複雑・ファジー小説
- Re: もしも俺が・・・・。 ( No.54 )
- 日時: 2013/02/13 00:38
- 名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
“サブストーリー 『彼ら彼女らのクリスマス』”
「前編」
————『もしも俺が・・・・。』という物語が始動するほんの少し前、
元地山中学に入学して初のクリスマスを迎えた日の事であった……。
「————なぁ、今日はクリスマスだぜ? 今日サンタさんが来るんだぜ?」
教室の一室、当時まだピチピチの一年生である霧島は興奮気味に言った。
今日はクリスマス。子供の夢を一心に背負ったサンタ達が全国を飛び回る日でもある。
だがそれと同時に、その内の何人かの夢が『壊れる』日でもある……。
「霧島、お前はまだサンタがいると信じているのか?」
「……? 何言ってんだよ、いるに決まってんだろ。」
「バカな事を言うな、サンタの正体はな————」
「わあぁぁーー!! まって黒川君!! 霧島君の夢を潰してあげないでぇ!!」
霧島に現実と言うものを教えてあげようとした時、言葉を遮るように水島が割って入った。
霧島は『?マーク』を浮かべてこちらを見つめる中、水島は小声で私に話しかける。
「きっと真実を知っちゃったら、霧島君悲しむよ。だから今日は……ね?」
「……だがいつかは覚める夢だぞ? それなら早めに教えてやらんことには————」
「おーい、何の話してるんだよ? サンタの正体がなんだって?」
黒川と水島が小声で話す中、気になった霧島は会話に参加しようとする。
「う……ううん!! なんでもないよっ。ね、黒川君?」
水島は手を両手に合わせて言う。話を合わせて、ということなんだろう。
やれやれ、友人の夢を一心に守ろうとする彼女は、本当に優しい女性だ。
「……ああ。サンタはいるさ。今もどこかに飛び回っているぞ。」
「そうじゃ、サンタはここにおるぞ。いつだって、子供の夢の中におるのじゃ。のう、少年?」
「ああ、そうだな————————ん?」
あまりにも自然で一瞬気が付かなかったが、私は違和感をすぐに察知した……。
声は……霧島でも水島でもない。しかもその声は背後の窓の外から聞こえる。
黒川達はそっと振り返る————。
「やっほー。サンタじゃ。メリークリスマスじゃのー。」
そこには赤い帽子、白くモサモサしたひげ、赤い服、赤いズボン、そして大きな白い袋を持った、
正真正銘、サンタクロースがそこにいた……!!
「うおぉぉぉーーー!! サンタだ!! サンタがいんぞ黒川ぁ!!」
霧島の興奮はマックスにまで跳ね上がる。それとは対照的に唖然とする二人。
「あ……あれ? さ……サンタさん!?」
「……落ち着け水島。誰かの変装だろう。誰かは知らないがな。」
『真実』を知っている二人にとっては一瞬戸惑いを隠せなかったが、冷静になれば簡単だ。
きっと、この学校の誰かの変装だろう。誰かは全く確定できないが……。
そんなサンタクロースの登場に、他のクラスメイトもざわめきだす……。
「ふぉっふぉっふぉ。ちーとばかし騒がしくなってきたのぉ。それじゃあ、ゲームを始めるとするかの。」
サンタクロースは陽気に笑いながら、そう言った。ゲーム? 何をするつもりだ?
「今からわしは1時間逃げ続けるぞい。捕まえてみせい。
見事捕まえた良い子にはプレゼントをやるぞい。ふぉっふぉっふぉ。」
サンタはそれだけを言い残し、そして下に落ちていった。おい、ここ4階だぞ!?
黒川が窓から下を見てみると、なんの問題もなくケロッとしていたサンタがいた。
そして陽気に鼻歌を歌いながら、スキップで逃げていった……。
“……あのサンタ何者だ? 4階から落ちた挙句、何もないなんてバケモノか!?”
私でも3階が限界だ。4階なんて落ちたら足がしびれてしばらく動けないぞ!?
(注、心配しなくても、3階から降りてなんともない時点で、彼も超人レベルです。)
さて、そうして何か変な空気を残してサンタクロースは去って行ったわけだが、
どうやら捕まえればプレゼントをくれるらしい。本当かどうかは知らないが。
「……聞いたかよ黒川!! これ行くっきゃねぇぜ!!」
「黒川君、行こう!! 霧島君の夢のために!!」
……おーい、なんか二人とも妙に熱くないか? いや、霧島は分かるんだが……。
————まぁ、いいか。せっかくサンタとやらが催し物を企画してくれたのだ。
一生徒としてこれを無視するわけにもいくまい。サンタの正体を暴きに……行くか。
私達は4階から飛び降りるというふざけた芸当は出来ないため、
素直に教室を出て、まずは一階の捜索にあたった……。
まずは一階。最後に私達が見たのは一階の外。まずは外の捜索から始めた。
グラウンド、入り口付近を見て、一階のあらゆる外を見たが、サンタはいなかった。
続いて一階の内部。このフロアには主に、教員の待機場所である職員室や図書館などが設置されている。
だが、残念ながらこちらにもいない。ちなみに先生達も姿を見ていないらしい。
“ますます謎だ……。誰にも見られていないなんて。どこに行ったのだ?”
これじゃあ拉致が明かない。そう感じた。だから黒川は冷静に考えた……。
残る2階〜6階のどこかにいるはず。入れ違いになっていなければ。
が、教員の話を聞く限りでは、その辺をうろうろしているわけではなさそうだ。
つまり、どこかに隠れている、全く動いていないと見る方が自然だ。
“2階は三年生、3階は二年生、4階は一年生の教室がある。
そんなところで隠れているなんて思えない。つまり……5階か6階の屋上か……。”
黒川は冷静に頭を回転させる。それとは対照的に「どこだぁぁー!!」と叫ぶ霧島と、
「ふふっ、霧島君、目がキラキラしてるね。」
と、天使のような笑顔で霧島を見る水島。か……可愛い。
……ゴホン。そうじゃなくて。早く行かなくては時間が無くなってしまう————。
「あー、黒川クン。それに勇クンに愛奈ちゃん。何してんのー?」
「勇気。お前五月蠅いぞ。めんどくさい。」
そんな私達の前に現れたのは、小学生の時の友人である紫苑と柿原。
五月蠅いと言われたからか、頭に来た霧島は「ああっ!?」と柿原に突っかかる。
「ああ、紫苑と召か。実はな、かくかくしかじかで……。」
「ええぇー!! サンタさんが来てるのぉ!? 本物ぉ!?」
『かくかくしかじか』とは本当に便利な言葉だな。手抜きなんて言わせない。
驚愕する紫苑だが、残念ながらそこまでまったりと話す時間はないということを伝え、
そしてその後、二人にサンタの捜索に協力してもらう事になった……。
紫苑と柿原は5階の捜索、私達は屋上の捜索を担当することになった。
「ああ、よかった。俺は勇気とだけは一緒に行動したくねぇ。めんどうだ。」
「おまっ……!! こっちから願い下げだぁバーロー!!」
「霧島、コントをしている場合ではない。行くぞ。」
「愛奈ちゃーん、後でお昼一緒に食べようねぇー!!」
「うん!! なんか賑やかになってきたね。サンタさん、どんな人なんだろう……。」
とまぁ、こんな感じの日常会話?をしながら、それぞれの捜索場所に向かった————。