複雑・ファジー小説

Re: もしも俺が・・・・。『銭湯回、女子編。』 ( No.176 )
日時: 2013/05/04 00:14
名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode


         「パート3。」




  ————そんな怪しいガールズトークが始まった直後、男子組でも怪しいトークが……



   「————キル・フロート。貴様はそれでも男か。」



  先ほど黒川は、キルがルエの事を好きだという事を聞いたのだった。
  とはいえ、黒川の巧みな話術によってキルが口を滑らしたのだったが……。



   「……黒川、お前なんか口調変わってね?」



  隣の霧島は一瞬黒川がキレてるのかと思った。
  なぜなら黒川が『貴様』などというのは決まってキレた時だ。
  とはいえ、その様子はなかった。むしろ楽しそうだった。無論、霧島もだ。



   「惚れた女がいるのなら、掴むのが男だろう。」

   「だっ……!! ち、違ッ、好きだとか、そう言うのじゃなくてだな……」

   「嫌いなのか?」

   「大好きだコノヤローッ!!」



  他に誰もいない事を良いことに、全力で叫ぶキル。
  それを聞いて満足なのか、黒川はうんうんと頷く。霧島はニヤニヤしている。



   「よし、それじゃあ女湯に突撃すっぞ!! 告白だぁ!!」

   「なぜそうなるッ!? 変態だろうがそれじゃあ!!」



  霧島の言葉にこれ以上の正論があるだろうかという程の正論でツッコむキル。
  むしろなぜこのタイミングで告白なのかと問いたいが、三人はすでに壊れていた。



   「良いのか!? テメェはそれでいいのかキルッ!?」

   「うぐぅッ……」

   「テメエの惚れた女がもしかしたら女湯で別の男に襲われているのかもしれねぇ!!」

   「なん……だと……!?」


  霧島のあり得ないシチュエーションにさえ、キルは本気だと信じざるを得ない。
  普段ならあり得ない、と一蹴出来る。だが今は違う。彼らは真正の変態である。


  壊れているのだ。もう遅いが、言っておく。今回は崩壊回である。

       【ヒトデナシは無関係である。】




   「いいのか!? 他の男に裸を見られてもいいのか!?」

   「ならぁぁああああん!!!! 行くぞ霧島ぁぁぁあああ!!!」

   「いよっしゃああああ!!!!」



  ザバーンと波を立てて立ち上がった霧島とキルだったが、



   「待てッ、待つんだ二人とも!! お前らは何もわかってはいない……。」



  一人冷静に語り始める黒川に、二人を耳を傾けた。



   「抑えろ。ここは抑えろ。脳神経にそれはあり得ないシチュエーションだと決めつけろ。」

   「なぜだ黒川ッ!? 今もこうしている間にルエは……」

   「考えろ。感じろ、キル。瞑想しろ。ルエは今何をしていると思う?」



  キルに静かに話しかける。キルは言葉通り、冷静になって頭を回転させる……。





   「…………平和に風呂を入っている、そう願いたい。」



  キルの結論に、黒川はうんうんと頷く。逆に霧島は「なぜだ!?」とキルに掴みかかった。
  霧島はもう完璧に、襲われている姿しか想像出来なかったのであろう。何せ壊れている。



   「気持ちは分かる霧島。だが良く考えろ。」

   「何をだよッ!?」

   「突入すれば、二人の裸を見ることになる。」

   「それがどうしたッ!! 万歳じゃねぇか!!」

   「バカ野郎ッ!!」



  黒川の叫びに二人は一瞬言葉を失った。そしてふぅ、と息を吐いて、




   「————ここで裸を見れば、それはゴールだ。男性が女性に求める理想のゴールだ。

   だがキル……裸を見るなら、お互いに気持ちが通じ合った時の方が感動すると思わないか?」


   「あ……」

   「お……おお……」



  二人は感動の声を漏らした。まるで神の言葉を聞いたかのようだった。
  黒川は二人に座るように催促する。落ち着けと言いたいのだろう。

  二人は一度頷くと、再び温かいお湯の中に身を投じた……。




   「……良い湯だな。友よ。」

   「全くだ、友よ。」

   「私達は同志だ、友よ。」



  三人は友情の大切さを心に刻み込み、少しの間余韻に浸っていた……————。


  (この回、なんでこんなに崩壊したのか、ヒトデナシも知りません。
   ただ一つ言えること、それは長期休み久々の投稿だったので、
   ヒトデナシのテンションがいつも以上に爆発していたことだ……。)






  ————その後、全員気持ち良いまま銭湯から出た。

  あの後男子組は友情を分かち、女子組も夜の心得を語り合った事もあり、なぜか清々しそうだった。

  とはいっても、銭湯に入る前と後では、明らかにルエとキルの反応が違った。
  お互いに目を合わせては顔を紅潮させ俯く始末。そんな様子を三人は楽しんでいた。
  とはいえ、私達との距離は確実に縮まったと言えるだろう。水島の提案は正しかった。
  それにキルから色々話を聞けたし、今後のDDD教団関連の方針も考えられそうだ。


  だがそんな中、黒川はとある事に気が付いた……。



   「……。」



  何か、可笑しい。何かが変な感覚。

  つねに時間に気を配っている黒川だからこそ感じた、特殊な感覚。
  衝動に駆られるまま、黒川は自身の腕時計に視線を落とした……。




   「……ッ!?」




  腕時計に目を凝らした瞬間、言葉を詰まらせ、思考が停止した。

  黒川の腕時計、これにはストップウォッチの機能もついている。
  黒川はつねに異世界に行くときにはかならず、時間を計っている。

  なぜなら、ここに滞在できる時間は30分。
  残り時間が何分かを確認するために、このストップウォッチを使用しているのだが、
  そのストップウォッチが、明らかに可笑しい時間を指している。それに気づいた黒川は、



   「おい、霧島、愛奈————」



  その事態を知らせようとした刹那の事だった————。






   「————ルエッ!! 奴が来るぞッ!!」




  キルがおもむろに叫んだ。キッと一点を睨み付け、そして臨戦態勢を取る。
  ルエも一瞬驚いたが、すぐに表情を真剣なものに変えた……。

  黒川達は、すでに話に聞いていた。
  ルエが狙われている。DDD教団によって、そしてその狙う人物こそが……






   「ガロンッ……!! 会いたかったぞッ……!!」



  目の前から現れる漆黒のベールから、闇を纏う様にして現れた『誰か』。
  上下黒色の長シャツとズボンを身につけ、黒色の眼鏡を身につける年の行ったおじさん。
  そして背中に漆黒のマント。背中のマークに、赤い文字で『D』と刻まれていた。




   「————よぉルエ。良い女になったじゃねぇかよぉ?」




  ガロンと呼ばれる、ルエにとっての宿敵が目の前に陽気な表情で姿を現した……。








  ————黒川の腕時計の時間は、こう記されていた……。



        00:41;56



  41分、56秒。これは『黒川達がこの世界に来てから過ごした時間の総時間』である。
  30分しか滞在できないはずの世界に、私は40分以上滞在していることになる。


  黒川がこの問題を解決することはなく、戦いはすでに幕を開いていたのであった……————!!



      ————————第19幕 完————————