複雑・ファジー小説

Re: うつせみ。 ( No.5 )
日時: 2012/12/04 22:42
名前: ぺどにゃん ◆KZUykuyj2A (ID: CFE7lDA5)

*02/



「伊…織…?」






自然と頬を伝う、一筋の涙。









今まで、一度たりとも忘れたことなど無かった。









少しクセのある黒髪にすらりと高いシルエット、小さな泣きボクロ。


“彼”だ。“彼”は生きていたんだ!!!











「…っいおりっ…!いおりぃっ…!!」

「え、ちょっ」







布団なんかほっぽりだして、無我夢中で彼に抱きついた。


会えた。やっと会えた。




















「いお——————————————「…っだあぁぁっ!!」












刹那。








先程まで彼の身体に巻きついていた肢体は解かれ、私の身体は布団へと逆戻り。





「……え…?」



開いた口が塞がらない。



だってあなたは“彼”なんでしょ?
わたしの大切な——————————…










「急になにすんだよ!」

「へ…?伊織…?」

「オマエ誰?ってか伊織って誰だ」

「は?」

「…俺は錦愁斗(ニシキ シュウト)。生憎だが人違いみてーだな」







嘘でしょ…?




もう一度まじまじと見つめなおす。
赤みがかった瞳の色まで、“彼”そっくりだ。







「でも確かに伊織はこんな口悪くないし…」

「うっさい」

「…すみませんでした」



口では謝りつつ、内心ショックと動揺を隠し切れなかった。
さっきまで出ていたはずの涙はすでに乾いている。



「で、俺の質問に答えてくれる?」

「え…?」

「オマエ誰?あとなんでウチにいる?」