複雑・ファジー小説
- Re: 絵師とワールシュタット ( No.17 )
- 日時: 2013/06/09 23:16
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: P4ybYhOB)
- 参照: http://mb1.net4u.org/bbs/kakiko01/image/1417jpg.html
■青年と悪魔
「砂漠の悪魔に会ったことはあるのか?」
エルネが参謀一課に編入した初めての夜。参謀のメンバーとの就寝前の談話でのことだった。
「砂漠の悪魔?」
参謀にはエルネを含め七人の隊員がいたが、驚くことにそのうち四人がエルネと同じ外国人だった。しかも、みんなが同い年くらいの若者である。
「おう、エルネは白絹の国から"死の砂漠"を越えて来たんだろ、悪魔には会わなかったのか」
「えっと……ごめん、その悪魔とやらを俺は知らない」
するとそこに居合わせた全員が驚いたように声を上げた。
「あれ、悪魔の話があるのは常緑の国だけ……では無いよな」
参謀長の黒髪の男が言った。
「いや、僕の国にもあったよ」
天文方の、肌の浅黒い、賢そうな目をした男が特徴的な低音でゆっくりと喋った。
「僕の国 ——エジプトはここからずっと西にあるのだけれど、本当に砂漠だらけなんだ。でね、そこに出るんだよ、悪魔が。そいつは砂漠に迷い込んだ旅人に謎かけをするんだ」
「……どんな?」
「さぁ、それは人によって様々。そして悪魔の謎にうまく答えられないと、旅人は悪魔の持つ箱の中に入れられてしまう。その箱の中は真っ暗でね、世界の終わりへと繋がっているそうだ。でも、旅人が謎に上手に答えられたら、悪魔は旅人に水を与え、砂漠の出口を教えてくれる」
「へぇ。なんか、怖いんだかありがたいんだか分からない奴だな。俺は会って無いよ、そんなのには。君は会ったのか?」
「ああ、会ったとも。エジプトから宛てもなく逃げて、確か3日目の真っ昼間。水も食料も何も持たずに逃げ出した僕は、早くも三日目で死にかけていた。今思えば、本当に馬鹿だったな。
脱水でぼんやりした意識の中で、僕はただただ青い空と、途方もなく広がる白い砂丘をぼうっと見てた。世界中が本当に静かで、見渡す限り何もなくって、まるでこの世に一人だけ、取り残されてしまったかのように思えた。変に寂しかったのを覚えているな。
そしたら急に、人っ子一人居ないはずなのに、後ろから肩を叩かれた。
驚いて振り向くと、それまた驚き、昔死んだ恋人がにっこりと微笑んで立っていたのさ。そして言うんだ、"私はだぁれ?" ってね」