複雑・ファジー小説

Re: 英雄の詩 Page1 『最初に・・・。』  ( No.2 )
日時: 2012/11/20 19:32
名前: アンノウン (ID: j553wc0m)



       ---------- 『天空神ゼウス』 -----------





     ----------始まりはここからだった。


   かの有名な『ギリシア神話』の中でも、神々の頂点に君臨し、その名を全天界に轟かせた。

  その名は天空神、『ゼウス』。彼という存在が生まれた瞬間、この世界は戦争の始まりを告げたのだった・・・。

  彼は常に、強者を求めていた。自らが全知全能だからゆえ、
  それを超える、もしくは同等の存在を強く求めた。

  彼がその気であるならば、なんだってできる。
  世界を作りかえる事、宇宙そのものを作りかえる事など動作もない。
  だからこそ、唯一欲していたものこそが、自分と互角に渡り合える強者だったのだ。


   そんな彼の唯一の楽しみは、戦いという『遊び』。


  自身の武器で、相棒である『雷霆 (ケラウノス)』を片手に全天界中を飛び回り、彼はひたすらに戦い続けた。

  戦い、戦い、戦い、戦う。ただただ強者を求めた。


   ---------そう、彼は孤独であった。


  唯一の欲求である『強者』という存在はなかなか見当たらず、退屈な時を過ごしていた。
  そんなある日であった。彼はついに出会った。自分と互角に渡り合える『強者』に。


   一人は、『ポセイドーン』。

  ゼウスを「天空神」と呼ぶのなら、彼は「海界神」。


  大海と大陸の支配力に関してなら、その力はゼウスを遥かに超える。
  ゼウスとは兄弟関係にあるのだが、神々の闘争に兄弟は関係ない。

  当時は狂乱と言われるほどの戦争が勃発する時代。
  各々が世界の頂点に立つために戦争を繰り返すのだ。



   彼はゼウスと互角に渡り合って見せた。


  ゼウスが天空を支配するならばと、
  ポセイドーンは大海を操り、大地そのものを支配してみせたのだ。




   そしてもう一人は『ハーデース』。



  彼は世界とは一味違った『冥界』を支配して見せた。
  死んだ魂さえも操り、悪魔と呼ばれる存在でさえ、彼の名を聞いて恐れぬ者はいなかった。

  これを目の前にし、ゼウスは喜びに打ちひしがれた。
  自らの力と互角、それ以上の力を持つ『強者』との出会い。
  これを幸福と言わずなんというのか、と。


   ゼウスは強大すぎる力故に、孤独であった。

  だからこの時、彼は初めて、自分の存在価値を見出したのだ。



   --------後、この三人は終わらぬ闘争を繰り返す。


  全ては世界を自分のものにするため。だがそれ以上に、彼らは楽しんでいた。
  天涯孤独と思われたこの人生において、自分と同等の価値を持つ『強者』という『友』を得られたのだから・・・。




    ある時ゼウスは、この世界についてこう語ったという・・・。



  “彼らに出会うまで、世界はなんて小さいのだろうと常々思っていた。退屈すぎたのだ。

   だが、結果を言えば、私はこの世界に存在出来てよかったと思っている。
   そうでなければ、彼らのような『友』と出会うことなどなかったのだから・・・。”




    一心に『強者』を求め続け、戦闘に生きがいを求め続けた天空神。

    彼もまた、世界に名を轟かせる英雄であることは間違いないだろう・・・。





                   著者、『H・D・N』

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