複雑・ファジー小説
- Re: もしも俺が・・・・。『ジョジョ編突入。』 ( No.101 )
- 日時: 2013/03/01 23:17
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
————第13幕 『もしも俺がジョジョの世界に行ったのならば……前編。』————
「パート1。」
業火が広がる視界の中、黒川はただひたすら音のする方へと走り出していた。
途中に何人も倒れている人を見かけたが、今は構う余裕はなかった。
今この状況を引き起こす原因を取り除かねば、世界は救われないし、救えない。
そんな自分が情けない。という考えは振り切り、ただひたすらに前進することを決意した。
————そしてついに、その打撃音の聞こえる場所までやってきた。
目の前で確かに、拳を振るって戦う者が見える。ここから100m先だ。
遠目でも確認できた。そして同時に最悪の推測が当たってしまったと黒川は後悔した。
自分の視線の先で戦う二人は、確かに『スタンド』使いの人間だ……。
お互いのスタンドが主人の背後から守護霊の様に現れ、実体化している。
片方のスタンドは全身青を基調とした筋肉質の人型のスタンド。
逆立った黒の髪の毛に厳つい顔をしたそのスタンドは、
見た目通り、肉弾戦を得意と言わんばかりの体格だった。
対してもう片方のスタンドも、同じく筋肉質の接近戦を得意にしそうなスタンドだった。
こちらは全身血の様な赤色を基調としており、白く塗りつぶされた目はどこを見ているのか読めない。
前者のスタンドは、黒川も良く知るスタンドだった。そして操る人も、知っている。
————その正体は、『空条 承太郎(くうじょう じょうたろう)』。
身長は軽く190cmを超える長身で、白い帽子とコートが特徴的で良く似合う。
彼の恐ろしい面相とは裏腹に、非常に冷静でかなりの頭脳派。抜け目がない男。
そして彼の操るスタンド、『スタープラチナ』は全スタンド中でも最強だと言われている。
桁外れのパワー、針に糸を容易に通す精密性、弾丸さえも軽く弾き飛ばす程のスピードと動体視力。
あげればキリがないほどの長所をもつ、チートと言われても可笑しくない程のスタンドだ。
————そしてもう片方のスタンド使いだが、こちらは全く持って見たことがなかった。
操る人間は、短い金髪で、赤い瞳をしていた。顔つきはイケメンで、背中にギターを背負っている。
見た感じ、外国人かなと思った。そんな容姿をしていたからだ。
そして操る赤を基調としたスタンド、こちらも完璧に未知数だった。
黒川の知らない新手のスタンド使いと見ていいだろう。
そんな事を考えている最中、ふと黒川の右上の建物から声がした————。
「————おやおや、これは予想外のお客様です。」
瞬間、反射的に黒川は声がした方を見上げた。そこには『誰か』が凛として某立ちしていた
姿は全身黒ローブに身を包み、頭と顔はフードで隠していて見えない。かなり小柄である。
その瞳は黒川を見ておらず、遠くの戦っている二人に向けている。
一瞬自分に話しかけているのかと戸惑ったが、すぐその答えは得た。
「貴公が黒川君、だな。噂は常々聞いています。」
「……その噂はどこから来ているのか教えて頂きたいもんだな。」
意味深な言葉を残す黒ローブに、身構える黒川。
存在感だけで分かる。少なくとも、味方ではない。敵だ、と。
「それは秘密です。しかし、どうです?」
何が?と聞きたくなるほど抽象的な質問に黒川は理解できなかった。
目の前の奴は何をどう質問してきているのか全く謎であった。
するとそれを読み取ったのか、「ああ、失礼。」と謝罪して言葉を紡いだ。
「説明が足りないですな。ほら、あそこで戦う二人を見て下さい。」
見なくても誰を指しているかが分かった。スタンド使いの二人の事だ。
彼らはこうして自分達が雑談をしている今も、咆哮と共に両拳の連打で戦っているのだ。
その状況はすさまじく、まるで二人を中心に竜巻が起こっているかのようだ。
人間の目では追いきれず、拳が全て幾つもあるかのように見えるぐらいだ。それほど攻撃の速度が速い。
とてもじゃないが、自分が割って入れるような状況ではない。というのは理解できる。
「彼、空条承太郎は素晴らしい。私の『自信作』と対等に渡り合えているのだから。」
「……ッ!!」
こいつは……と黒川は歯軋りした。こいつが元凶だった!!
どうやらこいつは今もなお承太郎と戦っている、あの男とグルだった。
否、グルとは少し違う。言動から見て、『奴隷』。もしくは『実験体』。
確かに戦っている謎多き男は、何かに操られているようにも見える。
自我を保てていない様だった。獣のように咆哮する彼は狂っていた。
そしてこの黒ローブ、何かしらの科学者だろうかと推測した。そして、吐き気もした。
自分も目指している科学者。その名が汚された様な気がしたからだ。
自分と同じ匂いがするが、目指すものは全くの別物。許せないと心臓がざわつく。
「……お前は何者だ?」
黒川の絞り出すように出した声は、低く威圧を感じさせるものだった。一種の威嚇と思ってもいい。
「それも秘密です。聞きだしたければ、力づくで聞いてはいかが?」
「……それでいいなら————そうさせて貰うぞッ!!」
黒川はエアブーツを起動させる。風が放出されるとともに、ほんの少し黒川の身体が浮く。
そうしてもなお、黒ローブはこちらを見ようとしない。まるで興味が無いようだ。
「申し訳ない。貴公の相手は私じゃない。貴公の相手は————」
そこまで言うと、黒ローブの男の隣に、一つの異次元のゆがみが出現した……。
それは確かに見たことがあった。アンドロイドの世界で見た、漆黒のゆがみだ。
そしてそこから漆黒のベールを纏う様に出てきたのは、忘れはしない。『奴』だ……!!
「————あひゃひゃ、数日ぶりぃー。ご機嫌いかがぁ? 私の王子様♪」
黒川にとって倒すべき敵、『ミスト・ランジェ』が微笑んでこちらにウインクした————。