PR
複雑・ファジー小説
- Re: アビスの流れ星 ( No.72 )
- 日時: 2013/04/25 17:34
- 名前: 緑川遺 ◆vcRbhehpKE (ID: 3dpbYiWo)
- 参照: http://pspから。
『行間三』
「結局、最後までわからないことだらけだったなあ」
「………………」
「自分以外のだれかを簡単に切り捨てることができるかと思えば、自分以外の誰かのために本気になったり」
「………………」
「そういえば、どうして僕じゃなくて彼らの味方をしようと思ったんだい?」
「……わかんない」
「自分のことなのに、わかんないの?」
「わかんない」
「そっか。不思議だね」
「………………」
「結局おいしいも、まずいも、好きも、嫌いも、楽しいも、つまんないも、他にもいろいろ……わかんないままだったなあ」
「………………」
「おいしいって、どんな感覚だった?」
「……辛かったりとか、甘かったりとか、しょっぱかったりとか……いろいろ」
「うん、やっぱりわかんない」
「………………」
「……彼らと居て、幸せだった?」
「……きっとあなたには、幸せもわからないのに?」
「でも、見てたらなぜか、幸せそうだなって思った」
「……うん、幸せだった」
「楽しかった?」
「楽しかった」
「……戻りたい?」
「……でも、私はもう……」
「でも、じゃなくて」
「……うん」
「君は、君をレイダーだと思う? それとも人間だと思う?」
「……わたし、は」
「うん」
「私は人間、だ」
「そっか」
「……うん」
「僕は、人間が好きだったよ。僕の知らないことをたくさん知っていて、幸せそうに笑う君たち人間が大好きだった。僕も、君たちの中に混じりたかった。もっと話したかった。一緒に笑いたかった。」
「……『アビス』?」
「僕が食べてきた『人間』の部分は君にあげる。だから、ちゃんとずっと幸せでいること」
「……うん」
「僕は、いつでも君を見守っているから」
「うん」
「それじゃ、いってらっしゃい。」
「うん。いってきます。」
PR