複雑・ファジー小説
- Re: もしも俺が・・・・。『調教回。稀に見るカオス回。』 ( No.132 )
- 日時: 2013/03/22 21:46
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「パート3。」
————朝の騒ぎは、授業が始まると次第に収まっていった。
それはまぁ、一時間目はもう視線を何度浴びたことだろうか。
そこら中でメモを交換し合う女子は見えるし、殺気を見せてくる男子さえいた。
無論、黒川はそれを何食わぬ顔でやり過ごしつつ、隣の水島に、
「愛奈……あれは君の本性か? それとも役作りか?」と、耳打ちしたところ、
「えへへー、どっちが黒川君のお好み?」なんて可愛い笑顔で返された時は紅潮したものだ。
ここが学校でなければその場で抱きしめて……ゲフンゲフン。いかんいかん。
結局、あの『姫スタイル(クラスの誰かが命名した)』をした水島が、
はたして本性なのかそうでないのかは謎のままであった。まぁその内分かるだろう。
そして昼時になると、ようやくひと段落したという感じだ。
相変わらず霧島と紫苑は泣いたり悶えたりと、表情に忙しい様だったが、
興味のない柿原は、一限目に入るとすでに睡眠モードに入って、そしてさっきようやく起きた。
そんなわけで、まぁ無事に色々乗り切ったわけだ。無事とは言わないが。
そして黒川は昼休みを迎えると、出していた教科書を直し、スッと立ち上がった。
水島がどこに行くの?、と目で訴えてきたので、用を足すだけと短く答えて教室を出た。
教室を出て左側へと廊下を歩いていく。5m先に男女別れたトイレが目に入る。
そこにわき目も振らずに歩いていたその時、
「あ……。」
と、ちょうど前方から間の抜けた声を聞こえたので、そちらに視線を向けてみる。
黒川の目の前に、一人の女性が驚いたような表情で立っていた。
身長は155cmほどで、髪はクリーム色の左右に分かれた長いツインテール。
学校指定の制服を見事に着こなし、凛としている。
左右の髪を髪を縛っているピンク色のリボンが特徴的だ。
————黒川はその女性を知っていた。同級生の、名前は『青海 真希 (あおみ まき)』。
むしろ知らない方が可笑しいと言える。なぜなら、この学校の現生徒会長であるからだ。
実は、水島に並ぶ美少女でもあったりする。男子からの人気も高い。
その理由は容姿もさながら、運動能力、勉学も優秀な点もあり、
男子の噂によると、『ツンデレ』という特殊機能付きの様だ。
その一面を一目見ようと男子達が群がる光景を、黒川は何回か目にしていた。
困っている彼女を助けてあげたこともあったが、それさえもツンデレで返されたこともある。
まぁ確かに、おっとりとした大人の女性である水島とはまた違うタイプの女性だ。
それによって、人気を二分化しているようだった。
(ちなみに、男子生徒の中で行われた秘密投票では2位らしい。1位は無論、水島愛奈。)
そしてそして、驚くことにクラスは『2年B組』。つまり同じクラスメイトでもあるのだ。
今まで紹介してなかったとはいえ、私ともそれなりの話を交わす友人でもある。
「あぁ、青海さん。今教室に帰りか?」
さすがに黒川と言えど、呼び捨てにするほどの仲ではない。
一応仲は良いのだが、どうしてもさん付けで呼んでしまう節がある。
「えッ……ええ。まぁね。」
いきなり話しかけたから驚いたのか、青海真希はしどろもどろしていた。
胸の辺りで腕を組み、重そうな二つの実ったものを支えているようにも見える。
大きさは結構ある。水島も平均以上に育ってはいるが、この女性はそれ以上に……
と、考えた所で思考を止めた。これ以上考えれば、何かボロが出そうな気がした。
そんな目の前の彼女がなぜか頬を赤らめているが、まぁ気にしない。
「く……黒川は……どこ行くのよ?」
向こうは呼び捨てで呼ぶ。否、自分が許可を出したのだが。
それと交換条件で向こうも呼び捨てでいいと言われたのだが、どうもその気にはなれなかった。
結局はさん付けで収まっている。今もそうだ。
と、そんな思考はさておいて、真希の質問に答えてやらねばと思い、
「ああ、トイレに。」と短く答えた。それがさらに真希を紅潮させたのは気のせいだろうか。
「そ……そう。あっ、それと……。」
そこで真希の口がこもり、何かをごにょごにょと言っている。
視線を右下に逸らし、頬は赤らめたままだ。普段はこうではないというのに。
自分はもしかしてとんでもない事をしてしまったのだろうかと頭を巡らせた。
……否、多分何もしていないと思うのだが、それは次の言葉で訂正することになった……。
「————……水島さんを……その……ちょ……調教……したって本当?」
真っ赤にして言葉にする彼女の前で、黒川はまたも片手で頭を押さえて天を仰いだ。
ああ、それはそれはとんでもない事だ。まさかここでこれが来るとは。
だが、黙っていれば肯定になる。黒川は即座に左右に首を振った。
「違う!! それは愛奈の冗談だ。本当に私は何もしていない!!」
「そ……そっか、そうよね!! でも……愛奈って……。」
紅潮した顔からほんの少し寂しそうな表情を覗かせた。
真希は黒川が『水島』と呼んでいた事を知っている。だからこその疑問であったのだ。
「ってことは……二人はやっぱり……。」
そこまで言うと、言いたいことが分かったのか、今度は黒川は首を縦に振った。
「……ああ、それは本当だ。私と愛奈は交際している。」
「そ……そっかぁ。へぇー。なんだか釣り合わないわねー。」
黒川がそう言うと、真希は一瞬悲しい表情を浮かべた後、すぐに凛とした表情に戻った。
「そ……そう言うな……。結構気にしているのだ。」
「あはは、やっぱり? まぁ聖女って言われてる女性と付き合ってるんだもんねぇ。」
「なかなか痛いとこを突いてくるな……君は。」
黒川が苦笑して言うと、真希はさらにと言わんばかりに追い打ちをかけてくる。
「本当に何もしてないんでしょうねぇ? 男は獣だっていうし、信用ならないなぁー。」
「私を一緒にするな。まぁそりゃあ……そういう時もある時はある。」
「……やっぱりあるんじゃん。スケベ、変態さん。」
ぐぬ、という黒川の漏れた声を聞いて、思わず真希は吹き出した。
まぁ男である以上、一欠片の欲望は捨てられないのは事実だ。
それは女性にも同じことだろう。そりゃあ男子ほどではないかもしれんが。
一通り笑った後、真希は黒川から視線を逸らし、顔を紅潮させてポツリと呟く。
「……まぁでも……黒川になら……調教されても……。」
「…………え?」
あまりもポツリとした呟きだったので、黒川にはあまり聞こえなかった。
それで聞き返そうとしたら、なぜか分からないが真希はハッとした表情をしていた。
首をブンブンと左右に振り、頭のツインテールが揺れる。
「なッ……なんでもないわよッ!!」
真希は自分がとんでもないことを口走ろうとしていた事を思い出し、さらに紅潮させた。
トマトの様に赤くなった顔をもう一度左右に振ると、そのまま黒川の横を通り過ぎて行った。
教室へと戻っていく真希の後ろ姿を見送りながら、黒川は唖然としていた。
彼女は一体何を言ったのか、非常に気になるし、なぜ怒ってたのかが分からない。
おちょくるだけおちょくって帰っていった彼女に結局何も意図が分からず、
「……まぁ……いっか。」
そう独り言を呟くと、背中を向けて男子トイレへと足を踏み入れていった————。
————————第16幕 完————————