複雑・ファジー小説

Re: もしも俺が・・・・。『オリキャラ、アンケート募集中。』 ( No.158 )
日時: 2013/03/31 12:24
名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode



はい、どうもでございます。底辺の作者、ヒトデナシでございます。

たくさんのオリキャラのご応募に幸せを感じると同時に、
「ぐぬ、このキャラ、ここでどうやってどう生かすべきか……ぐむむ、」

……と、ニタニタしながら悩む毎日を送っておりますw 関係ない話でした。失礼しました。ww


さてさて、今回乗せようと考えたのは、なんと『黒水SS』です!!
いやー、皆様待っていた方も多いと思いますがね。 ←気のせい。

だが、驚くべきはそこではない。問題はもっと他にあります。



————それは、これは私ではなく、『他の作者様が書いた』という点である。




    …………なん……だと……!? ←一人で驚愕www


はい、そうなんです。これから下に書くSSは、
私が尊敬する作者の一人、『火矢 八重様』が執筆したモノでございます。
いやー、正直驚きましたw 度肝を抜かれましたねw

確かに私は、「皆様もぜひ、黒水のSSを妄想しちゃってください!!」
と、生意気にも言いましたが、まさか文章にする神がいるとは思いませんでしたw

と、いう事でさっそく、八重様の描いたSSをこちらに投稿しておきたいと思います。
八重様、本当にありがとうございました!! では、どうぞ!!







  『黒水ss By 火矢 八重様』
(※黒川と愛奈たんがであったばかりの話。甘くないよ! 何か微妙に暗いよ! キャラ崩壊してるよ!!w)




 ————夕焼けで赤く照らされた道には、真っ黒な自分の影が映っている。


 自分の影を踏まなければ、俺は帰路にたどり着くことは出来ない。けれど今は、その足を進める事が、私はとてもとても憂鬱だった。

 特に悲しいことも、辛いこともなかったハズだ。
 下級生がカツアゲにあっているのを見て、止める為に上級生と殴り合いはあったが、それは何時ものことだ。
 なのに、どうして今日は、こんなにも足が重いのだろう。


 独りは、慣れている。
 そう、誰も居ない家に帰るのは、別に苦痛じゃない。一人暮らしを俺は、結構楽しんでいる。
 親が居なくていい、という風には考えないが、この気に入っている生活は、きっと親が居れば手に入らなかったモノだと思う。どんなに分かりが良くても、毎日ケンカじゃ親を心配させてしまう。
 だから、いい。心配してくれる人も居ないままで。これでいい、のに。

 寂しいと、帰りたくないと想っている自分が居る。



  「……かわ君、黒川君!」


 は、と、我に帰った。
 横には、何時の間にいたのだろう。傍には、つい最近知り合った、水島愛奈が立っていた。
 水島の両手には、大きな買い物袋がある。どうやら、お使いに行った帰りらしい。


  「あっ……水島」

  「どうしたの? ずっと突っ立ってるけど……」


 ずっと?
 水島の言葉に戸惑った私は、思わず聞き返した。
 水島はそれに気付いていないのか、「うーんと……五十分ぐらいは立ってたと思うよ」という。


  「私が買い物に行くときにもすれ違ったんだよ。そろそろ帰ろうって思った時も、黒川君同じ場所で突っ立っていたから、どうしたんだろうって」


 水島の言葉に、俺は絶句する。
 そんな時間をかけても、俺は家に帰りたくないのか、と。
 どうしたの、と再び聞く彼女に、俺は、いやまあ、と言葉を濁した。家に帰りたくない、と素直に認めるのが嫌だった。
 認めてしまえば、寂しさを抑えていた理性が、崩壊すると思ったから。
 ここで認めてしまえば、もう、寂しさに見てみぬフリをすることが出来なくなると思った。
 けれど水島は納得しないようで、私の顔を見つめる。気まずくて、本音を吐き出しそうだったから、俺は水島に気付かれないように、視線を逸らしていた。
 やがて、水島が、「……買い忘れたかも」と呟いた。


  「黒川君! 私が戻るまで、絶対に動いちゃだめだよ?」

  「え?」


 俺が聞き返す時には、水島はもう既に走っていた。
 重そうな買い物袋を、必死に揺らしながら。
 その小さな背中を見て、俺は少し、不甲斐なさを感じた。
 私は、一人は楽だといいつつ、寂しくて家に帰りたくなくて、立ち止まっている間、
 彼女は、家族の為に、あの大きな買い物袋に、沢山沢山詰めていたのだろう。
 どんなに重くても、一人で、あのか細い腕で、足で、帰路を辿ろうとした。
 俺とは大違いだ。
 そっとついたため息は、夕日の光に照らされていく。




 ————彼女が戻った時、俺は二度目の絶句をした。

 何故なら、彼女は、今さっき持っていた量の三倍ものの買い物袋を持ってきたのだ。多すぎたのだろう、膨らんだ白いビニール袋を背負って歩く彼女の姿は、聖女(サンタマリア)というよりも——コカ・●ーラの赤いサンタさんの姿そのものだった。
 よたよたと歩く水島を見ていられなくなった俺は、彼女の元に駆け寄った。


  「だ、大丈夫か、水島!」

  「……大丈夫、買い忘れの分です、これ」


 ドスン、と買い物袋を置く彼女の顔は、少し青ざめていた。
 いや、絶対に買い忘れの量じゃないこれ!! ——そんなツッコミは、彼女の次の言葉によって、飲み込んだ。


  「黒川君!」

  「は!」


 珍しく水島が鋭い声を上げた。思わず俺は、姿勢を正す。
 キ、と水島が更に珍しく真剣な顔をしたので、俺は一体彼女がどんな言葉をいうのかと——期待と好奇心と微妙な恐怖があいまじって、構えた。
 一体、何を言うんだろう。というか、どうするんだろう。
 そして水島は、ハッキリとした口調でこういった。




 「今晩の料理は、おなべです!」

 「…………は?」


 思考が、固まった。
 予想外すぎる言葉だった。


  「だから、おなべです」


 けれど、俺の反応に構わず、おなべ嫌いじゃないよね? と水島は聞く。
 いや、そうじゃなくて。



  「……なんで急に水島家の献立を? というか、その買い物の量——」

  「え? これは勿論——黒川君の分だけど?」



 ……は?

 益々要領が得なくなった俺に、水島はいう。
 ゆっくりと、ゆっくりと。



  「おなべは、大勢で食べた方が美味しいよ」



 そうでしょう?
 そういってから、彼女は、フワリ、と笑った。



 最近、知り合った黒川君が、橋のところでずっと立ってた。
 買い物が終わっても、黒川君は同じところに立ったままで。ちょっと心配になって、黒川君の顔を覗いてみた。
 黒川君の顔は、纏う雰囲気は、何時も正直。
 更に夕日に照らされたせいか、それはどんなに誤魔化しても、判ってしまった。


 ————寂しいって、いえばいいのにって思った。

 そうしたら、黒川君を慕う人が、必ず助けてくれるのに。
 なのに彼は、弱さを決して受け容れない。認めているけれど、受け容れない。

 彼は、良い意味でも悪い意味でも、頑固だ。
 風紀委員に目を付けられても、自分の手が血で汚れても、自分の正義を突き通す頑固さも、でも寂しさをいけない、と思っている頑固さも。
 横顔は、全てを物語っている。彼のことをよく知りもしない私でも、判るぐらいに。

 その寂しさが、どうしても、放っておけなかった。

 真っ赤な夕日が、彼女の頬を、目を、髪を照らした。
 それは、優しくて、ぼんやりとしていて、でもとても暖かそうで。
 触れたら消えてしまいそうなその人は、それでも確かに笑っていた。

 綺麗だと思った。
 幸せの象徴だとも、思った。



  「うちにおいでよ。おなべ、美味しいよ」


 そう続ける彼女を見て、ふと思った。


  『そんな悲しそうな顔をしなくていいんだよ……?』


 血を、シミ一つないハンカチで拭ってくれた水島の声が、頭の中で反響する。
 水島は、私の孤独に立ち入るようなことはしていない。
 それでも、彼女は色んなことが判ってしまう子だった。
 それを、決して「気のせい」とか、「そんなハズはない」と思い直さない。気のせいじゃない根拠も確証もない、不安定な感受性のハズなのに、彼女は恐れずにいるのだ。現にあの時、「別にたいしたことではない」とハッキリいっておけば、彼女が私に向ける疑いは簡単に崩れた。
 私は、そんな恐ろしいことは出来ない。

 救われたような気がした。
 上手くいえないけれど、でも確かに救われたような気がした。


  「……半分、持つよ」

  「あ、ありがとう。でも、買い物袋は一つだし……」

  「片方を、持つから」


 強引に奪うような感じで、俺は片方の持ち手を持つ。
 微かに、彼女の柔らかい手が触れた。



 全身が熱くなったのは、夕日のせいだ。
 涙腺が壊れそうになったのも、きっと夕日のせいだ————。



    ———————— Fin ————————