複雑・ファジー小説
- Re: もしも俺が・・・・。 ( No.29 )
- 日時: 2013/02/12 21:39
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
“サブストーリー 『交差する二人』”
「前編」
————これは『もしも俺が』、が始まる前に起きた、元地山中学校に入学した時の私の物語。
私、黒川は『元地山中学校』に入学した。
私の家から近いというのもあったし、この辺で有名な学校でもあったからだ。
一年B組。それが私の中学初めてのクラスルームだ。
同じクラスメイトとして、私の小学校からの友人である、『霧島 勇気』がいた。
はしゃぐとうるさい奴だが、知り合いがいたことには少し安心した。
そんなこんなで、私はまずは一ヶ月間、特に何もすることなく学校生活を過ごした。
皆、入学して一ヶ月間はそんなものだ。隣になった人に話しかけ、友達関係を作っていく。
皆不安なのだ。孤独になるのは怖いものだ。私もいつの間にか、友人に恵まれるような環境にいた。
そんな他愛もない学校生活を送っていた、ある日のこと、
「なぁ、水島愛奈ってどう思うよ?」
霧島がふと私に言った。何をいきなり言っているのか。そもそも誰なのだそいつは?
「知らねぇのか? ほら、最近噂になってるやつだよ。」
噂……? ああ、そういえば、と私はふと思い出した。
最近、男子生徒の中でちょっとした噂になっている女性、『水島愛奈』。
頭も良く、運動神経も良く、さらに容姿も良し、
さらにさらに性格も良いと、完璧な女性と評されるほど完璧な女性。
今まで何人もの男子生徒がアタックしていったらしいが、無惨にも玉砕されたそうだ。
そして驚いた事に、その完璧少女は私の席の隣だったのだ。今まで気付かなかったよ。
隣にいるのに名前を知らないなんて私はどれだけ失礼なのだろう。その点は謝罪したい。
だがまぁ————それがなんなのだろうか。
私はあまり恋愛というものに興味はない。自分でいうの何だが、縁がなかったわけではない。
私の事を好きになってくれた女性は今まででも沢山いた。
けれど、私はそれに答えられないだろうと分かっていた。
中途半端というのを私は嫌う。仮に恋をするのであれば、私は全力でしたい。
全力で誰かのことを愛し、そして一生を共にしたい。
私が望む恋というのは、しいていうならそういうことだ。
だから私は今まで振り切ってきた。私が恋を始める時は、私が誰かを本気で好きになった時だけなのだ。
おっと、失礼。話が逸れてしまった。今は水島愛奈の話だったな。
だからだな、結論をいうとだな、霧島に対して答えを返すのならば、
「……別に。」
ただ、これだけだ————。
————そして更に日が経つ。相変わらず水島愛奈の噂は絶えない。
一部の人間からは『聖女』なんて言われ始めているらしい。大げさだ。
……それにしても、真面目な子だな。
授業はキチンと受けている。宿題もちゃんと出している。
暇な時間は何やら本を読んでいる。小説だろうか?
基本的に一人でいるところが目立つ。あまりワイワイするのは好きではないのだろうか。
「あれが噂の水島ちゃん? 可愛いねー。」
確かに可愛いのは可愛いな。他の女子生徒よりも一歩抜き出ているな。
「ボクもまぁ可愛いけどねー。そう思うでしょ?」
……ソウダナ。オレモソウオモウヨ。
「ところで黒川クン、もしかして水島ちゃんに一目惚れ?」
バカをいうな。噂になっているから少し気になっただけ————
……!? この喋り方は————
私がそっと振り返ってみると、そこにいたのは私の小学校からの友人の一人である、『賀茂紫苑』。
いつの間に私の後ろにいたのだ。いや、そもそも君はクラスが違うだろう。
「あはは、本当にそうかなぁー? まぁいいやー、帰ろうよー黒川クン。」
そう言えばもう下校時刻になっていたな。そうだな、帰るか。
「霧島クン、柿原クンも校舎の出口で待ってるよ? 早く早くー。」
そう急かすな。慌てなくても今————
……いや、どうやらそうはいかないようだ。
「すまない、紫苑。先に3人で帰っていてくれ。」
「……黒川クン?」
私は見てしまった。この学校だけじゃない。どこの学校でもあるであろう、裏の姿を……。
私は紫苑をその場に残し、教室を出て、早足で廊下を歩く。
紫苑にはすまないが、私はこのまま帰るわけにはいかない。
私が見てしまったのは、『いじめ』。
3人ほどの上級生が、下級生からカツアゲするという場面をちょうど窓から見てしまった。
私はこのまま帰ることが出来た。だが私の正義がそれを許さない。
霧島も大概正義感が強い方だが、私も負けじと強い。
まぁ奴みたいに問答無用でボコボコにするような輩では私はないがな。
そして気付けば私は上級生3人の前に立ちふさがっている……。
「————なんだお前は? 邪魔なんだけど。」
当たり前だ。邪魔してるのだから。出来ることなら説得して丸く収めたいところ。
あまり喧嘩には発展させたくはない……。
「……お金を取ったのは分かっている。大人しく返してあげてくれないか?」
私は無駄な言動は避け、率直に言い放つ。これで丸く収まってくれれば、
「そっかぁ。見てたのかぁ。それじゃあ仕方ねぇなぁ————」
これで丸く収まってくれれば……
「おい、痛め付けてやれ。」
……やはりそうはいかないか。
奴らはパキパキと腕を鳴らしながら、ゆったりと近づいてくる。やれやれ、結局こうなるのか。
向こうは3人。上級生みたいだが、
「仕方あるまい————。」