複雑・ファジー小説

Re: 神様チルドレン【参照900突破ありがとう!】 ( No.38 )
日時: 2013/03/10 16:16
名前: 三月兎 (ID: DMJX5uWW)

 『……殺してないのか?』
 「うん」
 『珍しいな』
 「そう?」
 『……』

 通信機から聞こえる航の声に、涼は淡々とした口調で答えた。ちなみにこの通信機は、入団時に響から配られるものだ。ピエロの仮面のような模様が描かれており、オリジナリティーに溢れている。

 そしてしばらく沈黙した後、航は小さくため息を漏らした。涼も一瞬黙ってから、「どうしたの?」と彼に聞いた。

 『また無理したんじゃないのか?』

 航の声に涼は反応しない。その態度のせいか、航は怪訝そうに眉を寄せながら言った。

 『どうなんだよ』
 「僕的には……してない』

 涼はそう言うと「それより……」と用件を切り出す。

 「ちょっと銃で撃たれちゃった」
 『バッ……!俺はそのことを無理したって言ったんだ!このアホ!お前の体の条件忘れてないだろうな!?』

 ガンガン響く航の怒声に、涼は思わず通信機を自分から遠ざけた。そして彼をなだめるような口調で話す。

 「覚えてるよ……」
 『覚えてたらそんな無茶しないだろ!?お前の能力は使用時に攻撃力を増大させ全ての物理的攻撃を無にするが、能力が解除された時の反動が大きいんだぞ!?調子に乗って怪我しすぎるな』

 航は表面上怒ってはいるが、実際のところかなり心配しているのだろう。しかし、涼は迷惑そうに顔を歪めた。

 「……だから航さんに連絡いれたの。体が人に戻っちゃう前にさ」
 『……そんなことわかってる』

 涼が本当に分かっているのかはわからないが、航は仕方なしにそう言った。そして「早く俺たちに追いつけ」と涼に言う。
 すると、涼は「ハハハ……」と苦笑を漏らした。航はムッとした表情で通信機を睨む。

 『なにか変なこと言ったか?』
 「あー、いや……そうじゃなくてさ。この屋敷広いしいろんな道会って、途中からどこ行けばいいかわかんなくなっちゃって……。倒されてる警備員を追ってこうと思ったけど、最初以降ぜんぜん倒れてないし……。あ、もしかして航さんかまいちゃんが食べちゃった?」
 『アホ、誰が食うか。倒してないんだよ、俺たち』

 航の言葉に、涼は目を丸くした。驚いたように何度か瞬きし、頭の上に?マークをいくつも浮かべる。

 「え?なんで?警備員そこ一人もいないの?」
 『ああ、たぶん仙川の所に集まってるんじゃないか?奴が死んだら元も子もないだろうし……。あ、お宝が奴のもとに集められてるなら『白い少女』もそこにいるかもな』

 涼は一瞬何を言われたのか分からなかったのだろう。キョトンとした表情をしていたが、しばらくしてから「なるほど……」と呟いた。

 航は任務中三度目のため息をこぼし、『とりあえずそこにいろ。俺とまいが戻るから。治してやる』と呟いた。