複雑・ファジー小説
- Re: もしも俺が・・・・。『因縁の敵、出現。』 ( No.102 )
- 日時: 2013/03/02 19:16
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「パート2。」
あの時の屈辱、怒りを忘れたりはしない。
私の目の前で、確かにゼロは死んだ。彼女の手によって。
それをあざ笑い、侮辱した奴の事など忘れるはずもない。
そして願っていた。いつかまた会う時が来たならば……、
今度こそ、この手で殺す、と————。
「————ミスト……ランジェッ……!!!」
ギリギリと歯を食いしばる音が、自分でも驚くほどよく聞こえた。
あの日から、ずっと待ち望んでいた。またこうして会える……この時を。
黒川は何も言わず、片手にバトンを握り絞める。そして、それは閃光の如く輝く光の剣になった……!!
「あひゃひゃ、こわーい。殺気は変わってない様で嬉しいよぉ。」
「……貴様の様な腐った女の存在など、忘れたくても忘れるものか。」
すでに黒川はあの時の黒川に戻っていた。本気の殺気を発していた、あの時に。
無論、すでに斬り殺す覚悟も出来ている。もう、それほど黒川の思考は凶器に満ちていた。
殺気に満ちた黒川と対照的に、あまりにも陽気で楽観的なミスト。
「……ミスト。私は手出しはしない。彼の戦闘を少しでも見ていたい。」
「いいよぉ!! こっちは適当に殺し合いしとくから。————ところで、実際どうなのぉ?」
ミストがチラッと横目で遠くで戦う二人の姿を見る。相変わらず壮絶で、人知を超えていた。
黒ローブは一瞬考える様に言葉を詰まらせると、呟くように言葉を発した。
「……5分5分、だな。私の計算では、『セイン』の勝率は4割程度。」
「あれぇ、信じてないねぇ。一応今で約15分ほど戦ってるんでしょぉ?」
黒川はその会話を殺気を殺さず、聞き耳を立てて聞いていた。
奴らの会話によると、今承太郎と戦う青年は『セイン』と言うらしい。
そして15分もの間、あの最強と評される承太郎相手に粘っているのだ。
いかんせん信じがたい話だが、だとしたら相当の強敵だと黒川は悟った。
あれ程の強さを持つ承太郎とほぼ互角の戦いをするというのだから、正直化物だ。
「だからこそ、です。長期戦になればなるほど、セインの集中力は切れ、やられれば洗脳が解ける。
まぁ今まで普通の人間だった彼がここまで戦えるのだから、私の実験は成功と見ていいでしょう。」
黒ローブはとんでもないことを口走った。やはり洗脳していたのか、と黒川は驚愕した。
そして元々は普通の人間だということにも驚いた。つまりこの黒ローブは、
自らの手で、『セイン』という男をスタンド使いに仕立て上げたのだ……。
正直人のやる事を超えている。奴も人間を超越した存在、とかいうやつなのだろうか。
そしてもう一つ、有力な情報は、倒せば洗脳が解けるという点だ。
それはつまり、承太郎が勝てば元に戻り、ひとまず事件は落ち着く。
もしも原因がこいつ等だとするなら、一番やばいのは間違いなくあの『セイン』だ。
それを押さえることが出来れば、こちらの勝機が傾く……はず。
そして協力してこいつらを叩くことも可能なはず。ひとまず承太郎次第、だろうか。
いや、ここで自分も負ければそれはそれでバッドエンドだ。それは必ず阻止する。
目の前にこいつらは、許してはいけない。許し難い存在だ。そんな奴らは————
「————俺が殺すッ!!!」
黒川は雑談を交わす二人を無視し、一気にエアブーツの風力で跳躍した……!!
そんな様子に驚くことなく、二人はいったん会話を止めて、ミストがニヤリと笑みを浮かべた。
「じゃあぁはじめよっかぁッ!!!」
ミストもグッと拳に力を入れ、空中に飛び立つ黒川を悪魔の笑みで見つめる。
黒ローブは相変わらず二人の戦闘に夢中だった。だがそんなことは関係ない。二人とも倒せばいい。
黒川は空中に乗り出すと、ある一定の高度まで行くと急停止し、右手に『何か』をスッポリとはめた。
それは以前にも紹介した、黒川の発明品の一つ、『空気破壊(エアクラッシャー)』だ。
蒼色の鉄製をした、通称バズーカ砲。威力はトラック一台を粉々にするレベル。
たとえ化物と言えど、無事では済まない————。
「————消し飛べ、『空気破壊 (エアクラッシャー)』ッ!!」
咆哮し、中にある引き金を力強く引くと、黒川の身体は一瞬吹き飛ぶようにのけぞった。
その分、前には想像を絶するほどの空気が放出され、それは一つの塊となった。
そして着弾すると同時に辺りに四散し、爆発するような破裂音と共に辺りを吹き飛ばしたッ……!!
あまりの威力に煙が巻き起こり、黒の煙が視界を奪う。
黒川の目で見た感じでは、回避できていないはず。否、そんな時間はなかった。
発砲してから約1秒も満たない間に辺りは爆風と強力な空風に包まれたのだ。回避は難しい。
その予想通り、爆風で起こった煙が徐々に晴れていくと共に、二人の姿が視界に入った。
ミストの身体の服は所々破け、血を流している。まともに食らって無傷という事はなかったようだ。
————が、黒ローブはそんな悪夢のような展開を容赦なく見せつけてきたのだ。
黒ローブが破れるのはおろか、本当に傷一つついてない。回避した様子もない。
たださっきと同じく二人を見つめていた。何もなかったかのように……。
それは黒川を驚愕させるのに十分だった。あの黒ローブは、何者だというのか。
「あひゃひゃ、痛ったいなぁ。でもでもぉー、これはこれで快感かも♪
それにしても君は相変わらず凄いねぇー。無敵じゃーん?」
「余計な事を喋らないでください。」
傷を受けてもなお陽気なミストを、冷静に鎮めるように言う黒ローブ。
二人の状況はあまりにも違っていた。そしておぞましかった。底が知れない。
黒ローブもそうだが、ミストだって十分な化物だ。
人間なら粉々になる威力をまともに受けて、血を流す程度で済んでいる。
とてもにわかに信じられない。はっきりいって異常だ。本当に人間を超越した存在なのだろう。
「さあて、黒川くうーん!! あたし達もそろそろ本気ではじめよっか。
————純粋な殺し合いをさぁ!!! あひゃひゃひゃ!!」
ミストの表情が一変した。殺気が込められる。だけど楽しんでいる無邪気な子供の様なあどけなさ。
戦闘を心の底から楽しみに待っていた、獣の様な威圧感を発していた……!!
だがそれは、黒川だって同じだ。
戦闘が楽しいというわけではない。ただ、奴を殺したい。その殺気だけは、目の前のミストと一緒だ。
黒川は『空気破壊(エアクラッシャー)』を素早くしまう。
そして代わりにシャイニングブレイドを強く握る……。
これが効かないなら……直接焼き斬って殺すだけだッ!!
「おおぉぉぉぉおおおッッ!!!!!」
「ああぁぁぁああああッッ!!!!!」
二人は同時に咆哮し、相手に殺気を向けて突撃する————。