複雑・ファジー小説

Re: もしも俺が・・・・。『決着……!!』 ( No.112 )
日時: 2013/03/10 14:57
名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode




          「パート2。」



  その後、黒川と水島、そして後々合流した花狩先生は、承太郎達の元に向かった。

  お互いに顔を合わせた時、承太郎達はお前らは誰だ?、という様な顔をしてきた。
  まぁ黒川達は知っているが、承太郎達が知らないのは当然と言えた。

  けれど自己紹介をしている暇もなく、結局この後、する時間などなかった。



  ————色々、お互いに聞きたいことはあった。

  例えば、承太郎や仗助からしてみれば、黒川と戦っていた奴らは誰だったのか、であったり、
  黒川達にしてみれば、なぜ杜王町がこうなってしまったのか、であったり。

  しかし、黒川達にとってはそんな長居をしている時間もないのも事実。
  残り5分程度しかなく、お互いに知りたいことを探るのはこの際やめにした。


  そして話題は、一人の青年に移った……。

  承太郎が止めたこのセインという男。今は気絶しているが、死んではいないらしい。
  そして洗脳も解けていると見ていいだろう。これはセルダークの言った言葉が正しければ、だが。
  ただ、もしもまだ洗脳が解除されてないというならば、多分セインを連れ帰ったに違いない。
  だからもう暴れることはないはず、というのが最終的な結論だ。

  とはいえ、セインのしてしまった罪は……重い。

  町一つを壊滅状態にしてしまったこともあり、それはとても許されない。
  目覚めたセインがはたしてどのような行動をとるのかも、まだ分かったわけではない。
  なのでセインの処理、処罰はこちらで決めると承太郎が提案したのだった。



  ……それを決めた直後、黒川達についにタイムリミットが来てしまった。

  徐々に身体が消えていく三人を見て、承太郎達は目を見開いて驚いていた。
  仗助は、「やべぇぜ……グレートだぜ……!!」なんて驚きの言葉を言っていた。
  承太郎は、「やれやれ、不思議なヤローだな……。」なんて、呆れた表情をしていた。

  結局もっと話したい、もっと楽しみたいという気持ちが解消されないまま別れが来てしまった。


  だから最後に、「また来る。」、そう一言だけ残して、黒川達は消滅した————。














  ————そして現在、人気のないいつもの公園に帰ってきたわけであった。


  結局、紫苑の言っていた『物語の危機』というのは、十中八九『奴ら』の事を指しているのだろう。
  紫苑には感謝しなくてはならない。おかげで、黒川達は色んな情報を得た。

  そしていち早く察知できた。世界に何か起こるかもという危機を……。
  DDD教団……。まさか奴らが本当に動き出しているなんて思わなかった。
  先ほど花狩先生に聞いてみたのだが、詳しくは知らない様だった。
  まぁ当然だ。分かっているなら対策を早急に練っているわけで……。




   「…………。」



  で、まぁそれは良いとしよう。後々に考えるとしよう。しかしだな————





   「……黒川君、一つ質問があるんだけど。」

   「……何かね、先生。」




  苦笑した花狩先生が手をあげて尋ねてくる。
  まるで生徒と先生の立場が逆になった様だ。それもそのはず……














   「————なんでセイン君、『こっち』に来てるのよ?」





  チラリとお互いに視線をある場所に向ける……。

  そこには本来なら『向こうの世界』にいるはずのセインが、なぜか横たわって倒れていた。
  気絶して、眠っているようだった。穏やかな表情は、とても町をぶっ壊した殺人鬼には見えない。




   「し……知りません。」

   「うおおおい!! 承太郎さんとの会話の意味ないじゃんかよ!!」



  花狩先生がそういうのもごもっともだ。てっきり私達はセインを承太郎に任せた気分でいた。
  処理処分はこちらで決めると言っていたので、まぁ辛い事にならなければいいかと心配ではあったが、
  まさか一緒に飛んできてしまうとは。一体何の冗談なのだ?、と黒川は首を傾げた。



   「これじゃあティアナちゃんと一緒じゃないか……。

   おいおい黒川君、いつから君はどこぞのリア充主人公になったんだ?」


   「一級フラグ建築士という資格がありまして……って、違いますよ、先生。」




  思わずノリツッコミをしてしまう程、黒川も焦っていた。

  偶然ではない、必然? そう思ってしまう程の出来事。
  もしかして出会った人が全員こっちに来てしまうのか?、という仮説を立ててみたが違うだろう。
  なぜなら、それならドラえもんや、承太郎もこちらに来るはずだ。なのに来ていない。

  頭を回転させればさせるほど、謎はどんどん深まった。なので、いったん止めた。
  ゴホンと咳き込んで、黒川は頭を冷静にして、本題に入る。



   「……とにかく先生、一旦そちらで預かってもらえるか? セインを。」

   「ま……まぞで?」

   「マジで? と言いたいのだな? そうだ。マジだ。」

   「うおぅふ……。こりゃあ一応遺書書いたほうがいいか……。」



  花狩先生は襲われる前提で考えている様だ。その証拠に、本気で怖がっていた。
  まぁ確かに、もしまだ洗脳が解けていなければ、その時点でアウトだ。
  その時は……葬式ぐらいには行ってあげようかと黒川は思った。

  ……ただまぁ、冗談抜きで、今頼れるのは花狩先生しかいない。

  もちろん花狩先生もそれが仕事であるし、保護するのも役目だ。
  だから当然であると言えば当然である。が————




   「ま、こっちは任せてよ。ほんで……だな。問題は……だな……黒川君。」

   「…………。」




  花狩先生の言葉が詰まり、咳払いを一度して、チラッと横目で黒川の隣を見る。



  ————先生の言いたい事は大体分かっている。一番の問題は、彼女だ。

  花狩先生の視線の先には、水島愛奈がいた。しかし、問題であるのは、水島の状況だ。
  水島は今、黒川の腕を絡めてギュッと抱き着いている。ピタッとくっついて、無言で俯いていた。



   「……相変わらず、返事なし?」

   「……ああ。」



  花狩先生が耳打ちすると、黒川は小さく頷いて答えた。

  セルダークが消えた後から、ずっとこの調子だった。
  無言で黒川にピタッとくっつき、離れなかった。それほど怖い思いをしたのだろう。
  試しに何度呼びかけても、彼女は無言のままだった。何も言わず、ただ身体を預けた。



   「……水島は私がなんとかする。だから……大丈夫だ。」

   「……さすがに役得だねぇ……って、おちょくることも出来ないな。」



  花狩先生もさすがにおちょくる元気が出ない程、表情を曇らせていた。心配なのだろう。

  黒川も無言で俯き、隣の水島の絡める手を、そっと握る事しかできなかった……————。