複雑・ファジー小説

Re: もしも俺が・・・・。『リバース』 ( No.70 )
日時: 2013/02/13 19:40
名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode



       「パート2。」



  町で一番栄えた中心部には、とある秘密基地のような場所があった————。

  そこが何を隠そう、少人数組織、『リバース』の本拠地である事は誰も知らなかった。
  10人にも満たない人間が、ここを拠点としているのであった……。


  そこは中心部の地下に位置する、別次元の様な空間。

  地下の割には薄暗いというイメージはなく、全体的に青白い光を放っている。
  壁も照明も、まるで異次元空間の様に錯覚するほど、広く神秘的な場所である。

  地下の中心部は村一つ作れるほどの広さに加え、枝分かれするようにそれぞれの部屋が用意されてある。
  全部で10個。空き部屋もいくつかあるらしいが。それなりに広い部屋のようだ。
  リバースに所属する人たちの数人は、ここで寝泊まりしている者もいるらしい。

  広々とした中心部、所々にある部屋、
  そして中心部よりもさらに下層に、司令室と呼ばれる会議用の場所がある。

  そこは中心部よりは広くはないが、大人数でパーティが開けるほどの広さだ。
  何千台ものパソコンやモニターが設置されており、大事な話はここでする。


  そんな司令室に、すでに何人かの人達は集まっていた。
  今日、大事な会議がある様なので呼ばれたリバースの戦士たちだ……。



   「————袋井君、もうすぐで来るらしいわねぇ。」



  パソコンの前に立つ、容姿が大人びた女性が髪をかき上げて言った。

  身長170cmの長身で、見た目は日系外人。
  髪はブロンドでストレートセミロング。瞳は青だが中心に進む程深い青になっている様だ。
  鬱陶しくかき上げた髪がサラリと綺麗になびく。


  ————名前は『コーネリア エクルストン』。この組織、リバースを束ねる司令塔だ。


  現役で元地山中学で先生をやっており、科目は英語。

  ちなみに、彼女はここの世界の正式な人間ではなく、なんとゲームの世界の住人なのだ。


  ゲームの世界で、「現実に行きたい!!」と駄々をこねて謎の呪文を唱えた結果、
  気付けば現実世界に飛ばされていたという、なんともまぁ非現実的な人である。

  その影響からか、黒川と同じく『次元を超える力』を備えており、他の世界にダイブすることも可能。

  元の世界には帰る気はないと断言していると同時に、
  その特殊ぷりが認められて特殊部隊の生徒達を鍛える指導係として一時期は加入していた。

  が、特殊部隊のある『理念』に賛同できず、反対勢力を作った創始者でもある。
  特殊部隊から自分と同じ、賛同できない人物をスカウトし、この組織を立ち上げたのだった……。



   「せんせー、俺そろそろすっげぇ帰りたいです。向こうで喧嘩したいですー。」



  そう言って後ろからピーンと手を伸ばして、まるで子供の様に駄々をこねる男性が一人。

  青い軽いシャツに青いジーパン。手に包帯を巻いている。肩には日本刀を掛けている。


  ————彼の名は『榊 和 (さかき かず)』。


  リバースのメンバーの中でもかなりの好戦的な人物。喧嘩大好きな生徒だ。

  この男性、榊は実は数日前に別世界から来た放浪者であるのだ。


  なぜかは分からないがこの世界に飛ばされてきて、訳分からない状況のところをコーネリアが拾ったのだ。
  そして無理やりここに加入させた。榊は反対したが、それもほんの数十秒であった。


  “自分の目的が達成されれば、元の世界に戻してやる。”


  というコーネリアの条件に嫌々ながらも仕方なく承諾し、こうして一員となった。
  榊にしてみれば、早く元の世界に帰りたいのになんでこうなった、そんな心境だ。

  しかし、今元の世界に返してやれることが出来るのは、
  次元を自由に移動できるコーネリアだけである。それは紛れもない事実。


  だから仕方なーく従っているわけだが————



   「榊君?」


  ふと、優しくかけられた声に榊はビクッと肩を震わせた。声の主はコーネリアだ。
  コーネリアはゆっくりとこちらを見て、笑顔で、




   「帰りたいの? じゃあ帰らせてあげるわ。
    どっちか選んでね? 私の指示に従い続けて元の世界に帰るか、

    この銃に撃たれて身体をバラバラにされて天国に帰るの……どっちがいいー?」



   「……前者でお願いします。」



  ニコニコの笑顔でとんでもない事を口走る先生には、榊は苦笑して従うしかなかった。


  “それにしても、以前はあんなにコロコロと表情を変える人じゃなかったというのに。
   いつの間にかコーネリア先生、未知の進化を遂げてるじゃねぇか……。”


  半分嬉しく、半分恐れの複雑な感情を榊は抱いた。



  ————そんな榊の後ろから、一人の小柄な女の子がチョコンと現れた。


  身長142cmほど、茶髪で肩まであり、少し巻かれてふんわりとしている。
  瞳は緑で色白。緑の帽子をかぶっている。
  見た目通り、年齢は9歳。まだまだ子供であるにも関わらず、彼女も立派な戦士だ。
  白の長袖ブラウスに緑の薄い上着、緑の長いスカート。
  白のニーハイソックスに黒い靴、レースが付いた緑の傘をさしている。


  ————名前は『咲花 綾 (さくはな りょう)』。皆からは『リオ』と呼ばれている。



   「おや、リオ君。どうでしたか、『三人』の様子は?」


  コーネリアが彼女に視線を落としてそう尋ねると、リオと呼ばれる少女は静かに口を開く。


   「先ほど、三人は『DDD教団』のガロンと接触。無事生還したようです。
    現在は違う異世界に飛び、調査を続行、とのことです。」


   「そうですか……。情報感謝します。」

   「……リオ。お前どっからそんな情報仕入れてんだよ?」



  隣にチョコンといるリオの頭を撫でて、榊は思った事を口にする。


   「僕は情報屋ですから。」

   「いや、理由になってねぇだろ……。本当に9歳か?」


  苦笑して言う榊に、リオは小ばかにするような笑みを浮かべ、



   「9歳ですよ。それに、僕は榊君みたいに頭は悪くありませんので。」

   「何ぃおう!! やるか、喧嘩ぁ!?」



  ギャアギャアと騒ぐ榊に、「嫌です。」ときっぱり言って榊に背を向ける。

  このリオと呼ばれる少女は、この世界の人ではあるが、元特殊部隊ではない。


  彼女は、この世界で裏の世界に属する、暗殺の家柄に生まれた。
  それはいわば殺し屋のようなもので、彼女も家を継ぐためにその訓練を受けてきた。

  が、彼女自身は全く持って家を継ぐつもりも、暗殺をするつもりもなかった。
  そんな日々が嫌になった彼女はついに家を飛び出し、ひたすらに逃げた。

  だが数日を過ぎた後、極度の空腹が彼女を襲った。

  お金など持っておらず、ろくに食べ物も食べず、限界を迎えて倒れた所を、
  たまたま通りかかったコーネリアに助けられたのだ。

  そんな時、コーネリアが困っているという話を聞いたリオは、
  コーネリアの力になる事に決めたのだった……。



   「ところで、少なすぎませんか? 三人って……会議する必要あります?」


  ふと、思い出に更けていたコーネリアにリオが話しかける。
  コーネリアはリオの言葉に気づくと、モニターを見て「そうねぇ……。」と呟く。



   「仕方ねぇんだろ。三人はDDD教団の調査、ほんで後の『二人』は治安維持活動。

    袋井を合わせたこの9人が今のリバースなんだからよ。」



  榊が手を広げてため息をつくと、「相当の人手不足ですね。」とリオも呆れ顔で言った。
  コーネリアはそんな二人を見て、ふふっ、と笑う。そんな彼女を見て、二人は首を傾げる。




   「いいのですよ、これで。なんてったって————この9人でないと、世界は救えないのですから。」




  コーネリアはモニター越しに映る袋井を見て、穏やかな表情を浮かべた————。