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複雑・ファジー小説
- Re: 絵師とワールシュタット ( No.18 )
- 日時: 2013/06/29 22:33
- 名前: ryuka ◆wtjNtxaTX2 (ID: P4ybYhOB)
- 参照: http://mb1.net4u.org/bbs/kakiko01/image/1417jpg.html
○
「わたしはだぁれ?」
広い広いあおぞら。
しろいしろい、砂漠。
どうして死んだ君は、いま僕の前で微笑んでいるの?
「あなたは……」
言ってから気が付いた。あなたは、そうだ。僕がこの手で殺したんじゃないか。愛しいあなたの、その白い首を絞めたあの感覚を、どうして忘れることができよう?
砂漠の風が、暑い空気を運ぶ。轟々と音を立てる熱風は、見ている視界を不確かなものにする。そう、僕の過去も罪も全部、不確かに滲んでいってしまう。
「わたしはだぁれ? ねぇ、答えてよ、ラティーフ?」
彼女の細い指が、乾いた僕の頬を撫でる。
くすぐったくて、懐かしくて、切なくって。
首を少しだけ傾けて、こちらを見る愛らしい仕草もそっくりなのに。
「……ああ、ほんとうにあなただったら、どんなに良いだろう」
すると彼女は優しく笑った。
「よくできました、ラティーフ。あなたは砂漠から出られるわ。悪魔の誓いにかけて、あなたに水と、砂漠の出口を差し上げましょう」
そう言って、彼女は僕に優しく口づけた。
清涼な水が、乾ききった喉を潤していく。ゆっくりと目を閉じると、それと同時に意識を失った。
そして目を覚ました頃には、僕は見も知らない国の往来で一人、星空を見上げて仰向けに倒れていたのだった。
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