複雑・ファジー小説

Re: OUTLAW 【第2部 START☆】 ( No.100 )
日時: 2013/04/04 00:34
名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)

 今の会話のどこから俺が真面目なんていう話になったんだ・・・。

「だってまだアウトロウになったばかりなのに、こんなに事件に積極的じゃないか。まぁ、僕たちがサボってるわけじゃないけど。真夜は優しいね」

 ・・・。

 俺だって何でこんなに考えているのか、よく分からない。でも、次々に情報が流れ込んできたら、その辻褄を合わせたいって思う。

 被害者を助けたいとは思ってなくもないけど、別にそれが最優先じゃない気がする。

 ただ、これがアウトロウの役割なのだとしたら、俺はアウトロウでいるためにその役割を果たさなければならない。

 だって、アウトロウでないと、あいつの隣にいれないから。

 そう思うと、俺の行動基準はいつからあいつになったんだろう。

 ・・・雨の中での、梨緒との約束をしたときからかな。

「そんなんじゃねぇけど」

「謙遜はよくないよ?まぁ、僕らとしてもありがたいことだから。黒宮綾の問題だっけ。んー・・・数え切れないほどあったはずだけど・・・」

 程よく理人は話題を戻してくれて、俺も思考を脱線せずに済んだ。

「まとめて言ってしまえば、彼女が来てからの3年間、高嶺高校はいじめと自殺者が急増したよ。それでもかなり減ったほうなんだけどね」
「それって1人だけの問題なのか?」

「いや、最初は学年全体の問題としていたんだけど、その被害者たちについて調べていると絶対出てくる名前が黒宮綾だったんだ。でも、れっきとした証拠がないから、彼女自身に尋問ができないでいるんだ」

 それはそれで怪しいな・・・いじめの被害者や自殺者から絶対名前が出てくるなんて、関わっているとしか思えない。なのに、物的証拠がないために尋問に掛けられない。手強い相手だということが見受けられる。

「教師への反抗は尽きなかったね。凄まじかったよ。暴言、口喧嘩なんてまだいいほうだ。校長室の花瓶を割って、職員室の机をめちゃくちゃにしたことだってあった。理科教師の白衣を鋏で切ったり、この間は美術教師の絵を破いたって聞いたな・・・。屋上に行けば生徒を突き落とそうとしたしね。家庭科室では机の上に油を散らして火をつけたことだってあったね・・・とにかく、彼女は度を越えているんだよ」

 また凄い奴だな。理人とは違う意味で、俺には真似できない。暴言口喧嘩なら俺もあったけど・・・多分、比にならないだろう。

 今理人が言ってくれた具体例があってるとしたら、彼女は成績優秀だが評判が最悪だったはずだ。

 評判が悪い黒宮綾と、カンニング行為をしていた渡辺香織、そして今回の成績がガタ落ちした如月美羽・・・。

 ここで俺は1つの共通点を導き出した。


 ・・・教師に反感を買っていることだ。


 黒宮綾についてはもう説明しなくてもいいはずだ。そしてあとの2人についてだが、俺はあまりまだ実感はよく沸かないが、私立高校でのカンニングと成績ダウンはあまりいい話題ではない。

 だが、まだこれは結論ではない。1つの候補だ。しかも、行方不明事件が、人為的なもので犯人がいる場合限定の。もしかしたら、彼女たちの意思で、行方を眩ましているのかもしれない。

 これは俺の中での答えの1つ。まだアウトロウのみんなに伝えるべきではない。

 教師と言ったって、どの教師だかも分かっていないのだから。

「黒宮さんについてもっと聞きたいのなら、空悟に聞きなよ。あいつ、小中と同じだったから」

「マジで?」

「うん、確かね」

 確かに空悟は同じ学年だし、理人に聞くよりいろいろ知っているかもしれない。

 だが、今のところ欲しい情報は手に入った。とりあえず行方不明事件に犯人がいるとして考えると、教師である可能性が高い。

 しばらくは、教師についても探りを入れていこう。こうなるんだったら、午前の授業ちゃんと聞いとくんだった。担任の名前でさえちゃんと覚えてねぇ・・・。

「あぁ、そういえば、美羽ちゃんっていついなくなったんだい?」

「いつ、って?」

「だって今日は月曜日だろう。金土日の、どの日からいなくなったんだ?」

「さぁ・・・それは聞いてねぇな」

「さっきも言った通り、彼女の両親は共働きで度々しか帰ってこないらしいんだ。でも、そんな親でさえ娘の失踪に気付くくらいなんだから、金曜日からいなくなったのかな?」

 それもそうだ。滅多に帰ってこない親が、娘が1日や2日いなくなっただけでは行方不明とは考えない。金曜日の夜からいなくなったとすれば、土日の全てと今日の朝いないとなり不審に思ってもおかしくはない。理人の話を聞く限り、彼女は寂しがりやだったんだから、親が帰ってくる時間帯はいつも家にいたはず。

 つまり、両親たちは帰れば娘に会えるとなっていたのだ。それが3日も続かなかったら、さすがにおかしいと疑い始める。

「もし、美羽ちゃんが金曜日の放課後にいなくなったんだとしたら、彼女が最後にいた場所は学校のプールだ」

「え、何で?」

「美羽ちゃんは水泳が大の得意でね。しかもこの時期になると、この高校は水泳部にだけプールを開けるんだ。一般生徒のプール解放は7月からだけど、水泳部は特別に6月からなんだよ。夏には大会もあるからね。彼女は確かに不真面目だったけど、水泳に対してはいつも熱心だった。金曜日の放課後は、プールの練習があるからと言っていたし、きっと時間もギリギリまでいたんじゃないかな。彼女は意外に天然だったから忘れ物とかがあるかもしれない。そうなると、彼女がいなくなった場所の範囲が学校まで広がる」

 高嶺高校は基本的にいつ帰ってもいいが、最終的には6時までは学校を出なければならない。となると、彼女は学校のプールにいたこととなる。

 彼女がいなくなったちゃんとした時刻は分からないが、夜なのだとしたら6時であっても可能性は低くない。しかも、学校からいなくなったのだとしたら、調べることも一気に多くなってくる。

 理人の言葉は、かなりの情報力があった。

 そうこうしている間に、3階まで着いてしまった。随分とゆっくり歩いていたし、立ち止まったりもしてたから、かなり時間が掛かってしまった。

「となると、学校に忍び込む必要性があるな・・・。このことについては、今日帰ってからみんなで話そう。こればかりは僕たちの独断ではできないからね」

「あぁ、分かった」

 7組の理人は4階。俺は3階。階段のところで俺たちは一度分かれ、それぞれの教室へと向かった。

 この昼休みはかなり重かったな・・・。

 と思いつつ、俺は少しと言っても多少距離がある廊下を歩き、自分のクラスである2年3組のドアを開けた。

 途端に視線が俺へと集中し、俺はついその場で立ち止まってしまう。
 俺に全く慣れていない先生が、黒板の前であたふたと動揺していた。

「て、転校生の矢吹くんだね。授業はもうとっくに始まってるよ、どこにいたんだい?」

「ほ・・・」

 保健室、と言おうとして、あの早乙女先生が「怒られるのは私なんだからね」と言っていたことを思い出した。

 アウトロウの協力者として、機嫌を損ねるのはあまり心地よくない。
 はぁ、と息をついてから、俺は黒板の前に立つ先生を見ながら口を開けた。

「校内を歩いてたら迷ってしまいました」

 この口実は今日から3日間くらいしか使えないな、と思いながらとりあえず馬鹿丸出しの言い訳をする。















引き続きコメントもらえたら嬉しいですw