複雑・ファジー小説

Re: 英雄の詩 Page3 『孤独の王、アーサー王。』  ( No.4 )
日時: 2012/11/22 20:44
名前: アンノウン (ID: j553wc0m)






      ---------- 『堕天使、ルシファー。』 -----------






    -----------かの英雄は落ちた。


   本来であるならば、英雄と唄われる存在であるはずだった英雄。
   英雄の概念を覆し、悪魔とさえ呼ばれるようになった者が、ここには確かに存在した。



        『堕天使、ルシファー』。


   自らの正義の実現のために、彼は英雄という肩書さえも投げ捨てた・・・。


     当時、彼はこんなことを心に秘めていた。

    “『神』は甘い。反吐が出るほど甘すぎる。”


   正義に反する『悪』を裁くのが『神』であるはずだ。

   我々は『神』であろうと『人』であろうと、
   正義に反する俗物には『死』と同価値の罰を与えるべきだ。


    なのに・・・なぜだ。なぜ『導こう』とする? 


   なぜ正しい道に修正しようとするだけなのだ。そんなのは無駄だ。
   一度悪に染まってしまえば、変わることなどありえない。
   そんな淡い希望を持つぐらいなら、手っ取り早く排除したほうがマシだ。


    だから私は、『悪』に徹底した罰を与え続けた。

   『神』も『人』も、悪に染まるものは平等に排除してきた。
   そんな奴らを『死』という罰を用いて裁いてきた。

     殺し、殺し、殺す。


   導くくらいなら、排除する。だが、それは天界のルールに反していた。
   天界の神々は、私を『反逆者』と呼んだ。


   “・・・自らの力を使い、正義の名のもとに『悪』を裁いてきた私が反逆者だと? 

    そうか、『神』も『人』も落ちたものだ。
    貴様らは甘くなった。以前なら、『神』は『悪』に容赦なかった。
    悪に手を差し伸べるなど、以前では考えられない。”


    皆が私を見下ろす。反逆者だと罵る。そしてあざ笑う。




    ・・・ああ、そうか。私は気が付いた。


   正義を貫き通す上で、『偽善』や『平和』はありえない。
   正義を貫き通すことには、それなりの覚悟が必要なのだと。


     誰かが、『悪』そのものになるという覚悟が・・・。


     そしてある日、ルシファーは天界に反逆した・・・。


   天界をそのものを『悪』と判断し、裁くために。
   だが結果、彼は敗れ、天界から落ち果てる。
   『神』としての地位を失い、『神』とは程遠い、地獄にまで落ちた。
  

     ルシファーの終わり、誰もがそう思った・・・。


   ---------だが彼は、正義に対する尋常じゃないほどの執着心で、再び立ち上がる。


      “なんのために? ただ正義のために。”


   だから私は、『悪』になる。

   本当の正義にたどり着くためには、誰かが『悪』になり、
   他の『悪』を全てうち滅ぼさなければならない。


   ならば、私がなろう。それで『悪』がなくなるのならば、
   私はいくらでも『悪』になり、『悪』を滅ぼしてみせよう。


   そしていつか、天界の『神』という強大な『悪』さえも、私が排除してくれよう・・・!! 



   こうしていつしか、彼は『堕天使』と呼ばれ、地獄を統べる王に君臨していた。
   全ては、同胞と共に『悪』を滅ぼすために・・・。



    ---------ルシファーはある日、このような言葉を残している。



   “誰が私を『悪』と言おうが、『悪魔』と言おうが関係ない。

   私はただ、この世から『悪』を滅ぼそうとしているだけだ。
   正義の名のもとに、偽善を語る『神』や『人』は全て私が裁く。

       奴らは『死』をもって、罪を償うべきだ。”




    『悪』を滅ぼすために、彼は今宵も地獄を『悪』で満たし尽くす・・・。






                   著者、『H・D・N』

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