複雑・ファジー小説
- Re: OUTLAW 【んーと、いろいろ受付中?w】 ( No.128 )
- 日時: 2013/04/06 23:17
- 名前: Cheshire (ID: f7CwLTqa)
あるとき夜の町を歩いていたら、知らないおじさんが私に向かって指を1本立ててきて。
こんな私でも、その人差し指が何を示すのかは知っていた。
だから気付いた。
1つ持っているじゃない。こんなに多額で売れるものが。しかも何度も使えるものが。
ここに。
あるじゃない。
どうして気が付かなかったんだろう。見本がこんなに近くにいるのに。
それから私は毎晩と言っていいほど私はホテルに泊まった。あそこはいい。食事は相手が用意してくれるし、シャワーも浴びれるし、何よりベッドがある。
これ以上ない最高の場所だ。
・・・なのにどうしてだろう。
どうしてこんなに虚無感を感じないといけないんだろう。
どうして私はこんなところにいないといけないんだろう。
同級生が色恋沙汰に胸を躍らせているこの時期に、私はどうしてまともな恋1つできないんだろう。
あろうことか、知らない人とこんなところに来て。
あぁ、そうか。私もどうせあの女の娘だったんだ。
私はもう生まれたときから穢れていたんだ。
こうなる運命だったんだ。
ある意味天国と言えるその場所も、私にとってはただの生き地獄でしかない。
それも、受け入れなければならない。
分かってる。分かってるけど。
本当は、嫌だったんだ。
ただ気持ち悪いだけの行為を繰り返して、貰ったお金でどうにか生活を遣り繰りして。
どうして私が。
そう思ったことはもう数え切れない。
『どんな気持ちなの?』
そうだね。あえて言えば、何も思っていない、かな。
もう、何も思わない。思えない。
私の思考は絶対最悪なほうに転がる。そしてまた孤独を感じて悲しくなって、
誰にも見られないところでその汚い涙を流すの。
それを繰り返すだけ。それが私の人生。決められていた定め。
自暴自棄だとあなたは笑う?
だって仕方ないじゃない。それが私なんだから。
誰に何と言われようと、
私は。
・・・私は。
もしかしたら、彼女が言ってる言っていることは正しいのかもしれない。
助かりたくないのかもしれない。
そうだよね。ここから助かったって、またあれが繰り返されるだけだし。
だとしたら、もうこれでいいのかな。
私は何で怖がってたんだろう。
そうだよ。これは最高じゃないか。
何もしなくていいんだ。お金を稼ぐことも、クラスの子に意見を合わせることも、テストで不正行為を働くことも、もう必要なくなる。
もう私には怖いと感じる必要性さえ、ないじゃない。
馬鹿みたい。何をしていたんだろう。
すぐ近くで、彼女がくす、と笑ったのが分かった。
嘲笑われているのかな?でも、そうされても仕方のないことをしてきたんだから当たり前か。
「じゃあ、伝言よろしくね。かおりちゃん」
彼女はそう言って、立ち上がり私の元を離れていった。
ドアが開く音がして、古ぼけた音を出しながらパタンと閉じる。
無音。
もう音は存在しない。
声を出そうと思えばできるけど、でももうそんなの意味がなくなった。
恐怖は感じる必要がなくなった。
これが、私の
望んだ世界。
***
「遅いぞ、真夜ー。何してたんだよー」
家に着くときには、5時を少し過ぎたくらいになってしまっていた。単純計算で行けば、30分はみんなを待たせたことになる。
「悪ぃ、梨緒が、図書室、に寄ってて」
息が切れてて言葉が絶え絶えになってしまったが、何とか相手には伝わったらしい。
俺はこんなに疲れているというのに、梨緒は全く息を乱していない。こいつは何か運動でもやっていたのだろうか?
適当にそんなことを思いながら、俺は荷物を床に投げ捨てた。部屋まで置いてくるほど余裕がなかったのだ。
それを見た梨緒も、部屋まで行くことを諦めたらしくそのまま抱えるようにして持っていた。さすがに女の子は荷物を投げるなんていう乱雑なことはしないらしい。というか、しないでほしい。
みんなは飯を食う席で机に座っていたため、俺と梨緒は迷うことなく椅子に座った。生憎、榊はいないようだ。未だにあいつが何の仕事をしているのか分からない。
真は退屈そうに欠伸をしていた。こいつはもっと仕事をすべきだと思う。俺らが学校に行っているとき、こいつはいつも何をしているんだろう?
「じゃあ、全員揃ったことで、始めることにしよう」
と、話を切り出したのは理人だった。今回の如月美羽の件については、理人が一番情報を握ってるとも言える。俺らには言えることがないのだ。
「まず、さっき真さんに聞いてみたら、第三犠牲者の如月美羽ちゃんは最低でも金曜日の夜からいなくなってるらしい。僕の推測では、金曜日の夕方、彼女は学校のプールで泳ぐ練習をしていたはずなんだ」
理人がみんなにどこまで話したかは分からない。俺はもう数時間前に聞いたことだが、最低でも梨緒は初めて知ったはずだ。
あの後、俺は授業中にいろいろと考えていたのだが、理人が言った通りこれはあくまで「推測」。つまり、俺の犯人は教師では説のような仮説に過ぎない。
彼女が6時を過ぎてからすぐに拉致された、または行方をくらましたかは、未だに分かっていないからだ。もし、彼女が9時にいなくなったのだとすれば、学校を出たの6時なのだから空白の3時間がある。となると、彼女が最後にいたのはその3時間の間にいた場所となり、学校とは限らない。
でも、この仮説が合っているとなると、俺の仮説もより強くなってくる。
学校で拉致、または失踪の場合、それらの犯人は教師である可能性が高いのは当然だ。それこそ教師なら学校に車だって置いてあるだろうし、それなりの自由も利くはずだ。
俺にとっても、この仮説が実証されるのは大きな大一歩となる。
「もしかしたら学校のプールに彼女の痕跡が残ってるかもしれない。そこで、今夜学校にそれを確かめに行こうと思う。・・・反対はいる?」
当然反対意見はない。
それを見て、理人はさらに話を進めた。
「一応真夜がいるから再確認しておくが、学校は9時に全ての教職員が帰宅する。警備員は全員で4人。各校舎に3人と、校庭と体育館を見回る1人。その4人も10時で帰るはずだけど、10時になると終電がなくなってしまうからそれは無理だね。今回はプールで体育館の隣だから、俺らが注意するのは体育館を見回りにくる人だ」
どこからそんな情報仕入れてんだ・・・と思いつつ、ああ今回が初めてじゃないのか、と納得する。今までに何度も学校に忍び込んでいるのだとしたら、逆に知っていないとおかしいことになる。意外に行き当たりばったりじゃないんだ、と自分の考えを反省する。
みんながこうやって集まって話している間に、渡辺香織の家庭環境を話しておいたほうがいいのだろうか。・・・いや、それは今回の件には関係のないことのはずだ。もし犯人がいてそれが犯人だとしたら、それを裏づけるために言えばいい。・・・ある意味これは隠し事になるのだろうか。
まぁ、今はその事よりこっちのほうが大切か。
「この間みたいな校舎全体に入る場合は全員で行く必要があるけど、今回はプールの女子更衣室だけ。大人数で行っても逆に目立ってしまう」
「んじゃ、男4人でいいじゃん」
「うん、そのつもり」
渡辺香織の崩壊とアウトロウ始動ですw