複雑・ファジー小説
- Re: もしも俺が・・・・。 ( No.51 )
- 日時: 2013/02/13 00:31
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
「パート3。」
「————ぎゃあぁー!! 誰—!? どなた様!?」
「どうも。お嬢さんの心の天使、紳士という名の変態でございます。」
「……紫苑。こいつは想像以上にめんどくさい奴がきだぞー。関わらない事をお勧めする。」
————ペコッと丁寧に頭を下げる自称『変態』。
それを戸惑った表情で見る紫苑と、警戒の眼差しを向ける柿原。
身長173㎝程。髪はパイナップルの如く髪型をしており。長い髪を青いヘアバンドでとめている。
その髪の色は琥珀色。瞳の色は黒。
服装は、黒い長そでの上から青い陣羽織を羽織り、下も黒色のシンプルな長ズボン。
時代を感じさせるような服装で、まるで武士のようだ。そのせいか、妙に大人っぽさを感じる。
「えー、そんなこと言わないでよ〜。ほら、ちゃんと自己紹介すっからさ。
俺ちんは『瓦 源次 (かわら げんじ)』。14歳。独身よ?」
「あー、んなことは分かってる。めんどいヤローだな。」
柿原ははぁ、と深いため息をつく。そんな柿原をお構いなしに、さらに紫苑に突っかかる。
「ねぇねぇお嬢ちゃん。どうよ? 今からちょっと俺様と夜の営みでも?」
あのなー、まだ夕日も沈んでいないのだが? いきなり下ネタかよ。
「それとも、今からお酒でも飲みに行く? 俺ちんいいお店知ってるよー?」
お前も含め、ここにいる全員未成年なんだが?
「嬢ちゃん、スリーサイズはいくらだい? いい身体してるね〜。」
————————。
「嬢ちゃん、今日一日俺様と過ごすってどうよ? もちろん夜は————」
「……もうやだ。鬼さん、こいつ殺っちゃいな。」
パチンと柿原が指を鳴らすと、空間のねじれから一匹の恐ろしい顔つきをした『鬼』が……。
体長は2メートル以上。片手にはトゲトゲの金棒。
眼力がね、もうなんて言ったらいいか分からないぐらい怖い。
その姿を眼前にして、さっきまで紫苑にしか目になかった源次もキョトンとして鬼を凝視する。
「……ってギャアアアー!! 何これ!? すっごく怖いんですけど……って、少年?」
「散れ。そしてミンチになれ。鬼さん、後よろしく。」
「ちょっとまてぇぇぇーー!! 悪かった!!
俺ちんが悪かった!! だから頼むから助けてぇぇ!!」
ガッシリと召の足元を掴み、これ以上にないぐらい綺麗に土下座する。
その隣で腹を空かせたライオンの如く唸る鬼。主人である柿原の指示を一心に待つ。
「……どうするー紫苑? ミンチ? それとも見逃す?」
「ボクは全然いいよー。むしろ面白かったしねー。ナンパなんて久々♪」
あんだけ迫られていたのに、何一つ嫌な顔をしない紫苑。むしろ面白がっているようにも見える。
紫苑は人柄が良いためか、誰にでもフレンドリーだ。
ゆえに変な奴とも友達になってしまう傾向がある。
どう見ても目の前で土下座してる奴は変な奴なんだが……
「……分かったよ。許してやるよー。鬼さん、帰って良し。」
「恩に着るよぉ少年!! お詫びに俺ちん、おたくらに一生ついて行きますぜ!!」
「いや、来なくていいから。そのまま帰れ、めんどくさい。」
「ええぇぇー!! そんなぁ。そう言わずにさぁー。」
柿原はシッシッと手ではねのける様に振り、紫苑を連れて源次に背を向ける。
“やれやれ、可笑しな奴に絡まれたなー。出来ればもう会いたく————”
「————いいのかい? 嬢ちゃんさぁ、ここに用があったんじゃないのぉ?」
その一言に、二人の動きがピタッと止まる。源次はそんな二人を見て、ニコッと笑い、二人の前に立つ。
“こいつ……なんか知ってるような口ぶりだなー。何者?”
柿原はさらに警戒の信号をチカチカとさせる。いつでも戦闘態勢に入れるように。
「おーい、なんか誤解してない!? そんな警戒しなくてもいいじゃん?
心配しなくても、ここでバトル展開とか、俺様が悪の親玉とかいう展開はないから!!」
源次は両手を前に出して、否定するように言う。それでも相変わらず胡散臭い事には変わらない。
でも、柿原の警戒が少し緩んだ気がした。
直感的に胡散臭いとは思っていても、危険な奴ではないと分かったからだろう。
ちなみに、紫苑は全く警戒などしていないのだが……。むしろ、源次の意味深な言葉に興味津々だ。
「いやね、実はさ、俺ちんもこの辺で何か異変を感じてね。空間の乱れ、って奴?」
源次がそう言った瞬間、間髪入れずに紫苑が言った。
「そう、それ!! ボクも感じたんだー。占いでそれを感じ取って、ここに来たんだよねー。」
「占い? 嬢ちゃん占い師かい。そうだとしたら相当の腕だねぇ。俺ちん占ってもらおうかなー?」
占いに興味津々な源次は「ダメかい?」、と手を合わせて頼み込む。それを見て紫苑は笑顔で、
「いいよー。何について占うー?」
「そうねぇ、じゃあ俺ちんの今後の美女との出会いを————」
……おい、なんかこいつ、打ち解け始めてないか?
いやいや、待て待て。たった今初めて会って、初めて話して、いきなりナンパしてきた変態野郎だぞ!?
なんでこんなに友達的な感じになってんだ!? そんでもって、もう紫苑とは仲良くなっちゃってるし!!
つうか、あの意味深な言葉の真相は!? 空間の乱れがどうたらはどうしたんだよ!?
「んー? なんだい少年、おたくも俺様の美女との出会いがいつ来るか気になるかい?」
「んなもん一ミリも興味ねぇよ!! というか、結局お前は何を知ってるんだよー!?
空間の乱れってなんだよ? 何が言いたいんだよ?」
柿原がそう尋ねると、源次は頭に『?マーク』を浮かべて首をひねる。
そして源次は一言。「何の話かね?」、と……。
“こいつ……さっきまでの話をまるで覚えてねぇ!!”
バカだ。典型的なバカだ。当時、柿原は霧島に次ぐバカを発見した、と語り継いでいる……。
「…………おたく、超俺様の事バカにしてんでしょ? 失敬な。ギャグの通じん少年だねぇ。」
どうやら、さっきのやつは冗談だったらしい。紛らわしい。まぁでも、バカなのには変わりない。
源次はふう、と一息ついて、語り始める————。
「どうやら、嬢ちゃんと俺ちんが感じた空間の乱れってのは、
『異空間との繋がり』によるものだったみたいね。
簡単に言うならね、どっかの違う世界の住人が、空間を捻じ曲げてここに来たみたいなんよ。
二人が感じた乱れってのは多分ソレの事だろうねぇ……。」
源次の言っていることは、あまりにも抽象的すぎて、そしてあまりにも現実味のない話であった。
なぜなら、異世界から来たとか、空間を捻じ曲げるとか、
俺らの今までの生活に使われるような単語じゃない。
ゆえにそんなことを言われても、いまいちピンと来ないのが正直、といったところ。
……だが、心のどこかでトクントクンと胸が打ち始めるのも確か。
「とりあえず、誰かがここにきたというのは確かだねぇ。
————ところでさ、おたくらに頼みがあるんだけどいい?」
源次は尋ねる。紫苑と柿原は首をかしげて聞く。
「あのねぇ、俺様この空間の乱れの謎について調べてんの。
なんでこんな乱れが最近増え始めたのか、ってね。
どうやらこれを見ると禍々しい感じがしてねぇ。嫌な予感がすんのさ。
そこでさ、お嬢さんの力と少年の力を貸してほしいのさ。
いきなりこんなお願いすんのもどうかと思うけど、お願いしますよ。この通り。」
源次は頭を下げて言う。先ほどは胡散臭い雰囲気しか出ていなかったが、
今はなんとなくそんな気はしない。本当の事を言っている気がする。
さっきまでの表情とは違って、真剣な表情で頭を下げる源次に、柿原は、
「……おい、具体的には何をすればいいんだよ?」
「えー、召クン珍しいー。絶対に『めんどい……。』って言うと思ってたー!!」
「しょ……少年……!! すまねぇ、恩に着るぜぇ!!」
柿原は頭をカリカリと掻き、茶化す紫苑をポコッと軽く一発殴る。
殴られた紫苑は「うぅー……」と唸り声を上げ、ムッとした表情で柿原を見る。
源次はもう一度ペコッと一礼し、頭をゆっくりと上げる。
“いずれにせよ、最近紫苑も気になっていた問題みたいだからな。
紫苑は止めても協力しようとするだろう。だったら俺が拒否しても無駄だろうからな。
それに、俺も紫苑も心のどこかでワクワクしてるんだ……。『何か』が起こりそうだってな————!!”
その後、紫苑から話を聞くと、紫苑は柿原の思っていた通り、協力する気満々だったという。
なんせ俺達は何かしらの刺激をいつも求めてる。事件とか、事件とか、事件とか。
ようするに、退屈だったんだ。俺達は。
だから紫苑も、この空間の乱れとやらを見つけた時は、目がキラキラしていた。
何か起こるのでは、と期待して。結果、変態に出会ったわけだが……。
そして今、何かが起ころうとしている。そしてその中心に俺達がいる。
それが楽しくないわけがない。胸が躍らないわけがない————!!
「召クン、なんだか嬉しそうだねー?」
「……そういうお前こそな、紫苑。」
「え、なになに、俺ちんも会話に混ぜてよぉー!!」
そんなこんなで、こんな変な奴、『瓦 源次』に出会った俺達だが、
それは確かに、胸躍る物語の始まりを示していた————!!
————————第6幕 完————————