複雑・ファジー小説
- Re: この話、内密につき ( No.1 )
- 日時: 2013/01/01 19:03
- 名前: 卵白 (ID: UVjUraNP)
私は昔から物語を作ることが好きだった。
余裕のあった小さい頃は、今になると稚拙で眼も当てられないモノだけれど、物語を作った事もある。
親のパソコンを弄り回してワードを見つけ出して、親の見様見真似で文字を打ち始めた。
そして、自分の脳内でかっこよく活躍するヒーローやヒロインを解放する。
親に電気代の無駄だと言われて殴られたのも、今では懐かしく思える。
大抵の物語はオチが着かずに途中で飽きて放り出してしまうのだけれど、偶に気分が乗って長く続けるものもあった。
自分も予想だにしなかった方向へと引っ張られる話に眼を白黒させながら、私は妄想した。
——もし、彼等のいる想像の世界に紛れ込む事が出来たらどんなにいいだろうか。
出来れば、主人公になりたい。でも、私は主人公もキチンと好きだから(だって、自分で生み出したキャラクターだから、好きなのは当たり前だ)相棒みたいになれたらいいなぁ。それで、私は主人公と背中合わせに戦う唯一無二の存在になるんだ——。
まぁ、当たり前だがそんなことは実際には起こらない。
どんなに小さい頃とはいえ、私はなんとなくそれを理解していた。
二年前、小学六年生の頃。両親が私に専用のノートパソコンと、小説の書き方の本を買ってきてくれた。
勿論、中古でオンボロもいい所で、ゲームなんて出来ないし読み込みも遅いけれど、私はそのパソコンに『ご隠居』というあだ名をつけて愛用していた。
なのに私は、とんでもないことを仕出かしてしまった。
中学に上がって出来た友達の家に招かれ、そのまま部屋に入れば、そこでは最新式のパソコンがその黒い機体を光らせていた。
羨ましいと思った。
興奮をそのまま友達に伝えて、どこで買ったのかと尋ねると、なんと、これは友達が改造したらしい。
どうしても欲しかったので、私も改造してみようと、なけなしのお小遣いを使ってパーツを買い込んだ。
そして、改造しようとしたのだ、ご隠居を。
友達のはいくらスペックが低いとはいえ、ご隠居よりもスペックは高くて新品だった。けれど、私の愛用しているご隠居は低スペックもいい所で、ご隠居の名に相応しいものだった。
つまり、老体に鞭打った所為で壊れてしまったのだ。
ショックで呆然とする私をよそに、両親は私を怒鳴りつけた。そりゃもう、ご近所じゅうに響き渡るほどの大声で。
私の家は貧乏だったし、今になって思うと、ご隠居はとても高い買い物だったんだろう。
さて、なんでこんな昔話を語ったのかというと、この文章を読み進めてくれれば解るだろうが……ざっくり言うと、関係するから。この一言に尽きる。
私の編み出した物語の中の主人公。漫画やアニメの主人公。この人達は、どんな事があっても絶対に折れない不屈の精神を持って、強靭な肉体やチートな能力で苦境を乗り越え、ハーレムを作る。
でも、現実だったらそんなチートなんてないし、苦境を乗り越えられずに挫折したりもするし、いつまでもうだうだ悩んだりする。
現実は生きていくうえで必要で、とても厳しい。
これを、信念に私は此処まで生きてきた。
まぁ、ここまで読んでくれれば大体察しもついているんだろうけれど、改めて私から一つ忠告。
これから綴る事は、全て事実であり、"俺"の記憶にしっかりと残ったものを忠実に再現したものだ。だから、さっきいった現実の要素が多いと思う。
普通なら戦闘シーンから始まるだろう。
でも、現実でそんな事は有り得ないし、私は記憶を捏造する気なんて更々無い。それに、絶対にどこかでボロが出るだろう。
だから、事実を語ろうと思う。
"私"は、あの日、夏休みの宿題に追われていた。