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複雑・ファジー小説
- Re: うつせみ。 ( No.1 )
- 日時: 2012/11/30 14:57
- 名前: ぺどにゃん ◆KZUykuyj2A (ID: CFE7lDA5)
———何モ、聞コエナイ。
車の騒音、近所ではしゃぐ子供たちの声が消えたこの場所で、
私・杉浦陸里(スギウラ リクリ)は一人天を仰いでいた。
…いや、仰いでいたというよりは地面に寝転がっているという表現のほうが正しいかもしれないけど。
土まみれの身体をゆっくりと起こし、髪の毛にまとわりついた落ち葉を払う。
鏡こそ無いが、一般的な都会の女子高生にはあるまじき姿だろう。
ふぅ、と思わずため息がこぼれる。
(わたし…どうしたんだっけ)
先程までのことを思い出そうとすると体が拒否反応を示しているのか、
視界がぐにゃりと歪んで、激しい頭痛に襲われた。
再び引き寄せられるようにして地面に倒れこむ。大丈夫。意識はある。
(でもここ東京…ではないよね!?違うよね絶対違うよね)
だって車どころか人力車が走ってるし
ほら今わたしの顔を覗き込んでる人たちだって皆和服だし刀持ってるし……
「—————…ってええええええええええええ!!??」
刀ァ!?
思わず飛び起きたせいで、誰かにおでこをぶつけてしまったようだ。
ゴッという鈍い音に続いて『いてっ!』という小さな悲鳴が聞こえた。
それとほぼ同時に、だんだん遠のいていく意識。
「———っ、おい!……い……」
待って、途切れないで、もう少しで思い出せそうなのに。
私、確か———————————……
『…大丈夫か?』
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