複雑・ファジー小説

Re: もしも俺が・・・・。『遅めのバレンタインネタ。』 ( No.88 )
日時: 2013/02/23 15:47
名前: ヒトデナシ ◆QonowfcQtQ (ID: j553wc0m)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode




     ————第12幕 『もしも俺が休日を過ごすのならば……。』————



         「パート1。」





  季節は秋。日にちで言うならば、10月の中旬。

  夏の暑さがようやく落ち着きつつあるこの季節。最近涼しくなってきたのを肌に身に染みて感じる。
  ついこの間まではクーラーを付けていなければ暑すぎて寝れなかったというのに、

  今ではそんなものは不要で、むしろ朝が来ると布団を被っていなければ寒く感じてしまう程だ。




  ————外から差し込む日の光に照らされ、眩しく感じた黒川はふと目をつぶった。


  現在午前10時。そうだというのに、昨日は少し夜更かししていたせいか、眠く感じる。
  とはいっても、今日は日曜日。学校はない。まだ寝ようと思えばいくらでも寝れる。

  そう思って、黒川は太陽の光から逃げる様に背を向けて、またも暗闇の中で目をつぶった。



  ティアナがこちらの世界に来たのはほんの二日前の事だ。

  結局、ティアナがこちらの世界に来てしまった理由は、分からずじまいだった。
  考えれば考えるほど謎で、身に覚えもない。それが夜更かしの原因でもあるのだが。


  現在ティアナは、霧島の家で居候している。

  最初は母親に、「あんた……こんな綺麗な彼女、なんで今まで黙ってたのよ!?」と、
  何から説明すればよいのやらと頭を抱え、必死に説得するのに大変だったと聞いた。

  が、今は落ち着いて、母親公認でそれなりに良い暮らしをしているらしい。

  霧島は今、母親と二人で暮らしていた。父親は転勤していて家にはいない。
  そこに可愛らしい嫁候補?であるティアナが加入したというのだから、騒々しいとは思うが。


  一応、昨日にティアナの事については、管理者である花狩先生に連絡した。

  事情を話すと最初は驚いていたが、すぐに「ロマンチックだね。」と、全く気にしていない様だった。

  そしてティアナの事も先生が面倒を見てくれるようだ。
  面倒を見ると言っても、『学校に通わせる』というだけだが。


  元々、元地山中学はそのような不思議な子達を保護するための学校でもある。
  つまり、学校に入学させた上で花狩先生が面倒を見るとそういう事だ。
  だから元地山中学に、明日から新入生としてティアナが入るわけだが、どうなることやら。


  ……まぁ何にせよ、なんとかなったわけだ。初めはどうしようかと思ったが、どうにかなった。


  ティアナもこちらの世界を楽しみたいと言っていたし、問題はないだろう。

  と、そんな思考はさておいて、と黒川は考えることを止めた。
  今日はせっかくの休みだ。もう少し寝よう。

  それに向こうの世界での、『ミスト・ランジェ』との戦闘が予想以上に身体にダメージを残した。
  特に両足が尋常じゃなく痛む。奴の鉄のように固い足蹴りとまともにやりやった結果だ。
  それ以外に身体の所々も、だ。あの足蹴り、思い返せば少女とは思えない化物並みの蹴りだった。

  明日学校に行くのも気だるいと思う程、黒川の身体は恐ろしく重かった。


  だからもっと寝ていたい、そう思ったのも束の間————。







   「おーい、黒川くーん、いるんだろう? 俺でーす。花狩先生でーす。」




  ドンドンッと玄関の扉から叩く音が聞こえる。とにかく誰かは分かった。

  だがこんな日に何の様だろうかと、重い身体を起こし、立ち上がる。
  そして玄関の扉のロックを開けると、向こうから勝手に扉を開けてきた。



   「やぁ、おはよう黒川君。グットモーニング?」



  花狩先生が手をヒラヒラさせて陽気に笑っていた。それに苦笑した表情を浮かべる黒川。
  いつも通りに白衣を纏っていて、銀縁眼鏡がキラリと光った。



   「……何の用かな、先生?」

   「黒川君パジャマじゃないか。レアショット!! カメラが欲しいね。」


  朝からテンションの高い花狩先生について行けず、黒川はため息をついた。
  確かに今黒川はパジャマをきている。上下黒の長ジャージでいつも寝ている。
  若干寒いなと思い、ブルッと身を震わせると、花狩先生がニコッと笑い、



   「寒いだろう寒いだろう。さ、中に入ろうか。」

   「……私の家なんだが?」

   「おやー? いいのかいそんなこと言って? 帰っちゃうぞ?
    せっかく君も喜ぶであろう人物を連れてきているというのに?」


   「……何?」



  黒川からは見えないが、どうやら花狩先生の隣に誰かいるようだ。

  花狩先生がニヤリと笑うと、「ほれ。」と言ってその正体を晒した。
  その正体は、黒川の嫁候補……というのはさておき、友人こと、水島愛奈であった。



   「こ……こんにちは黒川君。」

   「な……なるほど、水島だったのか。ビックリさせないでくれ。」

   「おや? 一瞬動揺したように見えたがねぇ?」



  紅潮する黒川を横目に花狩先生がニヤリと笑うのを見て、即座に背を向け、


   「い……いいから入れ。寒いだろう。扉を早く閉めてくれ。」


  と、入るように促した。花狩先生がズカズカと何も言わずに入るのに対し、
  水島は礼儀正しく「お邪魔します。」と言って行儀よく靴を脱いで扉を閉めた……。




  ちなみにここまでは、黒川の家に入るために水島を連れてきて、そして強引に家にお邪魔するという、

  花狩先生のずる賢く計算された作戦通りであるという事を、二人は知らない————。