複雑・ファジー小説
- Re: アビスの流れ星 ( No.29 )
- 日時: 2013/01/28 18:51
- 名前: 黒田奏 ◆vcRbhehpKE (ID: u83gKCXU)
第二章「生きる理由」
1
叩き斬る。
撃ち抜く。
斬り飛ばす。
撃ちまくる。
斬って撃って斬って斬って撃って斬って撃って撃って撃って斬って斬って撃って斬って斬って撃って斬って撃って撃って撃って撃って斬って撃って斬って斬って斬って撃って斬って撃って撃って斬って斬って撃って斬って斬って撃って撃って撃って撃って斬って撃って斬って斬って撃って斬って斬って斬って斬って斬って撃って撃って斬って撃って斬って斬って斬って撃って撃って斬って撃って撃って斬って撃って斬って撃って撃って斬って斬って撃って撃って撃って撃って斬って撃って斬って斬って斬って斬って撃って斬って撃って撃って撃って撃って斬って撃って斬って斬って撃って斬って斬って斬って撃って斬って撃って斬って撃って撃って撃って斬って斬って撃って斬って斬って斬って撃って斬って斬って撃って撃って斬って斬って撃って撃って撃って斬って撃って斬って斬って撃って斬って撃って撃って撃って斬って撃って斬って撃って斬って斬って斬って斬って撃って斬って撃って撃って斬って斬って撃って斬って斬って撃って斬って斬って撃って撃って斬って斬って斬って撃って撃って斬って斬って撃って撃って撃って斬って撃って撃って斬って斬って撃って斬って斬って撃って斬って斬って斬って斬って撃って斬って撃って斬って斬って撃って撃って撃って撃って撃って撃って斬って撃って斬って斬って撃って斬って撃って斬って斬って撃って撃って斬って。
たとえば、あの支部の書庫に眠っていた資料で目にした、『チェス』というボードゲームの、ゲーム板の白黒模様が延々と地の果てまで続くように。俺たちを脅かす『脅威』だという、レイダーという名の化け物を、毎日カレンダーをめくるように、ただひたすらに殺戮し続ける。
何のために?
別段その化け物たちに個人的な怨嗟があるワケでもなければ、正義感と呼ばれる類の曖昧なものを信仰しているわけでもない。強いて言えば、俺は自分が生きるためにそいつらを殺しているのだろう。
では、何のために生きるのか?
誰かは俺に言った。レイダーを殺すために、俺は生まれてきたのだと。
堂々巡りじゃないか。
そう反論してぷいとどこかへ立ち去ろうにも、もう既に、他の生きるための道は途切れて消えていた。
生きるためには、この『レイダーを殺す』という作業を続ける他にないらしい。
たった一本繋がった、この窮屈でどこまでも続く道の果てまで歩いていけば、いつか本当の答えが見つかるのだろうか。
問いかけても返事が来る筈は無く、ただ地平線の果てまで続く道は、漠然とそこに在り続けるのだった。
「……考え疲れた。寝るか」
両腕を組んで枕の代わりにして、ヘリコプターの椅子に深くもたれかかる。きっと次に目が覚める頃には、次に俺が配属されるという支部に到着していることだろう。
そういえば、俺が配属されるという部隊に、気になる名前の奴が一人いたっけか。そう、確か名前は——。
「フミヤ」
2
ずばむ! と、アラームのてっぺんを思い切り引っぱたく。心地よい眠りを妨げられたことに対する私の怒りの一撃で、アラームは黙りこくった。
重たいまぶたをうっすら開けると、そこはいつもの私の部屋だった。多少の乙女っぽさはあると信じたい、少々散らかっている……かもしれない部屋。服だとかも散乱している。後で片付けておかなきゃなあ、と思いながら大きなあくびをひとつ。ついでに背伸びもする。
パジャマ姿のままで洗面台の前に立つ。歯を磨きながら、今日こちらに到着する予定だという『もう一人』について考えを巡らせていた。
その人の国籍も日本であるらしい。第一部隊の壊滅を聞いて、とんぼ返りしてきたそうだ。
『階級は少佐だが、公式に数えられている個人でのレイダーの討伐数はざっと八千体……』
全ての支部でもダントツでトップの数字である、と、シドウ大佐が昨日言っていた。
ちなみに次点が南米支部の人の六千七百八体で、シドウ大佐はそれに次いで三位、六千十七体であるという。私は、事実上数ヶ月前からのライブラ配属となるから、討伐数はまだ百体にも満ちていない。
確かに驚くべき数字ではあるけれど、それより私が気になったことが一つだけあった。
その人の名前だ。
半年前に私は文谷地区で、死体の山の上でぼうっと夜空を眺めているところを、一人の少年に保護された。
その少年と、今日来る『もう一人』の名前が同じであるのだ。
彼は私が保護された直後、すぐに別の支部へと出張へ行ってしまったが、アイカワ隊長の話に何度か彼の名前が出てきたのを覚えている。
その名前は——。
「ふひはひ」
歯を磨いてる最中だったのを忘れてた。