複雑・ファジー小説
- Re: もしも俺が・・・・。『異世界に突入!!』 ( No.160 )
- 日時: 2013/04/01 19:12
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「パート3。」
————太陽が昇り始め、朝日が辺りを照らし始める。
時刻で言うと朝の6時頃。まだほとんどの住民が夢の中にいる時間帯だ。
早起きしている人なら、すでに起き始めて活動しているが、そんな人をほとんどいない。
そんな朝にも関わらず、『この世界』は人口的な光に照らされて明るかった。
照明が辺るところにあり、朝の6時だというのに、昼の様だった。
機械文明、魔力文明という、最先端の文明を走るここは、他よりも幻想的であった。
ファンタジーと思わせるほど、この世界では魔法が当たり前だった。
ビルに囲まれ、空にはタイヤもついていない空中移動が可能な『車』が音もなく飛び回っている。
道路という概念がなく、信号という概念もない。
ただ自動で全て動き、人工知能で判断するAIが付いている車は、
いわば人のいらない空飛ぶタクシーみたいなものだった。
当然事故になるという事もない。機械が何もかも自分で判断するのだから。
そしてここは、魔法が当たり前に使われる世界。
魔法ライセンスと呼ばれる許可証が存在し、それを持つ者だけが魔法の使用を許される。
当然許可証を得るのは難しい試験を突破しなければ獲得できないものの、
持っている者は『魔術師』として高い評価を得ることが出来るのだ。
その『魔術師』と呼ばれる存在は、ほんの一握りしかいない。数で言うと数十人。
それほどライセンスを取るのは、狭き門であると言えるのだ。
……そんな世界で、漆黒に身を纏う男は棒立ちしていた。
上下黒色の長シャツとズボンを身につけ、黒色の眼鏡が不気味に光る。
そして背中に漆黒のマント。背中のマークに、赤い文字で『D』と刻まれている。
天を仰ぎ、一息ついてから辺りをゆっくりと見渡した。
まだそこまで人はいないとはいえ、静かとも言えなかった。
男は『この世界』の住人ではないため、詳しくはないのだ。
「ああー……仕事かったりー。でもなぁ、『アイツ』は俺の管轄だから放置も出来ねぇし……。」
男ははぁ、とため息をついた。深く、めんどくさそうに。
ふとその時、男のポケットが音を立てて震えた。
震えたのは携帯で、間隔ごとにリズムよく震える。
どうやら電話の様で、男はボタンを押すと、耳に近づけた————。
「————あーい、もしもーし。こちらガロンっすわぁ。」
男、ガロンは気だるそうに語りかけた。
電話の相手は、同じDDD教団の仲間だった。多分『作戦』の最終確認だろう……。
『キャハハ、ガロン、どーおそっちはぁ?』
電話の主は女性だった。甲高い笑い声が一層ガロンのやる気を削ぐ。
「……元気だねぇ。おじさんはそんな元気ないわぁ……。」
ため息を一つ吐き、ガロンは答えた。
特徴的な笑い声がチャームポイントな彼女は、その笑い声を盛大に発揮して言葉を紡ぐ。
『キャハハハ!! 褒め言葉だわ。こっちも準備オッケーよん。』
「さようでございますかっと。わざわざ報告せんでいいぜぇ?」
『釣れない人。ちょっとは嬉しそうにしなさいよー。』
「あー嬉しいー。ちょううれしー。」
ガロンが棒読みに近い風に言うと、向こうから笑い声が飛んできた。
向こうの電話の主は上機嫌の様で何よりだと、ガロンは羨ましそうに思った。
『あー、そういえばぁ、一つだけ報告ぅー。』
ふと電話越しの女性が、陽気に言った。まるで無邪気に喜びを表す子供の様に。
そして理由はなんとなく分かった。それは……大概戦闘の事だ。
『————『リバース』が来るわよー。こっちにも、そっちにもね。』
「……はっはっは、そうかいそうかい。いいねいいねぇ。やる気出たわぁ。」
ガロンは思わず、ニイッと不敵な笑みを浮かべた。
ガロンの思惑通りだ。やっぱり戦闘の事だった。
『リバース』が来る。それはつまり、奴らとの『戦争』だ。
戦闘が大好きなガロン、そして電話の女性にとってはこれほどテンションの上がるものはない。
それはDDD教団全員に共通する、一種の闘争本能でもあるのだ……。
『って事で、お互いに楽しもうねー。じゃ、ちゃおちゃお。』
それだけ言い残し、電話越しから切られた音がツーツーと鳴り響く。
ガロンは数秒固まった後、携帯をポケットにねじ込んだ。
そして……震える様に笑った。身体を震わせて、全身で喜びを表現した。
まるで身体が躍るようにガロンを震わせ、高ぶらせる……!!
「来た来た……きたきたきたよ……この時がよぉ……。」
両拳を可能の限り握り絞める。ギリギリとすさまじい音が鳴る。
目はランランに輝かせ、笑みが溢れる様にこぼれ出す。
「早く来いよぉ……『リバース』。本気の殺し合いを始めようぜい……?」
我慢が出来ない身体を押さえられない。今にも人を無尽蔵に殺してしまいそうだ。
とはいえ、一旦落ち着かなければ。なぜなら、その前に『仕事』がある。
「いけねぇ」、と一言言うと、ガロンは無理やり闘争を抑え込んだ。
そして冷静になり、自分のまずやるべきことを再認識する。
『アイツ』が……聖なる力がついに来るべきところまで来た。
ここからは俺が大変になるなぁと思いながらも、ガロンはため息一つしなかった。
失敗は許されない。一つ一つ、順序を『歩ませなければ』ならない。
そして最後は……俺の命を使って————
「————待ってろよぉ……『ルエ』ぇ!!」
ガロンは『アイツ』の名を呼び、高らかに笑い声をあげた……————。
————————第17幕 完————————