複雑・ファジー小説
- Re: OUTLAW 【んーと、いろいろ受付中?w】 ( No.116 )
- 日時: 2013/04/03 11:08
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
***
近づかないでよ。
そう言いたくて、ならなかった。
私にとって、理人と凪は危険人物。もうこれ以上、弱さを見せるわけにはいかない。
だから、離れていてほしい。
凪だって、私のことなんか構わなくたっていいのに。しつこいからもう放っといてる。
好きにすればいい。でも、それが私のためだとか言われたら、今すぐこの屋上から突き落とす。
「風、強かったね」
生徒会役員のくせに、女1人と一緒にいるために授業をサボるとか。どういう神経をしているんだろう?
「吹き飛ばされればよかったのに」
「そんなこと言わないでよ」
とか言いながら笑う凪。本当に何を考えているのか分からない。
でも、そんな凪に、何度救われたことだろう。
私はあまり人を頼らない。必要ない。
いい?人は1人で生まれて1人で死ぬ。他人なんて必要ないようにできてる。
自分を偽ってまで相手に合わせて何が楽しい?私は私のしたいようにする。誰にも支配されない。
そんな私を受け入れてそれでも傍にいることを望んでくれているのが凪。世界には変な物好きもいたものだ。
周りから自分が好ましく思われていないことは、充分に理解している。
だから無償に凪を突き飛ばしたくなるときがある。
そしてそれを凪に告げたことだってある。
なのに凪は平然とただ笑うだけだった。
「あなたも早く教室に戻ったら?先生の信用がなくなるわよ」
「灯ちゃんも戻るの?」
「戻らないに決まってるでしょ」
「じゃあ、僕もここにいるよ」
こればっかり。
凪は私に合わせてばかり。
もうすぐ凪と会ってから数年が経つけど、私は一切凪の本音を聞いたことがない。凪が言わないことを、無理矢理言わせようとは思わない。
だって聞いたところで何になるというの?何の意味も成さないのなら、それは無駄な行為だわ。
「私はあなたがいなくても別に困らないわ」
「うん」
いつも笑ってて気味が悪い。その仮面の下で、何を思っているのかしら?
どうして、私と一緒にいるの?
聞きたくてどうしようもないくせに、何でかいつも口を開こうとすると声が出ない。身体が言うことが利かない。
「あなたなんか、いなくなればいいのよ」
やっぱり笑顔は崩さない。
少しは、他の表情を見せてよ。
今までどんな行為をしても、凪は全く怒らなかった。
教科書を破いても、制服を汚しても、提出物を隠しても、給食に砂を入れても、冤罪を作らせても、髪を切っても、叩いても、蹴っても、踏んでも、蔑んでも、何をしても。
凪はやっぱり笑っていた。
「私の視界に絶対入らないような遠いところに行って」
「それは無理です」
「歯向かうつもり?」
「すいません」
謝ったことで肯定を示していることに、凪は気付いているのかな。
何を思ったのか、凪は眼鏡を外して私へと近づいてきた。
凪が眼鏡を外すのは、かなり珍しい。私以外の前では絶対に外さないし、そもそも私の前ですらそうそうない。
私は凪の顔は嫌いじゃない。そこらの奴よりは端整な顔立ちだと思っている。視力が悪いわけでもないのに、どうして眼鏡なんて掛けているんだろう?やっぱりよく分からない。
そよ風が吹く屋上で、凪は私を抱きしめた。
何が、したいの?
それが知りたくて、私はその凪の行為を拒否せずにいた。
細い体のくせにやっぱり男の子なんだな、って実感した。
「僕は、灯ちゃんを裏切らない。ずっと傍にいるって、約束した。だから、そのお願いは、聞けない」
『灯ちゃん、僕は絶対離れないから』
いつぞやかの言葉と重なる。
まだ覚えていたことに驚く。
「・・・触らないで。汚らわしい」
私は凪の身体を押し返して、少し距離を取った。
甘えちゃいけない。約束なんて、信じちゃいけない。
約束は言葉で交わすものではなく、行動であらわすものだ。
凪が本当にその約束を果たしてくれるか、私は見極めなければならない。
何となく気まずくなって、苛々した。
そこで思い出して、私はポケットの中に手を入れて凪の財布を取り出した。
「あ、そうだ。それ、ありがと・・・」
「馬鹿ね」
返してもらえるとでも思ったらしく、凪は私に手を出してきた。でも、そんなにすんなり返してたまるか。
私はそのまま凪の財布を投げて、
屋上から落とした。
「あ・・・」
「欲しいのなら取ってくることね」
よし、すっきりした。
晴れ晴れとした気持ちのまま、私は屋上を後にした。
あたふたしてる凪を見るのはかなり愉快な気分だった。
***
「ほら、梨緒早くしろ。早く帰んなきゃならねぇんだから」
放課後になった。
相変わらず授業は退屈だったけど、隣に梨緒がいるっていうだけでどこか有意義な時間を過ごせた気がする。
生徒行方不明事件の第三犠牲者、如月美羽のことで今日は早めにアウトロウへ帰るように言われている。ちなみに俺より前に情報が回った空悟と社井には理人が言ってくれたようだ。
だから、俺らも早く帰んないといけないんだけど・・・何で今日に限って図書館の本の返却日かな・・・。
マイペースな梨緒が時間なんて気にするわけもなく、歩くのも随分遅かった。じゃあ、俺が手を引けばいい、のだが、生憎俺は図書室の場所を知らない。無駄に広いこの敷地を歩き回るもそれはそれで嫌だ。
部活に入っていない生徒はもうほとんど学校に残っていないから、すれ違う生徒はいない。今日一日中注目を浴びた俺としては、かなりありがたいことだった。
そういえば、梨緒は今日一日で姫路たちと大分仲良くなった。とは言っても、ただ姫路が俺にくっつく梨緒を面白がっているだけだけど。
ちなみに、姫路たちのことは、空を姫路、優を優と呼ぶことでことを終えた。梨緒に限っては、立場関係なく誰でもファーストネームで呼ぶので、あまり困らなかったようだ。女をファーストネームで呼ぶことに多少の拒否感があった俺は、同姓である優を名前で呼ぶことにしたのだ。
きょろきょろと見渡していると、「図書室」と書かれた部屋が見えてきた。俺の方向感覚が正常であれば、ここは確か2階の一番端だったはず。覚えておこう。梨緒もよく来るらしいし。
がらがらとドアを開けると、そこには通常教室の2倍はあるんじゃないかというほど広かった。綺麗に並ぶ棚が半分の面積を多い尽くしていて、もう片方にも多少の本棚がある。棚の中の本はかなり綺麗に整頓されているようだ。本当、高嶺のやつどこに金掛けてんだ・・・だったら、アウトロウにマンションの1つでも買いやがれ。
梨緒は躊躇うことなくそのまま歩き、まだ真新しい机の間を突き進んで図書室の端へと行った。そこには長机が置いてあり、2,3個のパソコンと丁寧にファイルされている資料がいくつか置いてあった。すぐに、ここが受付だということが分かる。つまりここで本の貸し借りを行うわけだ。
椅子には1人の少女が座っていた。
黒髪のショートヘアに水色のヘアピンを止めている。一目でおとなしそうな子だと分かった。本を読んでいることから文学少女的な雰囲気を漂わせていて、どこか璃月に似ている気がする。
多分、図書委員か何かなのだろう。放課後まで当番があるなんて面倒な話だ。まぁ、確かに部活の連中もいるし、当然かもしれないが・・・。
さて、この子は誰でしょう?ww