複雑・ファジー小説
- Re: もしも俺が・・・・。 ( No.35 )
- 日時: 2013/02/12 23:38
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「パート3。」
————『タケコプター』。ドラえもんの代名詞とも呼べる道具の一つ。
頭に装着すれば、プロペラが高速回転され、その遠心力を使って装着者の身体を浮かせる。
そして自由自在に空を飛べることが出来るという、代物だ。
科学者として、乗り物に乗る事なく、生身のまま空を飛ぶというのは憧れ。
そして黒川もまた、そんな憧れを実現させようという気があった。
私はまずは自分が履いていた靴を手に取り、ドラえもんの前に置く。
一見ただの靴に見えるだろうが、じつはかなり珍しいもの。
黒川が開発し、一定時間空を飛べるように靴を改造した黒川自信作、通称、『エアブーツ』だ。
靴の側面部分にスイッチがついており、起動させると、
靴の裏側、側面から多大な空気が放出され、身体が浮き上がる。
仕組みは電気エネルギーを風力エネルギーに変えている。つまり電気を使っている。
放出される空気の力は一定ではなく、地上で例えるならば、地面を蹴りあげる力が強ければ強いほど、
空気は放出されて、早く動けたり、高く飛べたりする。
この場合は空中を蹴りあげることになるのだ。まぁイメージしづらいかもしれないがね。
タケコプターほど自由自在な動きは出来ないが、それでも瞬間速度は遥かにこちらが上だ。
黒川がやりたい事は、つまりタケコプターを参考にして、このエアブーツを改良したいということだ。
では、タケコプターの何を参考にし、どこを改良する必要があるのか?
それは一つ。タケコプターの持続性だ。
エアブーツは残念ながら5分程度しか使うことが出来ない。エネルギーが切れれば充電するしかあるまい。
だが、タケコプターはそれの何倍以上も使用することが出来る。
風は常に一定量の放出なので、エアブーツよりも持続性が高いのは仕方ないのだが、
それでも、科学者としてせめてもう少し使用時間を伸ばすようにしたいのだ。
「ふむ、この構造がこうなって、こうでこうだから————」
黒川はドラえもんが出してくれたタケコプターを手にとって、まじまじと見る。
さっきからこれがこう、などの訳の分からない事ばかり言っているため、
ドラえもんは何も言わず、只々苦笑するしかなかった。
「でも黒川君、僕にもタケコプターの構造なんて分からないよ。
なのに改良なんて無理なんじゃないかい?」
「いや、ドラえもん。科学者は無理を可能にしての科学者なのだ。
たとえ他が無理だと言おうとも、私は成功させてみせるよ。」
無駄にカッコよく言ってみたものの、正直難しいのは事実。やはり外面を見ただけではわからない。
……いささか気が進まないが仕方あるまい。これしか方法がないのだ。
「なぁ、ドラえもん————」
黒川が言い放った、この次の一言は、ドラえもんを驚愕させ、しばらく唖然としたという。
そしてなおかつ、誰も知らないドラえもんの秘密道具の秘密に触れることになる一言であった……。
その問題の発言が、これだ————。
「————これ、バラ(解体)してもいいか?」
もはや子供が見るような番組ではない雰囲気が、のび太の部屋から漂っていた……。
————場面は変わり、ここは河川敷。
霧島と水島は、突如現れたジャイアンとスネ夫に野球に誘われ、
後に合流したのび太君と一緒に河川敷に行く、というのが前回までのお話。
そして現在は————
「霧島ァ!! かっとばせぇ!!」
ジャイアンが声を張り上げて叫ぶ。そう、もう試合は始まっている。
そして今バッターボックスに立っているのが……、
「任せろぃ。四番、ピッチャー、この霧島勇気がコールド勝ちに導いてやるぜッ!!」
この通り、霧島である。バットをブンブンと回し、スッとバットではるか遠くへ指す。
「狙いは大気圏突破。ボールがそのまま宇宙に飛んで行っちまうぐらい飛ばしてやんよ!!」
この通り、バカである。それが出来ればもはや宇宙人のレベルだ。
さてさて、相手のピッチャーである小学生VS現役中学生、霧島勇気。
相手のピッチャーは小学生にしてはかなりの腕前の持ち主。
持ち球はストレート、フォーク、カーブ、シュートと、まさに高校球児並みの球種の多さ。
ジャイアンたちも、打つのに手こずっているほどだ。
一球目、ピッチャーは振りかぶって……投げた。
コースはギリギリ外角の下の方。球種はストレート。見送るか打つか、判定の難しいところ。
————だが、このバカは『見送る』という単語を知らない。
「うおおぉぉぉッッーーーー!!!!
必殺、『シューティングスターライトホスピタル (注、直訳すると、『病院の流星光』)』!!!」
そんな訳の分からない事を叫んでいるが、だが、霧島の振ったバットはボールを芯で捉えた。
ボールは勢いよく飛んでいき、外野の頭を軽く飛び越えて行った。
……一応、ホームランであった。相手のピッチャーも唖然として声が出ない。
「うぉぉおお!! よくやったぞぉ霧島ァ!!」
「凄いよ霧島君!! あんなに飛ばした人初めて見たよ。」
霧島がグラウンドを一周し、ホームベースを踏んだ後、チームメイトが総出で出迎えた。
ジャイアンは大喜び、のび太君も尊敬の目を向けていた。そんなのび太君と霧島はハイタッチをかわす。
「次の次のバッターお前だろ? お前なら出来るぞのび太。
思いっきり振れ。そうすればボールは自然と吸い付いてくる。」
霧島は二カッと笑ってのび太君に言う。のび太君もこの一言で火が付いたようで、
「分かった!! 頑張るよ!!」
と言った。だが、その前に霧島の次のバッターは————
「よっしゃァ、続けよ水島ァ!!」
なんと、水島愛奈、彼女であった————。
————————第4幕 完————————