複雑・ファジー小説
- Re: もしも俺が・・・・。『危険な二人。』 ( No.198 )
- 日時: 2013/09/09 21:34
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
————第22幕 『もしも俺が魔法が使われている世界に行ったのなら……5。』————
「パート1。」
「————おいおい……なんだありゃ……。」
リバースが到着したと同時に始まったルエの暴走。高らかに笑うガロン。
目の前で雷にも似た光を放つルエを前に霧島は頭をフル回転させた。
明らかに、今のルエは正常ではない。それは分かる。だがしかし————
「霧島君、ここは協力しましょう。」
ふとリバースの一人の小さい女性が丁寧な口調で言った。確かリオという愛称だったか。
リオは今暴れ出そうとしているルエの姿とガロンを交互に見て、
「僕達はガロンを担当します。霧島君は目の前の人をお願いします。」
「お願いっつったってなぁ……あれをどうやって止めろと————」
「すみません。時間がないのでさっそく始めます————。」
霧島の返事を聞くことなく、リオは地面に手を付け、静かに叫ぶ……。
「『全植物操 (ツリーマインド)』……!!」
瞬間、霧島とリオの間には植物の壁がそびえ立っていた……!!
榊とリオとガロン、霧島とルエという風に分散され、木々はさらに周囲から生えてくる。
木々はうねりを上げ、ガロンとルエを無数の木々で縛り、左右に分散させた。
リオはグングンと遠くなっていく双方を確認し、植物の壁の向こうにいるであろう霧島に、
「手を組まれては厄介なので離しました。そちらの処理は頼みます————。」
と言い残して、二人はガロンが飛んで行った方向へと早々と向かった……。
ポカーンと口を開けたまま、状況の流れが速すぎていまいちついていない霧島は、
「ええーいちきしょうがッ!!」
とりあえずルエを止めるためにルエが飛んで行った逆方向へと移動する……。
————そして今、霧島は一人で必死にルエを止めている……。
バリバリと雷の様な音を鳴らし、暴走するルエは正直強かった。
肉弾戦を得意とする霧島はルエに近づいて説得やら何やらを試みようとしたのだが、
ルエの操る雷にも似た光がまるで矢のように自分に飛んでくるのだ。
今の霧島は『能力』を使えない。スタミナ切れだ。
そして『能力』を使うと相変わらず後遺症が後々になって訪れる。
症状は頭痛。ダルさなどだ。一般的に言う熱と同じ症状だ。
もちろん今の霧島はその後遺症でかなり辛い状況だ。動きも鈍い。
接近はおろか説得さえもさせてくれない。回避で精一杯だ。
「……ちッ……勘弁してくれよルエちゃん……。」
相変わらずルエの周囲には雷が取り巻いていて、それが高速の矢のように飛んでくる。
当たれば多分無事では済まない。今の俺だと死ぬかもしれない。
黒川も水島もキルもいない。自分しか、今は動けない……。
「くそッ……男霧島、自爆覚悟で突進するしか……————」
「霧島ぁぁぁ!!!!!」
覚悟を決めかけていた霧島の背後から聞きなれた声がする。間違いない……。
こんなタイミングで現れる主人公補正マックスの奴なんてあいつしかいない……!!
「……ッ!! おせえんだよッ、黒川ぁぁ!! 死ぬかと思ったわッ!!」
霧島が半ば逆ギレ風に言いながら振り向くと、30m先には黒川と水島がいた。どうやら無事でよかった。
それでなければ、自分が必死に戦った意味がないというものだ……。
「……アアアアアアアアアッッ!!!!!!」
突如、ルエは奇声にも似た声を上げた。霧島は知ってる。それは攻撃の合図。
ルエの周囲がバリバリと音を立て、眩いほどの光が視界を覆う……。
「しまッ————」
霧島が危険を教えるのには遅かった。すでにルエは攻撃態勢に入っている。
ルエの右手には光の矢のようなものが握られており、今にも放たれようとしている。
狙いは……霧島の後ろにいる二人だ……!!
「逃げろッ、二人ともぉぉッ!!!」
霧島が叫んだと同時に放たれた光の矢は、霧島の隣を通り過ぎる。
それは真正面に二人の元へ伸びていき、地面を抉る。
「……————!!」
黒川は間に合わない、と判断した。
今からシャイニングブレイドやら出しても弾けないだろう。無力化するのは難しい。
咄嗟に黒川は水島を抱き寄せて、背中を向けた。
自分よりも彼女を守る事が先決。これで死ぬなら仕方がない……————!!
「————はあああああああっッ!!!!!!」
突如、大きな咆哮と共に何かと何かがぶつかる音がした……。
ギリギリと音がする。鉄の音。そして何かが弾かれる音。
光り輝く光の矢は放たれた方向とは違う方向に飛んでいき、地面に落ち、破裂した。
破裂したと同時に爆発した光景は、まるで原子爆弾が落ちたかの様だった……。
とはいえ、黒川達に傷は無い。不思議に思い、振り返ると————
「————大丈夫か、黒川、水島。」
キラリと光る剣を片手に持った、キル・フロートがそこにいた……————!!