複雑・ファジー小説

Re: もしも俺が・・・・。『フィーダと那拓。』 ( No.215 )
日時: 2013/12/12 00:19
名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)




       「パート2。」




  「————さて両人。さっき聞いた会話を拾わせてもらうと、おたくさんらも『魔女』を倒すのが目的でいいんだな?」


 落ち着きを取り戻した那拓とフィーダは源次の話を聞くと、満足げに頷いた。

  「その通りだ。そんでさっき言いそびれたが、私達はあんたらと協力したいと思っている。」

  「俺が君たちの心を読ませてもらった時に『魔女』を倒すと聞こえてきたもんでね。だからこうして近づいた」

  「おたくさんらも『魔女』を倒すことに賛同しているととって異論はないねぇ?」


 源次の言葉に反論を抱くものはいなかった。それを満足げに確認した後、源次はどうしても聞きたいことがあった。


  「おたくらは何故、『魔女』を狙う?」


 これが一番源次にとっては大事で聞きたかったことだ。

 源次達は『魔女』がDDD教団であるという可能性、世界が危機になる可能性を見越しての事だ。
 異次元のゆがみを空けたのがその『魔女』だとすれば、確実に何かしてくるはずだ。
 だが那拓とフィーダは源次達が思う斜め上の事を言い出した。


  「奴は世界をかならず歪ませる。だからそれを止めるためだ。」


 てっきり私情でもあるかと思ったら、思わぬ理由であった。
 世界を歪ませる? 確かに源次達もそう思っている。しかし、


  「なぜそう思うんだよ?」

  「深い理由はねぇよ。勇者のカンだ。」

  「勇者—? カンー?」


 柿原の質問にフィーダの口から漏れ出た勇者の言葉を紫苑が復唱すると、
 那拓はそこで口を割り込ませた。そこで告げたのは驚く一言だった。


  「こいつはこう見えてもこの世界での勇者そのものなんだよ。」


 勇者そのもの。それはつまり、この世界での『主人公』というわけか。
 確かに姿はそんな気がしないでもない。子供っぽい言動はさておき。


  「そんでもって、こいつの悪に対するカンは驚くほど鋭くてな。『魔女』はその権化なんだと。」


 確かにスラリンの証言となんとなく一致はする。
 この世界で実験を繰り返し、魔物を改造する『魔女』。確かに悪の権化と言える。
 ということは、簡単に言うと物凄いシンプルな答えじゃないのか。


  「それじゃああれか、世界を平和にするために悪を滅ぼすのが目的、という事なのね」

  「それが勇者の務めだ。」

  「……お堅いこって、勇者様。」


 フィーダに向けて呆れ顔を向ける源次。まさかただの悪役退治の気分だったとは。
 とはいっても協力してくれるというのであれば、こちらから拒否する理由はない。
 柿原も紫苑も特に反論の声はないみたいだし、ここは手を組んでおくのが得策か。


  「そんで詳しい事は分からんが、どうやら源次達もほとんど同じ理由みたいだな。」


 心を読んだ那拓は微笑して言った。確かにその通りであった。
 状況は違えどほぼ同じような事だ。源次達も根本にあるのは世界平和なのだから……。


  「……了解した。時間もねぇので、そんじゃあ共闘と行きますか。頼みますぜ、姉さん、青年!!」

  「那拓って呼べよ……。自己紹介した意味ねぇー。」

  「おい源次!! その姉さんっていう不良の頭みたいな呼び方なんとかなんねぇのか!?」

  「わーい、賑やかになったよスラリーん」

  「『魔女』はこっちズラ。案内するズラ。」

  「……今度こそ人外のバケモノとご対面かー。ダリい。」



 こうして変則勇者ご一行は『魔女』との対面を果たす為に足を進めるのだった……————。










 ————同時刻。木々に囲まれた森林地帯にて、爆風が辺りを散らした……。



 森にいる魔物達は爆音に驚愕し、辺りに散っていく。
 煙は辺りを充満し、その場にいた者達の視界を奪う。
 太陽も入らないこの森林では、煙は霧の様な働きをする。とはいっても、これでは前も見えない。

 派手な爆音できっと周りの魔物達はいなくなっただろう。好都合だと一人の青年は思った。

 その青年は騎士が被る様な白い兜を着け、白いマントを背中に羽織っていた。
 そのマントには、丸の中に星形が赤く書かれた紋章が大きく描かれている。
 これは我が組織、リバースの正装であるが今は煙で兜を脱ぎたくなった。
 衝動に任せて兜を脱いだ。正直暑い。こんなものを一年中着てられるかと言いたい。



  「————レオン、サラ、無事なら返事をしろ。」



 兜を脱いだ青年の声は以前よりも格段に透き通って聞きやすい。
 とはいっても自分の撒いた手りゅう弾のせいでこうなったのは自覚しているが。
 兜を脱いだのは自分だけではないはずだ。自分の仲間である二人も脱いでいるはず。


  「こちらサラ。問題ないわ。」

  「こちらレオンだ。……てか、無事か聞くならいきなり手りゅう弾投げるなよッ!!

   ……本当、てめぇは前置き無しで容赦ねぇな。————『徳宮』。」



 『徳宮』と呼ばれた青年は微笑して後ろにいた二人に微笑みかけた。


 ————フルネームは、『徳宮 征一 (とくみや せいいち)』。

 身長は170cm。兜を取った顔立ちは整っており、くせ毛の黒髪を短く切って清潔感がある。
 そしてどこから出したのか、霧が晴れるといつの間にかグレーのキャスケットの帽子を被っている。
 この三人の中で一応指揮を執ってるのは自分だ。多少の唐突さは許される範囲内だ。

 とはいえ、自分が振り回す側に立つのは珍しいなぁとつい感慨深く思ってしまう。
 いつも自分は振り回されてばかりだった。そう、幼馴染に……。



  「————キャハハ、びっくりしたじゃないのー。いきなり爆破なんてさぁー。」


 煙の中に高らかな声と共にうっすらと宙に浮かぶ影が一つ見える。
 その影は人影と呼ぶには不気味すぎる。霧が晴れるとその姿はさらに不気味さを増した。
 身長は約160㎝の女性だろうか。髪は金色で地面につくほど長いストレート。瞳はピンク。
 背中に翼が生えていて、全身赤く染まっていて、白い布きれを全身にまとっている。
 手りゅう弾をまともに食らったはずだったが、その姿に傷は一つも見えない。
 人外と呼んでちょうど良い程の不気味さと人間離れした姿だった。


  「さっきからそこの君、必死ねぇー。何? 守りたい人でもいるの? キャハハ!!」


 その人外は明らかに徳宮に向けて質問していた。人外にしては鋭いなと思った。
 そう、僕には守りたい人と世界がある。だからこうして人外とも戦う。


 たとえ自分の手が血で染まろうとも————



  「————僕の幼馴染と親友を守るためだ……!!」



 握りしめたハンドガンを人外の脳天に狙いを定め、引き絞って3回トリガーを引いた……————!!