複雑・ファジー小説
- Re: 神様チルドレン【オリキャラ募集中】 ( No.4 )
- 日時: 2013/01/30 22:56
- 名前: 三月兎 (ID: UgVNLVY0)
「なんでまた……初期の事件なんですか?あいつらそれ以外にも、やくざ絡みの事件は多いでしょう?」
朔の言葉に、雨宮はフッと口角を上げた。
そして取り出した紙を、朔に手渡す。
朔はそれに目を走らせ勢いよく顔を上げた。普段ぼーっとしてることの多い彼としては、考えられないほど俊敏な動きである。
「こいつ……!見つかったんですか!」
雨宮は「ああ」とうなずき、じろりと朔を見た。
「お前が熱で唸ってる間に警察に来たんだよ」
「それは不可抗力じゃないですか」
朔は何とも言えない表情を作るが、雨宮は気にせずにつづけた。
「久我満……。6年前の東京柳田組壊滅事件での、唯一の生存者だ。今までは神様チルドレンが怖くて警察からも隠れていたようだが、ついに限界が来たようだな」
そう言うと朔の見ていた紙をとり、その中にいる久我に視線をやった。
黒いぼさぼさの髪に、整っていないひげ。服もよれよれとしたものであれば、顔色もかなり悪い。
「死んだ魚みたいな目ですよね……」
ぽつりと言った朔の言葉に、雨宮は答えなかった。
ただ久我の顔写真を見つめている。
そして少し沈黙があった後、ようやく雨宮は口を開いた。
「こいつが……信じられんことを言ったんだ……」
「信じられんこと?」
朔は怪訝そうに雨宮の言ったことを復唱した。
雨宮は目の前のエスプレッソを、ずずっという音と共に流し込む。
「ああ……俺たちは、生存者はこいつだけだと思っていたよな?」
「ええ、柳田組の人間の中で、死体が見つからなかったのはこの人だけですしね」
朔は表情を変えずに、こくりとうなずいてみせた。
「ところがだ。久我が言ったんだよ」
「……何をですか?」
「柳田組には……子供が一人いたってな」
「え……!?」
朔は信じられないというように顔を歪めた。
しかし、そのリアクションも無理はない。
柳田組の環境は、それほどまでに悪かったのだ。当たり前のように犯罪を起こしていた彼らに、子供が育 てられるとは……考えたくもない。
雨宮は先ほど朔に渡していなかった、別の紙を机に置いた。
こちらも真ん中に写真が貼ってある。
「この子が……柳田組にいたと言われている子供だ」
朔はその写真を覗き込んだ。
そこには小学生くらいの少年が写っている。
黒い先のとがった猫耳の様なニット帽をかぶってい て、瞳も髪も黒い。
口元はマスクで隠れていて、はっきりとした顔立ちはわからなかった。
「 名前は遊澤ちとせ……6年前の当時、8歳から10歳あたりだったそうだ」
「……なんでこの写真があったんですか?」
「久我が持ってたんだよ。それも折れ目一つつけずに」
「……変ですね……」
朔は不意に感じた小さな疑問に眉を寄せる。
しかし雨宮はよく聞こえなかったのだろう。「うん?」と朔に聞き返すが、朔は苦笑しながら「なんでもないです」と答えた。
「ま、この子も死体が見つからなかったから、生きてるんだろうなんて俺は思ってる」
「また……酷く曖昧ですね。その根拠は?」
朔は雨宮の目をまっすぐ見つめる。
雨宮も負けじと、真剣な瞳を彼に向けた。
「この子、能力者らしんだよ」
「え!?」
朔は驚いたように目を見開いた。
そしてチラリとちとせの写真に目をやる。
「本当ですか?」
「おう。久我は確かにそう言った。今までなんにおいても能力を信じていなかった警視庁の人間は度肝を抜かれてたぜ」
雨宮はやれやれというように手をひらひらさせる。
朔は「なるほど」と声を漏らした。
「確かにそれなら、生きている確率のほうが高いですね」
「だろう?」
雨宮は得意げに鼻を鳴らすと、口角をニッと上げた。
「神様チルドレンの一員として、生きてる可能性が、な」