複雑・ファジー小説

Re: 神様チルドレン【オリキャラ募集中】 ( No.3 )
日時: 2013/01/30 22:53
名前: 三月兎 (ID: UgVNLVY0)

 「……っくそ!あいついつまで待たせるんだ!」

 喫茶店【フェアリーダスト】の前で、男は苛立たしげにアスファルトを踏みつけた。
 しきりに時計を気にし、当たりを見回している。
 真っ黒なスーツに身を包み、黒髪をワックスでオールバックにした彼の名は雨宮慎太郎。警視庁で働く、れっきとした刑事だ。担当している事件は、とんでもないモノだが。

 「あ、雨宮さーん……」

 あくび交じりののんびりとした声に振り返ると、そこには気だるそうな表情をした青年が立っていた。
 整った顔立ちに、白いカッターシャツに黒いロングコートを羽織っており、足元はブーツでまとめている。
 左手の薬指には、キラリと輝く銀色の指輪がはめられていた。

 「合計2時間35分42秒の遅刻、申し訳ありませんでしたー」

 青年はたいして悪びれもせずに、頭をかきながらいった。とはいっても彼は低い位置で髪を結んでいるので、さすっているような感じなのだが。
 雨宮はそんな青年に対し、ひどく眉を寄せて答えた。

 「そんな細かく計算してる時間があったら、もっとはやく来る努力をしろ!」
 「計算力と行動力を一緒にしないでくださいよ」
 「おい、朔!俺は仮にも上司だぞ!」

 唇を尖らせ言い訳を続ける朔に、雨宮は鬼の形相で怒鳴る。
 しかしベテラン刑事の怖い顔も、朔には効果がないようだ。
 雨宮の三白眼を見つめて「すみません」とだけ言った。
 そして喫茶店に目をやって、再び雨宮を見る。

 「はやく入りましょうよ」
 「ん、ああそうだな……って誰を待っててやったと……!」

 雨宮のツッコミをするりとかわし、朔は喫茶店の木でできたドアを開けた。
 カランカランと、乾いたベルの音が鳴る。

 「いらっしゃいませぇ!……って朔さん!と、お父さん」
 「おい奈々希。ついでは俺かよ」

 駆け足でやってきたウェイトレスは、ふたつに結った茶髪をゆらし瞳を見開いた。
 そしてムウっと機嫌の悪そうな顔をみせる。
 腰に手を当てると、呆れたように口を開いた。

 「もう!また二人だけで捜査会議!?いくらうちにお客がいないからって大事な事話すのやめてよ!」

 奈々希はそう言うと、わかっていながら「……何名様ですか?」と二人に聞いた。
 雨宮が何か言うと面倒臭い事になりそうだったので、朔は人差し指と中指を立てる。
 すると奈々希は、太陽のようなあたたかい笑みを浮かべ「こちらへどうぞ!」と言って見せた。
 雨宮はため息交じりに、案内された席に座る。

 「まったく……。奈々希のやつ……」
 「まあ怒るのも仕方ないですよ。父親が自分の経営してる喫茶店をまったく手伝わず、わけのわからんことばっか調べてるんですから」

 朔は苦笑いを漏らしながら、出されたコーヒーを飲んだ。
 実はすっかり常連状態の朔は、いつも頼むモノが変わらないため、当たり前のように用意されるのだ。

 「あまり他の人に聞かれないからな、ここは……。あ!そうだ!」

 雨宮は突然自らの黒いバックを開けた。
 そして中から、大きな茶色い封筒を取り出す。
 朔は怪訝そうに眉を寄せる。

 「何です?それ」
 「東京柳田組壊滅事件の資料だ」

 思ってもなかったその言葉に、朔は「えっ」と声をうわずらせる。

 「それって……!」
 「ああ」

 雨宮は小さくうなずと、封筒から何枚かの紙を取り出した。
 
 「やつら…….神様チルドレンがおこした最初の事件だ」