複雑・ファジー小説
- Re: もしも俺が・・・・。 ( No.25 )
- 日時: 2013/02/16 11:51
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「パート3。」
「————黒川、これでよかったのか?」
重苦しい空気だった風紀委員室を出て、二人は解放感を味わいつつ、
自分の教室に戻る廊下で、霧島がふと口を開く。
分かっている。これで私達は正真正銘、風紀委員会にとっての『敵』になったのだから。
私達が暴力を振れば、彼らは容赦なく介入してくるだろう。
以前はなんだかんだで、私達がやったことが『悪い事』ではなかったため、罰も軽いモノであった。
だが、私達が暴力を『無断で』振るっている事実は変わらない。
これだけでも、風紀委員会の粛清の『対象』となりうるのだから。
「今度はもしかしたら、あの白九と一戦やり合うかもしれんぞ、霧島?」
「げッ、それは勘弁!! 楽しそうだが、女が相手だとどうもなぁ……。」
冗談半分、本気半分で黒川が言うと、苦笑して霧島は答える。
粛清の対象になるって事は、私達も粛清を受けるという事だ。
つまりまぁ、それもあり得ないことではないのだ。
まぁ、もしそうなりそうなら、私達が出来る最善の策は、『逃げる』だ。
別に勝てないから、ではない。罪を軽くするため、だ。
もしも私達が風紀委員会と一戦交えれば、それは確実に『悪い事』になってしまう。
私情で暴力を振るう輩と変わらない、ということだ。
それは私達の正義に反する行動だ。控えなければな————。
「あ、黒川君、霧島君。風紀委員会の呼び出しの用は終わったの?」
教室に戻る廊下の途中で、本を両手に抱えた水島が声をかける。
三冊ほどの本を抱えている。相変わらず本が好きなのだな。
「あ〜腹減った。黒川、飯食おうぜ〜。」
霧島の腹のタイマーがうるさく鳴り響く。かくゆう私も、腹が減って仕方がない。
なんせ昼休みを迎えたと同時に風紀委員室に向かったのだ。昼飯は食べてない。
「あっ、そのことなんだけど。紫苑さんと柿原君が、二人の分の飯も買っておいたから屋上に来てだって。」
「紫苑ちゃんと召が? ナイス、じゃあ行こうぜ!!」
霧島の先ほどまでの重い足取りはどこへ行ったのやら、と思わせるほどの軽い動きで先行する。
ふと、黒川は水島が本しか持っていない事が気にかかった為、質問をする。
「水島は飯を買ったのか? 見たところ持っていないみたいだが……?」
「ううん、屋上に置いてきたの。それで図書館で本を借りた後、黒川君達を迎えに行こうと思って。」
「今に至る、ということだな。」
水島はニコッと笑って頷く。前にいる霧島は昼飯が楽しみすぎて、鼻歌を歌っている。
屋上に行く途中の階段のところで、水島の持つ本が気になったため、
「水島、その本は私が持とう。重いだろう? 階段だと辛いだろうしな。」
「えっ、でも悪いよ。それに……重いよ?」
「だったらなおさらだ。気にするな。私も興味があるしな。」
水島が申し訳なさそうな顔をしているが、私はスッと水島の持つ本を持つ。
ふむ、思った以上に重くない。問題ないな。
水島が「ありがとう。」と礼を言ってきたので、私はニコッと笑顔で返す。
本当は水島の「ありがとう。」が可愛すぎて心臓がバクバクだということは内緒だ。
あくまで紳士に、冷静でいるのが私のスタイルだからな。
“それにしても、様々なジャンルの本があるな。”
推理小説、ファンタジー系小説、そして恋愛小説。
最後の恋愛小説というのは意外であった。水島もこういうのを読むのか、と。
……まさか、すでに意中の人がいるとか!? いや、それはない、たぶん。
それにまだ分からない。あくまで推測にすぎない。質問するわけにもいかないしな。紳士だからな。
そうだ、余計な詮索はいけない。プライベートに踏み込むのはダメだ。紳士だからな。
そう、紳士だからな。紳士……紳士、しん————
————————。
“…………それとなく聞いてみるか。”
結局、人は一度火が付いた好奇心には逆らえない、
欲望に満ちた存在なのだと、黒川は当時語った。
その後、屋上に着いた私達は、紫苑と召に合流し、束の間の昼休みを楽しんだのであった————。
————そしてその後、黒川達の授業は平穏に進んでいき、下校時刻になった頃であった。
学校から1km程離れたビルの頂上で、学校を一心に見つめる人の姿。人影は3人。
騎士が被る様な白い兜を着け、白いマントを背中に羽織る。
そのマントには、丸の中に星形が赤く書かれた紋章が大きく描かれている。
風でパタパタとマントを揺らし、一人がふと兜越しから呟く。
「彼が、話に聞いていた黒川か。情報だと、今日彼は『力』を使うみたいだが?」
1km先の学校の一室にいる、黒川を見てそう呟く。声からして男のようだ。
「みたいだな。奴が、『あいつら』の言う例の『鍵』ってやつか? そうは見えないがな。」
もう一人が答える。こちらも男のようだ。低音の声がどこか大人らしさを感じる。
「間違いはない。とにかく、『あいつら』の言うとおり世界を崩壊させる元凶となりうるならば、
最悪は始末するしかないな。」
「だが、それが本当かも定かじゃないだろ。様子を見て、本当なのかを確認するしか————」
そこで、男は会話を中断する。『何か』を感じ取ったのだ。男は辺りを見回し、
「……どうやら『あいつら』の登場みたいだ。」
男はふと後ろに振り返る。それにつられて他の二人も振り返る。
そこには、黒く、まるで闇に包まれてるかのような、空間が姿を現す……。
そこから出てきた、一人の『バケモノ』……!!
「————何の用だよッ、『DDD教団』ッ!!」
そして時の歯車は、動き出す————。
————————第3幕 完————————