことを無理したって言ったんだ!このアホ!お前の体の条件忘れてないだろうな!?』

 ガンガン響く航の怒声に、涼は思わず通信機を自分から遠ざけた。そして彼をなだめるような口調で話す。

 「覚えてるよ……」
 『覚えてたらそんな無茶しないだろ!?お前の能力は使用時に攻撃力を増大させ全ての物理的攻撃を無にするが、能力が解除された時の反動が大きいんだぞ!?調子に乗って怪我しすぎるな』

 航は表面上怒ってはいるが、実際のところかなり心配しているのだろう。しかし、涼は迷惑そうに顔を歪めた。

 「……だから航さんに連絡いれたの。体が人に戻っちゃう前にさ」
 『……そんなことわかってる』

 涼が本当に分かっているのかはわからないが、航は仕方なしにそう言った。そして「早く俺たちに追いつけ」と涼に言う。
 すると、涼は「ハハハ……」と苦笑を漏らした。航はムッとした表情で通信機を睨む。

 『なにか変なこと言ったか?』
 「あー、いや……そうじゃなくてさ。この屋敷広いしいろんな道会って、途中からどこ行けばいいかわかんなくなっちゃって……。倒されてる警備員を追ってこうと思ったけど、最初以降ぜんぜん倒れてないし……。あ、もしかして航さんかまいちゃんが食べちゃった?」
 『アホ、誰が食うか。倒してないんだよ、俺たち』

 航の言葉に、涼は目を丸くした。驚いたように何度か瞬きし、頭の上に?マークをいくつも浮かべる。

 「え?なんで?警備員そこ一人もいないの?」
 『ああ、たぶん仙川の所に集まってるんじゃないか?奴が死んだら元も子もないだろうし……。あ、お宝が奴のもとに集められてるなら『白い少女』もそこにいるかもな』

 涼は一瞬何を言われたのか分からなかったのだろう。キョトンとした表情をしていたが、しばらくしてから「なるほど……」と呟いた。

 航は任務中三度目のため息をこぼし、『とりあえずそこにいろ。俺とまいが戻るから。治してやる』と呟いた。

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.39 )
日時: 2013/02/11 13:06
名前: 馬屋 ◆Ru7MZqv2YA (ID: 4qcwcNq5)

コンニチハ!!
やっぱり、三月兎様の小説は神ですね・・・!!
いつも楽しく見させて頂いております。これからも更新頑張って下さい
応援しています!!

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.40 )
日時: 2013/02/12 16:58
名前: 三月兎 (ID: UgVNLVY0)


コメントありがとうございます!
神だなんて……そんなそんな。
私の小説は紙か髪でございます。ペラッペラの極細です|ω・`)

最近小説の更新ができていなくて申し訳ありません。
日常生活において精神が不安定でして……。
明日にはきっと更新させていただきますので、待っててください(´・∀・`)

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.41 )
日時: 2013/03/09 13:05
名前: 三月兎 (ID: DMJX5uWW)

 【Valentine】ちょっと遅めの番外編




 奈々希は小さく息をこぼした。どくどくと全身の脈が音を立てている。しかも緊張しているせいか、手が汗ばんできていた。
 誰もいない教室の窓から、校庭をに目を向ける。そこから見える景色はいつもと違い、真っ白な絨毯を引いているようにも感じた。小さな雪の塊が、ゆっくりと空から降ってきている。

 「……さむ」

 奈々希はそう呟き、持っていた小さな紙袋を持つ手に力を込めた。
 クシャッ紙のつぶれる音がし、ハッとして力をゆるめる。反射的に紙袋を見たが、外側が少しへこんだだけで中身には害がなかったようだ。

 奈々希はピンクと白のドット柄のそれを、傷付けないように包み込む。そして、ゆっくりと息を吸った。

 「遅いなあ……樹君」

 奈々希は横目で時計を見ながら、ため息交じりに言う。
 ホームルームの後、樹が委員会があるからと教室を出て行ってからおう30分はたっていた。もうそろそろ帰ってきてもいい頃だろう。

 とはいえ30分ならば、絶対帰っている時間ではない。
 しかし、奈々希はどんどん不安になっていた。

 淡白なところのある樹なら、自分が待っているということを忘れて帰宅している可能性どころか、今日がバレンタインデーであることすら忘れていそうだからだ。
 紙袋の中にあるガトーショコラを、そんな理由で台無しにはしたくない。というか、樹に渡せないなんて馬鹿馬鹿しいだろう。

 「……そもそも樹君、私のこと……」

 いったん考え出すと、もう悪い考えは止まらなくなっていた。
 感情が顔に出にくい樹が、もしかしたら自分と仕方ないしに付き合っているんじゃないか、もしかしたらチョコレートなんて好きじゃないんじゃないかと、幅広いいろんなことが頭の中を駆け巡る。

 「……だめだ、ネガティブだな最近の私……」

 奈々希は窓に手をかけ、ゆっくりとあける。それと同時に、冷たい空気が彼女に吹きかかった。吐く息も一気に白くなる。

 「……もう!こんなのい」
 
 彼女は大きな声で叫び、そこで言葉を切った。ひんやりとした冷たすぎる何かが、彼女の首に触れたのだ。

 「ひゃあっ!」
 「時間差だな」

 思わず振り返るとそこには、いつのまにか樹が立っていた。冷たすぎるそれは樹の手だったのだ。

 「お、おかえり……」
 「ただいま」

 いつもと変わらぬ飄々とした態度で言う樹は、ふと思い出したように口を開く。

 「遅くなって悪かったな。あとさ、もう一回そっち向いてくれないか?動かないでくれよ」
 「へ?」

 彼の言うそっちとは、窓のほうのことを言うのだろう。奈々希はよくわからなかったが、とりあえず言われた通り窓のほうを向いた。そこで窓を閉めることをすっかり忘れていたことに気が付き、窓に手を伸ばした……時だった。

 樹の手が奈々希の首に回り、かすかな鎖の音がする。そしてゆっくりと樹は手を放した。

 「……はい」

 樹の声とともに、奈々希は自分にかけられたそれに視線をやる。そして人もを大きく見開いた。

 「かわいい……!」

 奈々希の首元のそれは、銀色の小ぶりなネックレスだった。横を向いた妖精のシルエットような飾りがついており、羽の部分には3つ小さな石がついていた。それぞれ淡い赤とピンク、そしてオレンジに輝いている。

 「い、樹君……!ありがとう!でも、これなんで……?」
 「なんでって……奈々希今日誕生日だろ?おめでとう」
 「あ……」

 奈々希の頭の中はバレンタインのことでいっぱいだったのだが、実はこの日は彼女の誕生日だったのだ。
 奈々希は頬を紅潮させ、きゅっと目を細めた。

 「覚えててくれたんだ……!」
 「当たり前だろ?『彼女』の誕生日なんだから」

 樹は呆れたように笑い、「じゃあ帰るか」と鞄を担ぐ。
 そんな彼のブレザーの裾を、奈々希は弱い力で引いた。
 驚いたように振り返る樹に、奈々希はにやりと口角を上げる。

 「もう……!今日はもう一個大事なイベントがあるでしょ?」

 奈々希はそう言いながら、桃色の紙袋を樹に差し出す。
 そして、飛び切りの笑顔でこう言った。

 「ハッピーバレンタイン♪」

 



 

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.42 )
日時: 2013/02/16 00:13
名前: 純金リップ (ID: 5Yz4IUWQ)

どうも、お久しぶりでーす。
早速ですが発狂します。

うああああああああああああああ!
くそっ、リア充め!
壁は、壁はどこですか!?

以上、バレンタイン特別編読んでの感想でした(泣)

僕も、バレンタインのおまけを書いたのですが、
悲しくて涙が止まりませんでした...。
なんで書こうと思ったのか分かりません。

相変わらず小説面白いです!
能力モノも好きなので、
楽しみにして読んでいます!

これからも頑張ってくださいね!

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.43 )
日時: 2013/02/16 21:36
名前: 三月兎 (ID: UgVNLVY0)

純金リップさん

コメントありがとうございます。
めっちゃ嬉しいです(●´ー`●)

はい、バレンタインねたですよ笑
私もなんで書いたかわかりません。リア充いなくなれーっですよ笑

小説面白いだなんて最高の褒め言葉すぎて泣けてきます(;_;)
感謝感謝です(≧▽≦)

これからもよろしくお願いします。

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.44 )
日時: 2013/02/16 21:38
名前: 三月兎 (ID: UgVNLVY0)


『神様チルドレン』で
チルドレンレコード



白いiPhoneを確かめて 少しニヤッとして合図する
湧いてくその気持ちが ドアをノックした瞬間に 溢れそうになるよ
「モウイイカイ?」目を凝らして犯す犯罪者
あの日躊躇した脳裏から「今だ、走り出せ」とコードが鳴り出しそう

愛しくて、辛くて、世界が嫌ったヒトの
酷く理不尽な『能力』 活用しなくちゃ、未来は生み出せない

少年少女、前を向く 赤い返り血さえ希望論だって
「ツレモドセ」 「ツレモドセ」
三日月が宵に光り出す
さぁさぁ、コードを0で刻め 常識を遥か越えた世界で
オーバーな能力戦線へ


「お先にどうぞ」って舌を出す 余裕ぶった無邪気な眼
「ほら出番だ」その力で 目を覚ました本能は止まらない
もう夜が深くなる 「オコサマ」でも燃える能力戦
逆境ぐあいがクールだろ? 敗けないよまだまだ ほらもっと!もっと!!

イン・テンポで視線を合わせて ハイタッチでビートが鳴り出せば
考えてちゃ怖いでしょう? ほらノっかってこうぜ
ワンコードで視線を合わせて ぶっ飛んだ仲間が渦巻けば
冗談じゃない出来るはず そのハイエンドの風景の未来で

さぁどうだい?この世界も、すれ違いそうだった感情も
「悪くないかな?」 目を開き、手を取り合ったら
案外チープな言葉も 「合い言葉だ」って分かり合う
少しだけ前を向ける


少年少女、前を向く 赤い返り血すら希望論なんて
思い出し、口に出す 不可思議な力と仲間を
「ねぇねぇ、突飛な未来のこと 散々だって笑い飛ばせたんだ」

事件は終わる


少年少女前を向け! 赤い返り血すら希望論だって
「ツカミトレ」 「ツカミトレ」と
太陽が顔を覗かせる
さぁさぁ、コールだ 最後にしよう 最善策はその目を見開いた
オーバーな能力戦線 感情性の常識を越えて!




ーーー

ナル姫様に書いていただいた替え歌です(●´ー`●)
素晴らしいですね!

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.45 )
日時: 2013/02/21 21:02
名前: 三月兎 (ID: DMJX5uWW)


 「止まれガキども!」

 屋敷の通路に響く男の怒声に、尚は苛立たしそうに頭をかきながら振り返った。樹と蘭斗も、同じように振り返る。
 そこで三人の視界に入ったのは、十人ほどの警備員の姿だった。先頭の五人が銃を構えているところを見ると、他の警備員も所持しているだろう。

 尚は警戒心むき出しの彼らを鼻で笑い、呆れたような口ぶりで言う。

 「ハッ、その『ガキども』に銃を使うだなんて、ずいぶん大人気ねえんだなあ」
 「う、うるさい!」

 一人の警備員はそう叫び、血走った眼を尚達に向けた。
 圧倒的に自分たちが有利に感じるはずなのに、その様子はおびえているようにも見える。

 「お前たちは『神様チルドレン』なんだろ!?」

 その言葉に、樹はピクリと眉を動かした。蘭斗は樹のほうを見ないまま、彼にだけ聞こえるような音量でつぶやく。

 「樹さん……。一般情報網じゃ、知られないんだよな……?」
 「ああ。仙川が裏社会の人間なら知ってても仕方ないが」

 樹は蘭斗にそう返すと、警備員のほうへと足を踏み出した。
 警備員はあわてたように声を漏らす。

 「う、動くな!動いたら撃つぞ!言うことを聞け!」

 しかし、樹は全くそれに反応しなかった。ゆっくりと、何かを確かめるように彼らに歩み寄っていく。
 蘭斗と尚は、ただその背中に目をやっていた。

 「来るなって言ってんだろおっ!!」

 警備員の一人が狂ったようにそう叫ぶ。そして次の瞬間バンッという銃声が響き、それとほぼ同時にカランカランと乾いた何かの音がした。

 「え……」

 警備員は驚愕に瞳を揺らし、震える声でつぶやいた。それは樹に銃を向けたもの以外も同じ。皆が、呆然とした様子で固まっていた。

 「……危ないな」
 「な……!?今打ったはずなのに……!」

 冷や汗すらかかず目の前に立っている樹を見て、警備員はかすれた声を張り上げる。
 それに対し樹は、何も言わずに足を動かした。彼のはいているローファーのつま先に何かが当たり、再びカランと音がする。

 樹が蹴ったそれは、きれいに真っ二つに裂けた銃弾だった。

 「こうなりたいか……?」
 「ひっ……!どうして……」

 静かだが覇気を感じるその声に、警備員たちは顔を引きつらせる。しかし、彼らもそこで引くわけにはいかないのだろう。
 必死に声を振り絞り、無事でいる樹に問いかけた。

 それに答えるかのように、樹はスッと瞼を閉じる。
 あまりに無防備なその姿に、警備員が怪訝そうに眉を寄せた……その時だった。

 スパッという空を切る音が聞こえたと同時に、警備員の頬に痛みが走る。
 その違和感に思わず自分の頬に手をやると、べっとりとした気持ちの悪い感覚を覚え、その手に視線をやった。
 頬に触れた指先は、赤く染まっている。

 「だ、大丈夫ですか!?」

 愕然としている警備員に、別の警備員が声をかけた。
 
 「……刃物か……?」
 「いや?」

 警備員は仲間に返事をせず、樹にそう聞いた。樹は軽く首を振る。
 彼の髪の毛はふわふわと浮いているように見えた。

 「小林さん!気にしてる場合じゃありませんよ!」

 どうやら目の前にいる警備員は小林さんというらしい。
 後ろからそう声を上げた彼より若い警備員は、銃を構え前に飛び出す。

 「若いのは勇気があっていいねえ」

 尚は珍しく、穏やかな口ぶりでそう言った。彼のが年下だというのに。

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.46 )
日時: 2013/02/22 01:44
名前: 無花果 ◆VnpZyIK0Ao (ID: 4qcwcNq5)

待ってましたぁ!!!

あいも変わらず流石の文才ですこと!!

やっぱりこの小説大好きですww
友達にジャンジャン紹介してしまいましたww

・・・迷惑だったらごめんなさい(汗)

ちなみに友人たちには好評ですww

続き楽しみにしていますww

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.47 )
日時: 2013/02/22 22:30
名前: 三月兎 (ID: DMJX5uWW)

無花果さん

ありがとうございます!(●´ー`●)

文才だなんてそんな……泣けます。感激ではげます笑
大好きだって言われて喜びながら死ねます笑

迷惑なわけないじゃないですか!
むしろとても嬉しいです(〃艸〃)
更新頑張っていくので、これからもよろしくお願いします!

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.48 )
日時: 2013/02/23 14:30
名前: 無花果 ◆VnpZyIK0Ao (ID: 4qcwcNq5)

えぇ〜!?
はげちゃだめですよ(汗)
死んじゃいやです!!
こんな神作読めないなんて自分が死んだ方がまs・・・いや?死んだら見えないから死ねないか・・・

よかったぁ(^ω^w)
迷惑だったら本当にどうしようかと・・・
よし、友人たちにもっと教えにに行かないと(笑)

これからも本当に頑張って下さいww
応援していますww

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.49 )
日時: 2013/02/24 18:34
名前: 三月兎 (ID: DMJX5uWW)


無花果さん

ありがとうございます((´∀`))
もう本当に優しい方でございますね(T ^ T)助けてもらってばかりですみません。
無花果さんのコメントには本当に元気付けられてます。

これからも頑張りますね(●´ー`●)

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.50 )
日時: 2013/02/24 19:18
名前: いんせ (ID: Xr5Y0osE)

こんにちは!


参照1200突破おめでとうございます!!
すごい、の一言に尽きますよっ!
これからも頑張ってください♪

小説拝見しました!
三月兎さんは人をドキドキさせる天才ですかっ!?
ハラハラドキドキしながら読みましたよ!
特に樹君……かっこいいですなぁ(///v///)
続き期待しています^^

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.51 )
日時: 2013/02/25 13:29
名前: 三月兎 (ID: DMJX5uWW)

いんせさん

こんにちは!
コメントありがとうございます(●´ー`●)

私のような駄作者の小説が1200突破できるなんて、本当に夢のようです。これも読んでくださる皆様のおかげですね。ありがたい(〃艸〃)

小説読んでくださったんですか!?
さらにありがとうございます!
え……ハラハラドキドキだなんて嬉しいお言葉を……(T ^ T)私は描写を書くのが苦手なので、すごく嬉しいです。
しかもキャラへの言葉まで……!私の考えたキャラへのコメントは今までなかったので感無量でございます(T ^ T)

これからも更新頑張るので、ぜひぜひ読んでってくださいね!

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.52 )
日時: 2013/03/06 15:15
名前: 三月兎 (ID: DMJX5uWW)


お詫びと連絡です。

やっと期末テストが明日で終わります!

長時間パソコンを使うことがOKになったので、小説解禁です。
明日からまた更新再開したいと思っています。

何も連絡をいれていなく申し訳ございませんでした。
これからもよろしくお願いします(´・∀・`)

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.53 )
日時: 2013/03/08 19:00
名前: 無花果 ◆VnpZyIK0Ao (ID: 4qcwcNq5)

お疲れ様ですww
三月兎様のご帰還を今か今かと待っていました(笑)

自分のペースでいいのでゆっくり頑張って下さい!!
ずっと応援していますww

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.54 )
日時: 2013/03/09 11:50
名前: 三月兎 (ID: DMJX5uWW)


無花果さん

お久しぶりです!
そんな嬉しい言葉をありがとうございます。
泣けますよー、こんな駄作者に……(;д;)

今日か明日にはこの小説更新するので、ぜひ読んでくださいヽ(〃∀〃)ノ
頑張っていきますね!(。ゝ∀・)b

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.55 )
日時: 2013/03/09 12:56
名前: 無花果 ◆VnpZyIK0Ao (ID: 4qcwcNq5)

はい!!
頑張って下さい!!
って駄作者じゃないですよ!?
自分の方が駄作者です・・・だって全然更新できないもの・・・

えっ!?本当ですか!?
それなら今すぐ三月兎様のファンになった(正しくはさせた)友人達にメールを送らなければ(笑)
楽しみにしていますね^^

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.56 )
日時: 2013/04/01 23:53
名前: 三月兎 (ID: d1Bequrp)

 尚はニヤニヤと意地悪そうな笑みを作り、警備員たちの方へと歩み寄った。
 自分の前にいた樹の肩をつかみ、ちいさく顎を動かす。「どけ」という意思表示だろう。
 しかし、樹は表情を変えずに口を開いた。

 「……お前殺すだろ」

 樹の言葉に、警備員たちはびくっと肩を動かす。あの若い警備員の顔色も、少々悪くなっていた。
 樹の言葉に、尚は不機嫌そうに声を漏らす。

 「お前はやること甘すぎんだよ。団長が今日みたいなこと言ってなくても脅しで終わり。いい子ぶってると焼き殺すぞ」

 彼がそう言った瞬間だった。
 ゴウッと音を立てて、尚の右手から赤い炎があふれる。熱を帯びるそれは、バチバチと火花さえ放っていた。

 「うわああぁぁあ!!」

 警備員たちの精神は限界だった。
 拳銃を投げ出し、バタバタと音を立てて走り去っていく。蘭斗は腰に手をやり、呆れたよう二人を見た。

 「喧嘩するのやめてくれよ……。逃げちゃっただろ?それなりに倒しとかないと純一君大変なのに」

 一番年下の人間にそんなことを言われ、樹と尚は顔を見合わせる。そして尚のほうが口を開いた。
 
 「仕方ねーじゃん。こいつはっきりやんねーんだもん」
 「お前がいつも能力を無駄遣いしすぎなんだよ。警備員とはいえ普通の人間なんだ。体から火が出るびっくり人間に耐えられるわけないだろ」
 「誰がびっくり人間だって!?」
 「だから落ち着けって!」

 再び発火しそうになる尚をおさえ、蘭斗は「ほら、白い少女探しに行くぞ」と二人の背中を無理やり押して歩き出した。






****








 「大丈夫か……」
 「うん」

 航の言葉に、涼は平然とした顔でうなずいた。
 航は彼の傷口に手をやり、目をつぶっている。航の手から淡い赤色の光が漏れていた。
 そしてその光をあびる涼の傷口は、徐々にだが癒えていっていた。
 
 その様子を見ながらまいは涼に話しかける。

 「いったそ〜……。本当に頭大丈夫?」
 「それ心配してるわけ?あと、そのふざけた鼻眼鏡むかつくんだけど」

 涼はまいの言葉に顔をしかめ、彼女をにらんだ。まいは自分の顔につけていた鼻眼鏡をむしり取り、顔を赤らめ声を荒げる。

 「しょうがないじゃん!団長が顔隠せって言うけどこれしかなかったんだもん!声も出すなっていうからずうっっっと黙ってたんだからね!?大変だったんだよ!?」
 「あーもうわかったから黙ってろ。お前の声は頭に響く」

 航は目をつぶったまま、まいを適当にあしらうと涼から手を放した。彼の手からはもう光が見えない。
 そして、涼の傷口は完全に塞がっていた。

 「ありがと」
 「頼むから控えてくれよ。俺は自分のけがは治せるけど、人のを治すのは時間も体力も使うんだ」

 航は額にうっすら汗をかいていた。相当疲れたのだろう、いつもの余裕のある表情ではない。
 まいはむくれた表情のまま「……で、どうするんですかー?」と彼に問いかけた。

 「とりあえず進もう。これだけ時間をくったから、もう誰かが白い少女を見つけてるかもしれないしな。俺たちは仙川を探すのもありだろうな」

 航はそう言うと立ち上がり、歩き始めた。涼もゆっくりと体を起こし、そのあとに続く。
 まいもしぶしぶだが、鼻眼鏡を顔に近づけた。
 
 終焉は近づいているのかもしれない。
 

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.58 )
日時: 2013/06/23 19:24
名前: 三月兎 (ID: kJLdBB9S)



長らく放置していてすみませんでした。
リアルが落ち着いて、ピアスのほうも書き始められたので、こちらもぼちぼち再開しようと思います!
よろしくお願いしますヽ(〃∀〃)ノ

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.59 )
日時: 2013/07/10 22:11
名前: 三月兎 (ID: kJLdBB9S)


 「……くそ……!渡すわけにはいかないんだ……!」

 仙川の短く低い呟きに、集められた警備員や部下たちは一瞬ピクリと肩を動かした。普段は少し弱そうに見える中年の男も、凄味が入れば雰囲気を変える。その表情はまさに裏社会の人間の悪意を放っていた。
 仙川は今パーティー会場を少しの間抜け、自室で今後の対策を練ろうとしていた。音もしない、反応もない、それでも神様チルドレンが自らに近づいているという確信があったのだ。自分が、いや、狙われている『それ』を所持しているがゆえに。

 「しっかし、本当に存在するとは……だがこんなことやってのけるのはあいつらしかいないだろう……」
 「私もそう思います」

 仙川の言葉に、突然言葉が返された。しかし口をきいたのは部下でも警備員でもない。黒い髪をオールバックにした、これまたいい年の刑事だった。いつのまにこの部屋に入ってきたのかと、仙川は驚いたように目を見開いたが、雨宮という名の彼は黒い瞳を細め、仙川に挑むように続ける。

 「ですが架空ともいわれるような奴らに狙われるにはそれ相応の理由があります。……あんたは何をした?」
 「な……何を言ってる!何もしていない!」
 「……このままじゃ死人が出る可能性もある。奴らの存在を知っているなら、凶悪性が高いことも知っているだろう」
 「だから何も」
 「はけ!!」

 凄まじい怒声だった。静かにしていた部下たちも思わず体に緊張を走らせるほどのそれに、仙川もひるんだように目をきょどらせた。しかしすぐに含み笑いを浮かべ、馬鹿にしたような目つきで雨宮を見た。

 「……だったらなんだ?何かをしていたとして、あんたらには何もできんだろう?」
 「なんだと?」
 「政府の下でへこへこ頭下げてればいいんだよお前らは。どうせもう神様チルドレンも終わりさ」
 「……何を」

 許しがたい侮辱に必死に耐え、雨宮は意味深な仙川の言葉を聞き返した。仙川は意地悪い笑みを深め、ニヤニヤとした表情で続ける。

 「大事な大事な『白い少女』によってな」




















 ***















 「意外と弱いっすよね。ここの警備員」
 「だな」

 純一は手のひらをぱんぱんはたきながら、隣に立つ影無に笑いかけた。影無は腰に手を置き、彼の言葉に同意して首を縦に動かす。二人の目の前には数人の警備員が折り重なるように倒れていた。全員が血を一滴も流していない。雅は壁に寄りかかり腕を組んでそれを眺めていたが、ふと思い出したように純一に声をかけた。

 「純一さん、早くやったほうがいいんじゃない?ほかのとこもやらなきゃいけないでしょ?」
 「ああ、そっすね」

 雅の言葉に純一はうなずき、気を失っている警備員たちに近づいてしゃがんだ。そして彼らの頭の上で右手をかざす。彼の腕が通ったところは、ぼんやりと淡い水色の光を放っていた。雅は「どう?」と短く声をかける。純一は立ち上がり、ピースをしてみせた。

 「便利な能力だなお前は。人の記憶を『水に溶かせる』なんて」

 影無の言葉に、純一は「そっすか?」と苦笑いをする。

 そう、純一の能力は水に物事を溶かす能力だった。溶かせるものは物質も含めてすべての『出来事』だ。人間の記憶も、彼にかかればすっかり架空の水に溶かされてしまうのである。そして、純一の能力はこれだけではない。一つの能力を二つの別の能力として扱える……それが彼の力が『水界の悪魔ウォーターデビル』と呼ばれる理由でもあった。

 その直後純一のズボンのポケットから、ピーピーと芸のない音が響いた。彼が手を突っ込むと、そこにはあの通信機がある。

 『純一君?そろそろこっちきてくれない?』

 普段よりも少し高く聞こえるそれは立華の声だった。純一は適当に返事をするとどのあたりにいるのか聞き、「じゃあ俺行きますね」とだけ影無と雅に向ける。
 そして近くの壁に手をあて、それをずぶずぶと突き進ませていった。溶かされているのは彼の肉体なのかそれとも壁なのか。

 人が壁の中に消えるのが当たり前なのか、残された二人は何も考えずに歩き出した。

Re: 神様チルドレン【久々更新】 ( No.60 )
日時: 2013/07/10 21:24
名前: 無花果 ◆VnpZyIK0Ao (ID: foi8YFR4)

三月兎様

待ってましたぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!
今回もなんておもしろいんだ・・・
続きがとても気になります!!!!

ああ・・・本当に続きはどうなるんだ!?と思わせてくれますね!!!

これからも頑張って下さい!!!
あ、でも無理はしないで下さいね?
応援しています!!!!

Re: 神様チルドレン【久々更新】 ( No.61 )
日時: 2013/07/13 12:37
名前: 三月兎 (ID: kJLdBB9S)



無花果さん無花果さん無花果さん!
こんな駄作者を見捨てないでいてくれてありがとうございます!

待ってたとか面白いとか気になるとか、もう本当にうれしいことばかり……!
これからも少しずつになりますが頑張ります(*^_^*)
よろしくお願いします!

Re: 神様チルドレン【久々更新】 ( No.62 )
日時: 2013/07/13 13:10
名前: 馬屋 ◆Ru7MZqv2YA (ID: foi8YFR4)

お久しぶりです!!!
いつ見ても本っっっ当に面白いです!!
一日に何度読んでいる事だろうか・・・

これからも頑張って下さい。
応援しています!!

Re: 神様チルドレン【久々更新】 ( No.63 )
日時: 2013/07/13 21:59
名前: 三月兎 (ID: kJLdBB9S)



馬屋さん

うわあああお久しぶりですヽ(〃∀〃)ノ
こんなに久々なのに読んでくださって……しかも何度もだなんて……もう感激で前がみえません!!
これからも応援を糧に頑張ります(´∀`)よろしくお願いします!

Re: 神様チルドレン【久々更新】 ( No.64 )
日時: 2013/09/01 12:20
名前: 三月兎 (ID: SUkZz.Kh)



 「影無さん」
 「……わかってる」

 純一とわかれてすぐのことだった。雅の小さなその言葉に、影無は顔色を変えずにそう答える。どうするかという意図を含めた彼の台詞に、雅は目を細めた。

 誰かにつけられている。

 これだけは確実だ。だが急に気配が現れたようだった。女なのか男なのか情報はまるで分らないためか、妙な緊張感が二人の間を渦巻いた。そしてなにより、今まで自分たちが気づかない程度に気配を消していたというなら、それほどにできる人物だろう。雅は再び小声でささやく。

 「足止めなんて食らってる場合じゃない……影無さん、先に進んでて、僕が何とかする」
 「勝算は?」
 
 
 「……100」

 考えたような沈黙の後でたその数値に、影無は口元をゆがめた。切れ長の瞳は怪しい光を帯び、そのままクックッと声を漏らす。雅は不満げにそんな彼を睨んだ。

 「どういう意味?」
 「……いや。気をつけろよ?」

 影無はそういった瞬間、強く床をけった。勢いよく走りだした彼に、つけていた人物の動きがこわばる。そしてその直後、雅はその人物のほうを振り返り右手を突き出した。雅の蒼いその瞳が、一瞬紅い光を宿す。それと同時につけた来た人物の体に凄まじい負荷がかかった。まるで何十キロもの何かが乗せられたかのように体が動かず、ガクリと膝をつく。暗闇の中その音を聞き、雅はゆっくりとその対象に近づく。そしてようやく視界に入ったそれに、思わず目を見開いた。

 「君は……!」

 その時雅の目の前に現れたのは、全身真っ白な少女だった。肌も髪も服も、瞳の色以外はすべて白に包まれた……そんな少女だった。まるで竜胆の花のような藍色のその瞳は、膝をついたその状態でもまっすぐ雅を見つめている。

 「まさか……君が白いしょ……」

 信じられないというような目と共に漏れた雅の言葉は、そこでブツリト途切れた。少女がゆっくりと立ち上がったことによって。
 雅の能力は重力手品グラビテーションマジック。それは狙った対象付近の重力を操作するというものだった。今彼は少女の周りのそれを重くしている。普通なら動けるはずがないのだ。
 しかし少女は真っ白な長い髪を揺らし、ゆっくりと雅との距離を縮めていく。
 今までありえなかったその現象に、普段冷静な雅も少しの動揺をにじませた。

 「貴方は神様チルドレンのメンバーですか?……そうですよね、こんな力があるんですから……では」










 「……さよならしなくてはいけないですね?」
 「は……?」

 雅が困惑を混ぜた漏らした瞬間、首元に強い圧力がかかった。いつのまにさらに近づいたのか、少女の白い手は雅の首に添えられ力を込めたいた。困惑、不安、そのほかすべての感情は、かすかに体を鈍らせる。しかしそれは、かすかにというレベルではなかった。雅のスピードの衰えよりも確実に、少女の動きの速さが尋常ではなかったのだ。それは素人の動きとは考えられない。
 この距離まで近寄った時、雅はふと少女が自分より少し背丈が大きいことに気が付いた。苦しみに顔をゆがめながら、ゆっくりと自分の首を絞めつける少女の手を握った。

 「……君……!なんなの……?」
 「私は竜胆哀……お父様の役に立つのが私の仕事……。それは貴方たちの『消去』なんです」

 哀と名乗った少女は、そういうと伏し目がちになる。どこかに哀しみを添えたようなその口調に、雅は瞳を細めた。

 「……ね……、それ、は……君の父親か……」
 「本当の、ではないです。でも、私の居場所はあの方の隣にしかないんです。だから……!」

 少女が口調を強めた瞬間、雅の体は勢いよく突き飛ばされた。突然の行動に反応しきれず、彼の体はどさりと床に現蹴られる。哀はそれと同時に雅に馬乗りになると服の中に隠していたない日を取り出し振り上げる。そしてポツリと「哀しく……ないですか?」と漏らした。

Re: 神様チルドレン【久々更新】 ( No.65 )
日時: 2013/09/03 18:08
名前: 無花果 (ID: foi8YFR4)

三月兎様

…今日気づきましたorz
毎日毎日チェックしていたはずなのに…2日も…2日も!見逃していただとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!?
申し訳ありません(号泣)
うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん(ノд<。。。

しかも…しかも…哀でてるしぃぃぃぃぃぃぃい!
自分が投稿したキャラだけどよりかわいくなってるぅぅぅぅぅう

流石ですね!
使ってくれて本当にありがとうございました!

Re: 神様チルドレン【久々更新】 ( No.66 )
日時: 2013/09/07 21:35
名前: 三月兎 (ID: SUkZz.Kh)



哀ちゃん出させていただきました……!彼女に関しては本当に魅力的なキャラで……誰といちゃコラさせるとかまで妄想していたのに全体が行き詰ってしまい残念です……。


……なので!リメイク版にも出演させてよろしいでしょうか!多少設定に狂いがあると思うので無理にとは言いません(・_・;)
ご検討の方をお願いします(^^♪

Re: 神様チルドレン【久々更新】 ( No.67 )
日時: 2013/09/08 00:30
名前: 無花果 (ID: foi8YFR4)

三月兎様

ハイ!!それは勿論です!!性格変わる?全然気にしませんよ!!
むしろ三月兎様クオリティーですから嬉しいです!!
リメイク頑張って下さいね^^

Re: 神様チルドレン【久々更新】 ( No.68 )
日時: 2014/12/30 02:23
名前: れふ (ID: zHMuS.n5)

続きが気になって仕方ないです〜