複雑・ファジー小説

Re: もしも俺が・・・・。 ( No.32 )
日時: 2013/02/12 23:32
名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode




          「パート2。」




    光に包まれた扉を開き、中へと入っていけば、

   まるで星が降り注ぐように無数の光が通り過ぎる空間にたどり着く。心が温かく、落ち着くようだった。




  ————ほんの数秒後、その空間は消え、気付けば私はどこかの部屋にいる。



  回りを見ると、本棚や机、押し入れがあり、下を見ればその辺に漫画や遊び道具が転がっている。
  床は畳で、自分が立っている場所が、どこかの家の二階なのだと悟る。


   その場所こそが、のび太君の家なのだ。



   「……そうか、ここがそうか。そして————」



  もう一つ気が付いた事、それはこの場にいたのが私一人だという点。霧島と水島はいない。
  どうやら私の力がまだ不安定だったせいで、違う場所に飛ばされたらしい。
  この世界のどこかにはいるはずなのだが……。


  ふと、私がのび太君の机に触れようとした時だった————。




   「どうしたんだい、黒川君。」




  聞き覚えのある声が私を呼んだ。私の背後、窓がある方向から聞こえた。

  ……呼んだのは誰か、もちろん私には分かっている。
  基本カラーは青。その愛らしい姿に子供たちは愛着を持ち、そして様々な道具を持つ憧れの猫型ロボット。




   「————やぁ、ドラえもん。」



  私の目の前に、確かにその姿があった————。












   ————同時刻、霧島と水島は公園にいた。



  土管が並べられ、はたしてここは公園と呼べるのかというほど殺風景である。
  少し肌寒い風が二人の間を吹き抜ける。その時、霧島はある事に気づく。



   「ここ、知ってるぜ。のび太君達がよく集まる公園だ。」



  霧島は土管に飛び乗り、その感触を確かめる。水島も土管に寄り添い、空を眺める。
  特に騒がしいわけではなく、心が落ち着くほど静かであった。



   「静かだね。私、てっきりもっと賑やかだと思ってた。」

   「賑やかに感じるのは、のび太君が色々問題に巻き込まれるからだろ。」


  霧島は陽気に笑う。水島もそれにつられてクスッと笑う。



   「ところで黒川君はどこに————」


   「おーい、霧島ぁ、水島ぁ。そんなとこで何やってんだぁ?」




  公園の出入口の方から、大声でこちらを呼ぶ一人の男の子。
  ポッチャリ体系の彼の手には野球のグローブとバットが握られている。

  名前はジャイアン。確か本当の名前は、剛田 武だ。



   「一緒に野球しようぜー。」



  ジャイアンの隣にいる背の小さい男の子、骨川スネ夫は言った。
  彼もジャイアンと同じく野球をしに行くようだ。

  そもそも、なぜ二人とも俺たちの名を————?



   「……そうか、確か俺たちはこの世界では、のび太君の友達として存在してるんだっけか。
    だから奴らは俺たちを知ってるのか。なるほどなるほど……。」


  霧島にしては、珍しく頭が冴えていたようだ。水島も納得したように頷く。



   「おい、のび太ぁ!! 急がないと河川敷で試合が始まっちまうぞ!!」



  ジャイアン達は後ろで走る少年に構わず、公園から立ち去るようにどこかに走っていった。



   「あーん、待ってよぉ。置いてかないでぇー!!

    ————あっ、霧島君と水島ちゃん。君たちも野球するの?」



  ジャイアンの少し後ろからようやく走って追い付いたと思いきや、
  すぐさま置いていかれて、今はハァハァと息を切らして俺たちの前にいる男の子。


   ————彼こそ、この世界の主人公である、のび太君だ。


  運動も勉強もダメ。運もついてないという不遇っぷりをもつ主人公。全く主人公には見えない。
  そんな彼にも得意な事はあるのだが、それはまた別の話。



   「ねぇ、霧島君。せっかくだし野球しに行かない? このまま何もしないのは勿体ないよ。」


  水島がふと提案する。確かにな。せっかくのび太君達と触れ合えるチャンスなんだ。
  黒川がどこにいるかは分からないがまぁいいか。それに、やっぱ身体を動かさないと————♪



   「……だな。よし、行こうぜ水島ちゃん!! うー、楽しくなってきたぁ!! Yheaaa!!!」

   「うん!! ————というか霧島君、なんだかいきなり元気になったね。」

   「じゃあ僕と一緒に行こうよ。河川敷へ。」


  霧島は土管から飛び降り、水島とのび太君と共に公園を後にする。


  そして3人はジャイアン達の待つ、河川敷に向かった————。













   「黒川君、今日は確か僕の秘密道具の見学にきたんだったよね。」



   ————視点は変わり、ここは再びのび太君の部屋。


  黒川はドラえもんと向かい合うように座り、コクリと頷く。
  無論、私はこの世界ではのび太君の友達としてキャラ付けされているため、不法侵入では決してない。

  ちなみに、以前にも言ったが、実は設定を付け加えておいた。
  それは、『私は今日、ドラえもんの秘密道具を見学しにきた』という設定だ————。

  これによって、私は確実にやりたい事を実現させることが出来る。
  だがその分、頭を使ったため少し疲れたがな。



   「何か希望はあるかい? 希望があれば出してあげるけど?」


  ドラえもんはニコッと笑って自分のお腹にある白いポケットをポンポンと叩く。
  そのポケットこそ、幾千の道具が詰め込まれている、四次元ポケットと呼ばれるものだ。

  あの中に私の見たいものも入っているのだ。



   「そうだな、まずは定番のモノを出してもらおうかな?」

   「うん? それはなんだい?」



  ドラえもんが尋ねると、黒川はフッと笑って言った。






   「『タケコプター』、さ————。』