複雑・ファジー小説

Re: もしも俺が・・・・。『ツンデレキャラって必要だと思うんだ。』 ( No.136 )
日時: 2013/03/26 19:07
名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode




     ————第17幕 『もしも俺がこれまでの事をまとめたなら……。』————




           「パート1。」




  ————黒川達が本格的に話し合いを始めたのは、今日の放課後の事であった。


  無論集まった理由はただ一つ。『DDD教団』と『異世界のゆがみ』について……だ。

  花狩先生の自室ともいえる部屋で、数人の人が集まっていた。
  特等席である一番奥の椅子に、花狩先生が正装の白衣を着て座っている。
  椅子の前方に大きな机があり、周りを囲う様に二つの赤い長ソファが置かれている。
  その内一つに、黒川、水島、霧島が座っており、向かい合う様に紫苑と柿原が座っている。

  机の中央には大量の白紙の用紙が乱雑に散らかっている。
  これは黒川が持参したものだ。これからこの白紙の用紙にメモをしていくつもりだ。
  ここ数日に起きたことなどを全て記録しておこうと思ったのだ。




   「————ん、とりあえず始めようかな? 全員いるよね?」



  花狩先生がチラリと辺りを見渡して言うと、全員首を縦に振った。

  黒川は片手にバインダーを持ち、スラスラとシャーペンを走らせている。
  水島は行儀よく座って黒川の書く文字を目で追っている。
  霧島は両手を頭の後ろで組み、欠伸を一つしている。
  柿原は眠そうな目をこすって、必死に眠気と戦っている。
  紫苑は元気が有り余っているといわんばかりに、笑顔で足をブラブラさせている。

  それをもう一度人数確認した後、花狩先生はコクリと頷いた。



   「じゃあはじめっか。集まってもらった訳……まぁ今さらあんまり言う必要もないよな?」



  無論、皆には事前に伝えてある。だから余計な言葉はこの際は無しにした。
  よし、と一息入れると、花狩先生はさらに言葉を続けた……。




   「じゃあまず初めに……紫苑と柿原、そっちの状況の説明を頼めるか?」



  花狩先生が言うと、紫苑は「はいはーい!!」と元気一杯に言った。
  口を開いて説明しようとした紫苑を遮るように、柿原の手が紫苑を制した。



   「……紫苑、俺が言うわ。紫苑のしらねぇ事も俺は知ってるしな。」


  柿原がそう言うと、何秒かまだ瞬きした後、「ええー?」首を傾げた。



   「なんのことぉー? ボクの知らない事ってなんなのさー。」

   「それを今から言うんだよ。俺と源次の話の内容を……な。」



  柿原がそう言うと、紫苑は唸った。何か悔しそうな表情を浮かべている。
  それを横目で見た後、正面を見た柿原は、次々と言葉を続けた……。




  柿原の情報は、まとめるとこうだ。

  二人は商店街近くで妙な気配を感じ取った様だ。とはいえ、感じ取ったのは紫苑だが。
  それで二人が捜索していると、そこで未だ素性の掴めぬ少年である『瓦 源次』に出会った。
  彼もその妙な気配を感じ取っており、それが『異次元のゆがみ』なのだと教えてくれた。

  『異次元のゆがみ』というのは、いわばこの世界と別世界を繋ぐ架け橋。
  ゆがみの向こう側には別世界が広がっていて、それを塞いでいる扉だとか。

  そしてそのゆがみが発生していることはつまり、
  誰かが別世界からこちらの世界に移動してきた事を意味する。

  無理やり次元の扉を開き、こちらの世界に来たことによって起きるゆがみこそ、
  この紫苑達の感じ取った、『異次元のゆがみ』なのだそうだ。

  そして、世界の所々に出現した異次元のゆがみの謎を解くために、
  源次からのお願いもあって、一緒に行動するようになった、と。


  そしてそのゆがみの正体を知るため、源次がとった行動は、いわば強行策。
  ゆがみの部分から無理やり異次元の扉を開き、それを出現させている犯人を追うというモノだ。
  異次元の向こうに必ずしも犯人がいるとは限らないみたいなのだが、
  ゆがみの向こうにかならず別世界があるのは確かなのだとか。

  そのゆがみを源次は無理やりこじ開け、異世界へと三人は足へ踏み入れた……。


  ……と、そこまで言った時、割り込むように黒川が会話を止めた。


  無論、これを柿原は予想していた。否、全員と言っていい。





   「待て。それはつまり……お前らは『もしもの世界』に行ったという事か?」




  黒川は異次元の世界をまとめて『もしもの世界』と呼んでいる。
  柿原はそれを分かった上で、首を縦に振った。





   「————そうだ、黒川。お前と全く同じ現象で、全く『同じ能力』だ。」

   「……ッ!! おい、ちょっと待てよ!!」



  今度は霧島が声を荒げて叫んだ。無理もない。全員今は同じ気持ちだろう。
  なぜなら、それは『あり得ない』からだ。




   「この世界は確かに変だ。訳わかんねぇ力だって実在する。けどな————

   ————その訳わかんねぇ能力は、世界に二つと存在しないはずだろ?

   同じ能力が存在することはないってずっと前に科学者が解明したって聞いたぜ?」




  そう、霧島の言う事はその通りなのだ。

  能力とは、いわばそれぞれ個人に与えられた『才能』。
  それは一人一人が違う、全て異なるものなのだ。
  それを発動できるか否かはその人次第だが、それは確かに人間に一つは必ず存在する。

  そしてその能力は、『人の人格に関係している』ようなのだ。
  人格は人それぞれ違う。だからこそ、人間は一人一人が違う。
  その人格が形成する一つの副産物こそ、この能力であるのだ。

  つまり何が言いたいかといえば、同じ能力が存在する場合、
  それは、全くの人格を持つこと以外ありえないということだ……。

  その結果を、昔一人の科学者が解明して世間に発表したのだ。
  そしてそれは今では、普遍的な当たり前の知識として存在している。



   「……そうだぜ。源次と黒川は明らかに違う。あまりにも違う。

   ————けどな、確かに俺と紫苑は見たぜ。この目で、はっきりとな。」


   「……。」



  それでもなお、柿原は言い放った。確かに同じ能力だった、と。
  だがそこで思わぬ結論を出したのは、最年長の花狩先生だった。



   「……類似能力、という可能性はあるな。お前ら、コーネリア先生知ってるな?」



  コーネリア。黒川達の英語を担当している先生だ。
  元はゲームの世界の人間らしく、黒川達もよく話を聞いている。
  ユニークで面白い先生だが、彼女にも能力が宿っている。



   「彼女も、『次元を超える能力』。いわば黒川と同じ能力だ。だが……ほんの少し違う。
    彼女と黒川君の相違点ももちろんある。例に挙げるなら……えっと……」


  言葉を詰まらせる花狩先生はチラッと黒川を見た。
  どうやらうまく説明できないから助けて、といった表情であった。
  そんな花狩先生の言葉を代弁するように、黒川は口を開く。



   「彼女にはタイムリミットは存在しない。私の能力みたいな30分だけ、という制限がない。
    対して、彼女は好きに自分の立場を変えることが出来ない。私と違ってな。」



  黒川は頭にイメージすることで、色々立ち位置を決めることが可能なのだ。
  例えば主人公になる事も可能だし、友達として存在することも可能なのだ。
  だが、コーネリア先生にはそれが出来ない。そこが二人の相違点だ。

  黒川が言い終わると同時に咳払いをした花狩が、もう一度話を戻した。



   「……と、このように、二人は微妙に違うんだ。だから『同じ能力』ではない。

   ————柿原君、その線はないか? 何か思い当たる点は?」


   「……残念だけど、とても相違点があるようには見えなかったよ。
    呪文も同じ、現象も同じ、タイムリミット30分もきっちり同じだ。」



  そこまで言うと、さすがの花狩先生も口ごもった。

  30分のタイムリミットまで同じというのは、いささか可笑しい。
  それは間違いなく、黒川の能力に類似しすぎている。

  数秒の無言の後、黒川は一度息を吐くと、口を開いた。





   「……とにかくその点は今は保留だ。追及しても分からない。とりあえず話を進めよう。」





  そう言うと、柿原は「そうだな。」と言って、さらに話を続けた————。